自宅を介護保険でバリアフリーに住宅改修しよう
今まで使いなれていた我が家が、急に使いにくくなることがあります。例えば・・・
- 脳梗塞で倒れて後遺症が残ってしまった。足が思い通りに動かず、自宅の段差でつまずきそうで怖い
- パーキンソン病を患っているので、手すりが無いと転倒しそうで危険だ
- 認知症が進んできて、扉の開け閉めが難しいいらない扉を撤去したい
このように在宅介護を安心安全に行っていくにあたり、お住まいの問題は切っても切り離せない関係です。しかし、何十年も前に建てられた家をバリアフリー住宅に建て替えたり、住宅改修をしたりするにはかなりのお金が必要です。
そこでオススメしたいのが介護保険を利用して住まいをバリアフリーに住宅改修することです。この記事では「住宅改修の基礎知識や介護保険を使ったリフォームの流れ」、「バリアフリー化に失敗しない為のノウハウ」「住宅リフォーム業者の選び方」に至るまで懇切丁寧に解説していきます。是非、住宅改修する際の参考にして下さい。
<目次>
- 住宅改修とは
- 居宅介護住宅改修費
- 対象となるリフォームは6つ
- 介護保険の適用者全員が20万円まで住宅改修出来る
- 住宅改修の申請から給付金の受け取りまでの流れ
- 申請方法|事前申請が必要
- バリアフリー化に失敗しない為のノウハウと在宅改修業者の選び方
- 医師やリハビリの先生に相談しよう
- バリアフリーリフォーム実績のある信頼できる業者を選べ
1.住宅改修とは
住宅改修とは、「手すりの取り付け」や「段差を無くすスロープの設置」など、認知症やパーキンソン病、脳卒中になっても居宅で安全かつ快適に暮らせるよう、また介護する家族にとっては介助しやすくなるよう、自宅をバリアフリーにリフォームすることです。
誰でも年を取ると足腰の筋力や注意力が段々と衰えてきます。その為、高齢者は少しの段差でも転倒してしまうことが多くなります。また、転倒による骨折や打撲などのケガの治りも遅くそのまま寝たきりになってしまうこともあります。ましてや元々片麻痺などの障害がある人なら尚更です。
したがって、安全安心に過ごせるようお家をバリアフリーに住宅改修する必要があります。しかし、当たり前ですが、住宅改修をするのはタダじゃありませんお金が必要です。手すりやスロープを付ける工事費用は何万円にもなってしまうので、そのまま何もしない方も多いです。
ちょっと待ってください!!そういう方に朗報です。バリアフリー化のための住宅改修費用を国から一部補助してもらえる「居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)の支給」というお得な介護保健制度があります。
居宅介護住宅改修費
居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)の支給とは、手すりの取り付けやスロープの設置、その他の厚生労働大臣が定める種類の住宅改修を行った時は、市区町村が「居宅介護住宅改修費」として工事費用の一部補助を受けられる制度です。
要するに、バリアフリーリフォームに掛かる住宅改修費用の一部が介護保険から給付される制度なのです。
対象となるリフォーム工事は6つ
住宅改修費の給付の対象となるリフォーム工事は、手すりの取り付け、段差の解消、床の滑り止め工事などの小規模な改修です。新築や増改築、エレベーターの取り付けといった大掛かりな物は対象外です。
手すりの取り付け | 転倒を予防し、移動を楽にするための手すりが設置出来ます。玄関内、玄関から建物の出口まで、廊下、トイレ、浴室、階段などの内工事を有する者が対象です。工事不要の手すりは福祉用具貸与を利用してレンタルできます |
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段差の解消 | 居室の出入り口、廊下、トイレ、浴室と脱衣所、玄関等でつまずかないよう、スロープを設置するなどの方法で段差をなくします。玄関から外への出入り口も対象となります |
滑りの防止及び移動を円滑化する為の床または通路面の材料の変更 | 畳の部屋を板やコルク剤やビニール系の床材に、浴室の床を滑りにくい材質のものに、玄関前の通路を滑りにくい舗装材などに、それぞれ変更することが出来ます |
引き戸などへの扉の取り換え | 通常のドアを引き戸や折り戸、アコーディオンカーテンなどに取り換えて開閉しやすくする事が可能です。また、ドアノブの交換や戸車の設置も可能です、扉の撤去を含む |
トイレの洋式便器などへの取り換え | 和式便器から洋式便器に取り換えて、使用時に身体に負担がかからないように出来ます。温水洗浄便器への変更も対象となりますが、水洗トイレにする工事は対象外です |
その他①~⑤の住宅改修に付属して必要となる工事 | これらの工事を行う為に必要となる住宅改修が行えます。手すりを取りうつける為の壁の下地補強、浴室の段差を解消するための給排水設備工事などです |
介護保険の適用者全員が20万円まで住宅改修出来る
居宅介護住宅改修費は、介護認定を受けている方なら「要介護1~5」「要支援1・2」といった区分に関係なく利用できる制度です。居宅介護住宅改修費の支給限度額は、一家屋につき一律20万円までで、利用者の自己負担は1~2割の負担で済みます。
例えば、30万円の住宅改修を実施する(自己負担1割)場合は、
- 居宅住宅改修費の支給 18万円
- 自己負担 12万円
ですので、実質介護保険の自己負担割合が1割の場合は18万、2割の場合は16万円まで補助してもらえます。また、限度額内であれば複数回に分けても利用することも出来ますので、「階段に手すりを付ける」「玄関の段差を無くす」など比較的小規模なバリアフリーリフォームに適しています。
なお、住宅改修は介護保険の支給限度額とは別枠で利用できるので「その月はデイサービスや訪問介護を減らさなければいけない」という問題も発生しません。
また、「最初の住宅改修着工日と比べて、要介護度が3段階(要支援2と要介護1は同じ段階となり、要支援からの場合は4段階)以上重くなった場合」か「引っ越し・転居をした場合」は、支給済みの住宅改修費の金額に関わらず、新たに20万円分のリフォーム工事が行えます(ただし、1回限りです)。
さらに、同じ建物に複数の要介護者がいる場合、限度額は利用者ごとに設定されているので、それぞれに申請することが可能です。
例えば、同じ家に同居している夫婦がともに要介護認定を受けている場合は、20万円×2=40万円まで利用可能です。
ただし、住宅の新築は住宅改修とは認められず、支給対象とはなりません。増築の場合も、新たに居室を設ける場合等は支給対象とならない等の制限があります。
※「要支援1・2」の方は介護予防住宅改修費の対象になりますが、同様のサービスが受けられます。
2.住宅改修の申請から給付金の受け取りまでの流れ
ここからは、居宅介護住宅改修費の申請から工事の施工、給付金の受け取りまでの流れを確認していきましょう。大まかな流れは以下のようになります。
- ケアマネージャーなどに相談、事業者に見積もりを作ってもらう
- 市区町村に申請書や必要書類を提出・確認
- バリアフリーリフォーム工事着工⇒施工⇒完成
- 住宅改修費の支給申請
- 改修に掛かった費用の8~9割が市区町村から支給される
申請方法|事前申請が必要
住宅改修を希望される場合は、まずは事前にケアマネージャーや地域包括支援センター等にご相談ください。希望するバリアフリーリフォームが居宅介護住宅改修費の対象になるか確認してもらいましょう。市区町村よっては独自の助成制度を設けている場合もありますので、一緒に確認してもらい上手に活用しましょう。
参考リンク>>ケアマネージャーとは >>地域包括支援センターとは
居宅介護住宅改修費の給付を受けるには、住宅改修工事を着工する前に市区町村への「事前申請」が必要です。そして、申請を受けた市区町村が「住宅改修が保険給付として適当な物かどうか」調査し、許可が下りなければ工事を着工出来ないことになっています。事前申請は、制度を悪用して不必要な住宅改修を勧めるリフォーム業者からお年寄りを守る為です。これにより、意味の無い改修や介護保険がきかない改修をして高額な料金をだまし取られるのを防ぐ狙いがあります。
事前申請の時に必要な書類は次のようなものです。
改修前の提出書類
- (介護予防)住宅改修費支給申請書
- 住宅改修が必要な理由書(基本的にケアマネージャーが作成します)
- 工事費見積書
- 改修前の状態が確認できる書類(改修前の書類や工事箇所が分かる図面等)
- 改修後の完成予定の状態が分かる書類(写真または簡単な図を用いたもの)
- アパートや賃貸マンション、特別養護老人ホームなど自己の所有の住宅でない場合は住宅の所有者の承諾書
※お住まいの市区町村によって必要書類や提出するタイミングが若干異なる場合がありますので、予め確認しましょう。
リフォーム費用の支払い方と改修後の提出書類
住宅改修に掛かる費用は、利用者がリフォーム業者一旦全額を支払い、後から費用の8~9割が市区町村から返金される「償還払い」が一般的です。市区町村によっては、その時点で利用者が1~2割の自己負担分だけを支払う「委任受領払い」を選択できる場合もあります。
改修後は次のような書類を提出することで、居宅介護住宅費が給付されます。
- 領収書
- 工事内訳書
- 改修後の状態が確認できる書類(改修後の写真で撮影日が分かるもの)
3.バリアフリー化に失敗しない為のノウハウと住宅改修業者の選び方
ここからはバリアフリーリフォームに失敗しない為のノウハウと住宅改修業者の選び方をお教えします。
医師やリハビリの先生に相談しよう
住宅改修は20万円の限度額が定められている為やり直しがききません。なので、お住まいのバリアフリー化に失敗しない為には、何よりもその道のプロの意見を参考にすることが大切です。「どこを改修すべきか」「何を優先的にリフォームすべきか」など利用者の身体状態やその家族の介助のしやすさなどにあった住宅改修の相談は、担当医や理学療法士又は作業療法士といったリハビリの専門家が良いでしょう。
「デイサービスやデイケア、訪問リハビリテーションを利用してリハビリを受けている人」や「病院でリハビリを受けて退院することになった人」は、リハビリを担当してもらっている先生にお願いして、一度自宅に来てもらい住宅改修のアドバイスをもらうことをオススメします。「右麻痺があるのでトイレの手すりは左側に付けた方が良い」「トイレは洋式の方が良い」などリハビリテーションの観点から、実際の住まいと本人や家族の身体状況に合わせたバリアフリー住宅改修へのアドバイスが聞けるので、失敗することが少なくなります。
パーキンソン病やレビー小体型認知症の方は、すくみ足や小刻み歩行などの特殊な歩行障害が現れることがあるので、こちらの「転倒を予防せよ!すくみ足や小刻み歩行の対策法」も合わせてご覧下さい。
バリアフリーリフォームの実績があり信頼できる業者を選べ
また、病院から家庭に移ってくる場合は、自宅に戻ってくる前にバリアフリーリフォームしておくことをオススメします。脳梗塞や脳出血で倒れて手術しリハビリを行いながら退院を持っている期間に済ませておきましょう。身体のどこに麻痺が残るかが分かった時点で、在宅生活に支障が出ないように自宅を改修しておくのがベストです。介護保険の申請の途中でも、初回の認定結果が出る前に前倒して居宅介護住宅改修費を申請できるので心配はいりません。
また、住宅改修業者の中には、バリアフリーリフォームの実績が少なかったり、欠陥工事を行ったりする業者も存在します。ですので、住宅改修業者を選ぶ際には、ケアマネージャーや実際にリフォームした人などに相談し、バリアフリーリフォーム住宅改修の実績がある施工業者を選ぶことも重要です。