てんかん専門病院・専門医を探すコツ
てんかんが疑われる場合、どこの病院に行きますか?
突然、息子が身体をガクガクと痙攣させた。このようなてんかんが疑われる症状が現れた時、どこの病院の何科を受診すれば迷うところです。
また、現在かかっている担当医の診断や治療方針に、疑問や不満を感じている方もいるでしょう。
ここでは、そういった“てんかんが疑われる発作に遭遇した方”や、“今の診断や治療に不満を感じている方”に向けて、てんかんの専門病院や医師を探し方のコツをご紹介します。
1.てんかんが疑われる時はどうするの?
発作が酷い場合は、迷わず救急車!
てんかんが疑われる発作が現れた場合、どこの病院にかかればよいか迷うところです。
まず、発作といってもその程度は人によって違います。もしも、次のような強い発作が現れたら、緊急治療を必要とするので迷わず救急車を呼びましょう。
- 全身のけいれんが3分以上続く
- 何度も発作が起こる
- 呼吸がおかしく、唇や指先が青白くなっている
てんかんが疑われる時に受診すべき診療科
比較的落ち着いた発作の場合は、ご自身やご家族に連れ添われて近くの病院へと向かうことになります。年齢に応じて受診する診療かは異なりますので、以下を参考に受診してください。
- 思春期位まで(15歳前後)・・・・・小児科、小児神経科
- 思春期を過ぎてから・・・・・神経内科や脳神経外科、精神科
そして、必要に応じて脳波やMRIなどの詳しい検査ができる病院、外科的手術が受けられる病院を紹介してもらうことになります。
てんかんの診療は1次~3次まで役割分担しながら進める
てんかんの診療は“かかりつけ医”と“専門医”が協力して取り組みます。
1次・2次・3次診療
てんかんの診療は大きく“1次”、“2次”、“3次”の3段階で進められます。1次から3次の順でより専門的なてんかんの診療が受けられます。しかし、どれが優れているなどの優劣はなく、各々が長所を活かしつつ、役割分担をしながら進めるスタイルが提案されています。
- 1次診療
- 地域の身近な医療機関(プライマリケア)です。つまり、自宅から通いやすい病院やクリニック、かかりつけ医がこれにあたります。「少しおかしいな」と感じた場合は、まず身近な病院やかかりつけ医に受診し相談しましょう。そして、さらに詳しい検査が必要と判断されれば、2次、3次診療を担当する医療機関を紹介してもらいます。
- 2次診療
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神経学専門医(小児神経科専門医、神経内科専門医、脳神経外科専門医、てんかん専門医など)又はそれと同等の医師+問診・脳波・MRI検査に基づく、てんかんの診断と抗てんかん薬の調整を受けられる医療機関です。
- 3次診療
- てんかんを専門とする医師+2次診療の問診・検査+長時間ビデオ脳波モニタリングによる診断、外科治療、複数の診療科による集学的治療が可能な医療機関です。てんかんセンター・大学病院のてんかん科などがこれにあたります。したがって、3次診療では、専門的な検査を必要とする難治性てんかんや、手術が必要とする患者さんにも対応可能です。
かかりつけ医”と“専門医”が協力して治療に取り組む
ただし、3次診療では、1次、2次診療を担当する医師からの予約や紹介状を必要とするところも多いです。なので、てんかんが疑われる場合は、まず1次または2次診療を担当する医療機関に受診しましょう。
薬の選択が適正なら、6~8割の患者さんでは発作が止まります。
しかし、残りの患者さんは、発作が上手くコントロールできない“難治性てんかん”です。難治性てんかんの場合は、てんかんを専門としている3次診療を担当する病院を紹介してもらいましょう。
そして、てんかんの診断が確定したら治療を開始または再開します。
状態が落ち着いているなら、1次診療を担当する地域のかかりつけ医のもとに戻り治療を進めていくことも可能です。その際は “地域のかかりつけ医”と“てんかんの専門医”が密に連絡を取り合い協力しながら治療を進めていくのが理想的です。
2.てんかんの専門病院や専門医を探そう
それでは、お住まいの近くにある “てんかんに詳しい病院や医師(2・3次)”はどのように探せばよいのでしょうか?おススメする方法は2つです。
- “日本てんかん学会”が認定している「てんかんの専門医名簿」から探す。認定された専門医は、日本全国で600名(2016年現在)ほどいます。
- “全国てんかん協議会(日本医師会と日本てんかん学会が支援)”が運営している「てんかん診療ネットワーク」から探す。都道府県別にてんかんを扱う医療機関の情報が検索できます。
これらの情報はインターネット上からも確認することができます。下のリンク先のサイトを参考にしてください。他にも、かかりつけ医や医療関係者、実際に病院にかかっている方の口コミ、日本小児神経学会の専門医名簿などを参考にするとよいでしょう。
3.日本てんかん学会とは
ここで、先ほど2つの方法で名前の挙がった「日本てんかん学会」とは、どのような組織かご紹介します。
日本てんかん学会は、1967年4月6日にてんかん学並びにこれと関連する学術の進歩向上を図ることを目的として、医師を中心として設立された学術団体です。
会員は、国際抗てんかん連盟(ILAE)の一員として、各国てんかん学会会員と協調し、てんかんを持つ人々のために活動しております。国際抗てんかん連盟 のビジョンは、一人でも多くのてんかんを持つ方々がてんかんによって人生の制約を受けない世界を実現することにあります。
そのために、日本てんかん学会は、「医療専門家、てんかんをもつ方々や支える人々、政府、および公衆に対して、てんかんをもつ人への理解およびてんかんの診断・治療に不可欠な教育的、研究的資源情報を共有する機会を提供することを使命としています」
日本てんかん学会
つまり、日本てんかん学会は、わが国のてんかん治療をリードする組織といえるでしょう。学会が運営するホームページで、てんかんに関する最新情報なども確認できます。
4.あなたのベストパートナーとなる医師を探すコツ
てんかんを治療していくうえで、医師との信頼関係を築くことは非常に大切です。また、治療においては柔軟性が求められます。時には、一度立てた治療方針を見直すこともあります。
つまり、てんかんの治療は、医師と患者がお互いに協力し合い、柔軟に取り組むことが必要不可欠です。
てんかんの治療に携わっている全ての医師が、てんかんに詳しいわけではありません。ですが、信頼関係が築き、外部の専門医の協力も受ける等して柔軟に治療に取り組むことが出来れば、その医師はあなたにとって良い医師と言えます。逆に、てんかんに詳しい医師でも患者さんに真摯に向き合わない方でしたら、良い医師とは言えないでしょう。
今の診療に不安がある人は①セカンドオピニオンの利用②主治医の変更を考えよう
てんかんの書籍に載っていた症状に似たものがあるが、医師が検査もせずにてんかんではないと言い切る・・・・
今、病院でてんかんの治療を受けているが、うまく発作が抑えられない・・・
といったふうに、現在の診断や治療に不安がある場合には、他の医師に意見を求める“セカンドオピニオン”や“主治医の変更”も考えましょう。
てんかん以外の原因で、てんかん発作に似た症状が起きることはよくあります。痙攣がとまらない「てんかん重積状態」として“救急搬送された人のうち、およそ3割はてんかんという病気が原因ではない“とするデータも存在するくらいです。また”難治性てんかんとして専門の医療機関を紹介され受診する人でさえ、実はてんかんではない”というケースも存在します。
「名医」といわれる医師であっても、てんかんは簡単に診断がつけられる病気ではありません。だからこそ、治療に不安を感じたら、診断そのものを見直す必要があります。医師の方から専門医療機関を紹介することもあります。また、「専門的な検査を受けたい」という患者さんの申し出を無下に断ることはまずありません。
しかし、もしも、治療が上手く進んでいないににもかかわらず“頭ごなしに非難する”、“横柄な態度をとる”ような医師なら信頼関係を築き共に治療に取り組むのは困難です。
患者さん側もてんかんを知ることが大切
患者さん側もてんかんという病気について知っておくことが大切です。
医師に病名を宣告されただけで、満足してはいけません。自分自身もてんかんという病気について調べ、てんかんのタイプや、発作のタイプ、原因などについて積極的に医師に質問していく姿勢が必要です。
患者さん側もてんかんについて基礎的な知識を入れておくことで、誤診や誤治療を防ぎ、上手く発作に対処することが出来ます。