1人目の訪問者
ドアノブは勢いよく回され、玄関のドアがこじ開けられた瞬間、私は大きな何者かに吹っ飛ばされた。
「おおっ、明か危ないな、ビックリさせるなや!おばあちゃんはどこや?」
「おばあちゃんは・・・」
「ドンドンドン」
男は、ろくに人の話も聞かず、また一言も詫びを入れず、玄関に靴を脱ぎ捨てズカズカと家の中に入っていった。
この関西弁丸出しの気性の荒い訪問者は、私が予想していた“いとこ”ではなく、母型の“叔父”であった。叔父は、おばあちゃんの死を龍也から聞きつけ、急いで帰ってきたようだ。
叔父は、私と背丈はそんなに変わらないが、柔道をかじっていたこともあり、かなり恰幅がよかった。そのような過去に、祖父譲りの気難しい性格も相まって、この男をこのような短気でかつ横柄な性格にしたのだろう。
叔父は、母の弟にあたり、歳は50を過ぎていたが誰とも結婚をせず独り身であった。また、叔父は料理人であり、一度は自分の店も持っていたほどである(開店資金の大半は祖父の退職金だが・・・)、しかし2,3年もたたずして店をたたむ結果となってしまい、その後は職を転々とし最近では長野県に保養所の料理人として働いていた。
・
・
すぐに一階を探し終えた叔父は、再び私の元に戻って来た。
「おばあちゃんはどこや!お前のお母さんは来てへんのか!」少し苛立った声で叔父は迫ってきた。
「おばあちゃんは2階で寝てるよ。おじちゃん大変なんだ、おかあさ・・・・」「見てくる」叔父はそういうと再び私の話を遮り、2階の階段を上って行ったのだった・・・・・・・・・・
・・・・・・今後、この叔父が私達家族の生活をより一層掻き乱す存在になろうとはその時は考えもしなかった。
コメント