歩行器|種類や選び方~使い方

歩行器って知っていますか?

皆さんが「歩行器」と聞いて、一番に思い浮かべるのは赤ちゃんが使う「ベビー用品」の方でしょう。しかし、この記事で取り上げる歩行器は、足腰が弱いお年寄りや片麻痺、パーキンソン病などで歩行障害のある方が使う「介護・医療用」の歩行器です。

この記事では「介護・医療」に使う歩行器の種類や特徴、正しい使い方、介助方法について解説していきますので、是非参考にして下さい。

<目次>

  1. 歩行器が必要な人は?
    1. 足腰が弱い・不自由な人の大切な歩行補助具
    2. 恥ずかしがって無理すると危険
  2. 歩行器の種類と特徴
    1. 四輪式歩行器
    2. 固定型歩行器
    3. 交互型歩行器
  3. 歩行器の選び方と調整方法
    1. 選ぶ時は専門家に相談しよう
    2. 押し手の高さの調整方法
    3. 歩行器は安全性が高いが危険もある
  4. 歩行器の使い方と介助方法
    1. 自立歩行
    2. 介助方法

1.歩行器が必要な人は?

足腰が弱い・不自由な人の大切な歩行補助具

「介護・医療用」の歩行器といっても具体的には、どのような人が必要とするのでしょうか?例えば、次の方々が歩行器の利用対象です。

  • 老化により足腰の衰えが見られるお年寄り
  • 脳卒中による麻痺や、椎間板ヘルニア、脊髄損傷などでマヒやしびれがある人
  • 骨折や靭帯損傷など下肢に外傷がある人
  • 外科手術などで安静中の人
  • 骨粗鬆症、関節リウマチ、変形性膝関症、変形性股関節症など骨・関節に問題がある人
  • パーキンソン病やレビー小体型認知症で歩く時ふらふらしてバランスを崩しやすい人
  • 杖(松葉杖やロフストランドクラッチ杖など)では歩行が不安定な人

これらの人々は無理せず少しでも楽に転倒することなく歩行を続けられる方法を考える必要があるわけです。その方法の1つが歩行器なのです。

歩行器は、歩行時にふらつきが大きい人や、足腰の力が弱った人に役立ちます。両手が使えることが前提になりますが、1人で歩行器が使えるようになると活動範囲が広がり、介助する人の負担も軽くなります。また、歩行器は数本の脚で支えるので、1本で支える杖よりも安定性の高さも魅力です。杖歩行に移るための歩行訓練にもよく使われます。

杖の種類と選び方

恥ずかしがって無理すると危険

しかし、歩行に問題がある人でも、不自由そうな見た目から恥ずかしがって歩行器や杖を使わない方がいます。しかし、それは危険です。

高齢者や骨が脆い人、下肢に障害がある人は、少し転んだだけで骨折や捻挫等のケガに繋がりやすく、さらにケガが原因で寝たきりとなった挙句、褥瘡認知症などの廃用症候群を起こしてしまうケースが非常に多いからです。なので、無理をして転んでケガをするより、歩行に不安を感じたら、歩行器なり、杖なり適材適所に上手に使い、転ばない歩行スタイルを身に付けましょう。

また、杖や歩行器を使用している姿を見られることを恥じ、家の中に引きこもってしまう方もいますが、これも得策ではありません。

なぜなら、運動不足により下半身の筋力低下が進み、自力での歩行が上手くいかず転びやすくなるからです。また、孤独な環境は認知症の原因にもなります。したがって、たとえ杖や歩行器を使っても、歩くことで足腰の筋力を維持・向上させると同時に、外の刺激を取り入れ脳を活性化させることが健康な生活を送るうえで欠かせません。

超高齢化社会に突入する日本では、今後も高齢者の人口は増加していきます。このような流れの中、街中で歩行器や杖を持っている方もだんだんと増えてきていますので、恥ずかしがらずに杖や歩行器といった歩行補助具を使用し外に出かけてみてはいかがでしょうか。

廃用症候群

2.歩行器の種類と特徴

歩行器は、要介護者の状態や、用途によって選びます。歩行器は大きく3つのタイプに分けられ、各々特徴があります。歩行が困難になった時に、この3種類から自分の症状に合った歩行器を選びましょう。

  移動方法 キャスター(車輪) 主な対象者
四輪歩行器 キャスターを転がして進む キャスターが前後輪についている バランス障害が軽い人、両手が使えない人向け
固定型歩行器 本体を持ち上げて進む キャスターは付いていない バランス障害が重い、足の筋力が低下している人、上肢の筋力がある人、両手が使える人向け
交互型歩行器 本体の足を交互に前方に動かし進む キャスターが付いていないタイプと前輪または後輪だけについているタイプがある バランス障害が重い、足の筋力が低下している人、上肢の筋力が無い人両手が使える人向け

次は、四輪歩行器、固定型歩行器、交互型歩行器それぞれの特徴についてみていきます。アマゾンで人気の歩行器のリンクも載せておきます。

四輪歩行器

歩行器を押し、キャスター(車輪)転がして移動します。

よく病院で見かける歩行器です。その形からU字歩行器とも呼ばれています。前輪・後輪ともにキャスター(タイヤ)が付いているので、歩行器の中でも移動性が高いです。前輪がキャスターで、後輪が固定車輪の歩行器と、前後輪ともに稼働するタイプがあります。肘つきのタイプもあり、身体を両肘・両腋で支えられ全体重が預けられ手指にマヒがある方でも利用できます。

四輪ともフリーの物は小回りが利く反面、慣れないと歩行の安定性が悪いという欠点があります。歩行器によってはブレーキが無い為、歩行器だけが勝手に進んでしまい、身体が取り残され前方へ転倒する危険性があります。また、足が前に出過ぎて後方に転ぶ危険性もあります。ですので、スピードが制御できず転倒することもあるので、足がもつれやすい人は危険です。

固定型歩行器

歩行器全体を持ち上げて前に出し、また持ち上げて前に出すという動作を繰り返して移動します。

3タイプの中で最も安定性が高い歩行器です。手すりの代わりにもなるので、起き上がりの際のちょっとした手すりとしても利用できます。また、玄関や居室、トイレなどに置くだけで、手すりの代わりに活用することも出来ます。ただし、四輪式歩行器よりも移動効率は落ちます。

交互型歩行器

歩行器の左右フレームを動かして移動します。交互型ウォーカーとも呼ばれています。

交互型歩行器には、キャスターが付いているタイプと付いていないタイプがあり、ちょうど四輪式歩行器と固定式歩行器の間に位置付けられます。キャスターが無いタイプは、足が地面をしっかりと捉えているので安定性が良く、体重もしっかり支えてくれます。

自ら歩行できる場合は、キャスター(車輪)付きの交互型歩行器、歩行が不安定な場合は、安全性のある車輪なしの固定的な物を選択しましょう。

3.歩行器の選び方と調整方法

選ぶ時は専門家に相談しよう

足元がふらついても、両腕が使える場合は歩行器を使うと、身体を支えられ安全に歩くことができます。歩行器には色々なタイプがあります。また、介護保険の適用でレンタルできるタイプもあるので、理学療法士など専門家に相談して、身体の状態にあったものを選びましょう。また歩行器は、介護保険の福祉用具貸与というサービスを利用すると1~2割の負担でレンタルすることが出来ます。

ただし、大人用の歩行器は、身体が小さくなってきた高齢者には大きすぎる場合もあるので選ぶ際は注意が必要です。

押し手の高さの調整方法

折角の歩行器も押し手の高さが合わないと、前屈気味になったり、身体支える腕の力が入らなくなったりして転倒の原因となり危険です。そのため、歩行器の高さを調節する必要があります。

基本的な歩行器の高さは、グリップを握った時に背中が曲がらない程度が適当です。

しかし、身長や腰の曲がり具合など人それぞれ異なりますので、押し手の高さを調整する時は。理学療法士や福祉用具専門相談員とよく相談しあなたの背丈に合うように歩行器の高さを調節してもらいましょう。

歩行器は安全性が高いが危険もある

歩行器は杖よりも安定性が高く、非常に便利なアイテムですが使用に不向きな人もいます。

歩行器は、全て両手で操作するのが基本です。したがって、手指に障害やマヒ、しびれがある人には向きません。しかし、最近では方向転換、段差の乗り越え等、不自由な手でも使えるタイプの歩行器も出てきました。

問題はブレーキ操作が可能かどうかです。手指の障害で歩行器の押し手が掴めない場合は、肘を載せるキャスター付きの歩行器を利用しますが、操作が難しくなります。特に下り坂では歩行器のみ先行してしまうことがあり危険です。また、体重を支える力は強いですが、後ろ向きに倒れる人には向きません。

これら歩行器の特徴を理解し、理学療法士や福祉用具専門相談員などプロのアドバイスをしっかりと聞いた上で歩行器を利用しましょう。

4.歩行器を使い方と介助方法

病後の歩行の為のリハビリでは、手すりを使い立ち上がり歩く練習を段階的に行います。リハビリでは歩行器は、平行棒の後、杖の前に使います。ここでは、交互型歩行器を例に自立歩行と介助方法をご紹介します。

自立歩行

歩行器のグリップ(握り手)を握り、自分の歩幅程度に、前に足を持ち上げ移動させます。一歩前に進み、後ろ脚を揃えて、再び持ち上げる、この動作を繰り返します。

  1. 歩行器を前に出す。
  2. 片足を一歩踏み出す。
  3. もう片方の足を揃える。
  4. 歩行器を前に出しくり返す。

介助方法

慣れないうちは介助者が支え、疲れたら無理をせずに休むようにしましょう。片麻痺の人は、マヒのある側の後ろに立ってサポートします。介助する時は後ろから腰を軽く支えましょう。

  1. 本人の後ろに回って腰を軽く支え、呼吸を合わせて一緒に進みます。
  2. 本人が片足を前に出したら介護者も同じ側の足を出し一歩進む。
  3. 本人がもう一方の足を踏み出すのに合わせて、介護者ももう一方の足を運ぶかやや開き気味にする。