有料老人ホームのきほん

  • 介護が必要な親を在宅で看ることができない・・誰か代わりに看てくれないかな?
  • 仕事や家庭が忙しい娘に面倒を掛けたくない・・・・どうしよう?

このようなお悩みをお持ちの方が、まず思いつくのが「老人ホームに入所してもらう・入所する」という選択肢でしょう。

しかし、ここ日本では現在、老人ホームに入所したくてもできない「介護難民」で溢れ返っておりて、社会問題にまで発展してしまっていることをご存知でしょうか?

老人ホームの代表格である「特定養護老人ホーム」の待機者はおよそ50万人以上にも上り、高齢化が進む中この状況はますます悪化していくことが予測されます。

このような時代背景の中、近年脚光を浴びているのが「有料老人ホーム」です。年々、その利用者数と事業所数ともに増加してきています。有料老人ホームが増加している理由は、入居のしやすさにあります。

有料老人ホームは、特別養護老人ホーム等のいわゆる介護保険3施設とは違い、部屋に空きさえあれば入居希望者と事業者の自由契約で直ぐにでも入れるという「入居のしやすさ」が一番の特徴です。

しかし、その実態がイマイチ分からないという方も多いでしょう。そういった方は、この記事をご覧ください。ここでは「有料老人ホームとは何なのか」といった基本定義から、その種類、費用の見積り方、失敗しない施設選びといったことに至るまで懇切丁寧に説明していきます。

<目次>

  1. 有料老人ホームとは?その定義と種類
    1. 介護付き有料老人ホーム
    2. 住宅型有料老人ホーム
    3. 健康型有料老人ホーム
  2. 有料老人ホームに掛かる費用
    1. お金の納め方は3つ(一時金方式、月払い方式、併用方式)
    2. 3つの入居方式(終身利用権方式、賃貸方式、分譲方式)
    3. 有料老人ホームの料金計算シミュレーション
  3. 失敗しない有料老人ホームの探し方
    1. 施設選びの大前提
    2. 有料老人ホーム選びのチェックポイント

1.有料老人ホームとは?その定義と種類

有料老人ホームとは、介護や生活支援、医療などのサービスが受けられる高齢者向けの集合住宅のことです。つまりお年寄りを対象としたマンションみたいなものです。有料老人ホームは、特定養護老人ホームとは違い、民間の企業が経営しているのが特徴です。

特定養護老人ホームは、「今は介護が無くても生活できているが、将来的な不安があるので前もって入居や予約をしておきたい」といった理由での入居は認められておらず、悪までも要介護認定を受けた人が対象の施設です。一方、有料老人ホームなら「要介護認定された人」でも「介護を必要としない健康な人」でもどなたでも入居することが可能です。

ただし、有料老人ホームでは施設ごとに対象者や受けられるサービスが異なります。特に、介護サービスが必要かどうかを基準にして「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3タイプに大きく分けられます。それでは各々老人ホームの中身や他との違いについて確認していきましょう。

いずれの有料老人ホームも明確な年齢制限はありませんが、おおむね65歳以上の方が対象です(50代くらいから入居できる施設もあります)。

介護付き・住宅型・健康型の比較表
  介護付き 住宅型 健康型
介護サービス 施設内で受けられる 施設内で受けられる 受けられない(退去が必要)
ケアプランの作成 有料老人ホームのケアマネージャーが作成 外部のケアマネージャーに依頼 なし
サービスの提供 内部または外部のスタッフが実施 委託された外部の事業者が実施 なし
特定施設入居者生活介護 対象である 対象でない 対象でない

介護サービスが受けられるのは「介護付き」と「住宅型」の有料老人ホームですが、いずれも介護保険上は自宅に居る時に受ける「居宅介護サービス」の扱いになります。

1.介護付き有料老人ホーム

有料老人ホームの中でも、介護や医療サービスに最も重点をおいているのが「介護付き有料老人ホーム」です。

認知症やパーキンソン病、脳卒中の後遺症がある人も多く入所していて、痰の吸引や経管栄養(胃ろう)などの医療行為に対応しているところが多いのもこの介護付き有料老人ホームの特徴です。

介護付き有料老人ホームと名乗ることが出来るのは、都道府県知事から「特定施設」と指定を受けた有料老人ホームだけです。

特定施設とは、入居者が受ける食事・排泄・入浴介助などの介護サービスが「特定施設入居者生活介護」として介護保険の対象となる施設を指します。「特定施設入居者生活介護」を利用することで費用を抑えることが出来ます。

特定施設に指定される為の基準については人員基準や施設基準など様々な要件があります。その中でも、特に重要なのは入居者3名に対して看護職員または介護職員を1名以上配置しなければいけことです。これは入居者に手厚い介護サービスを提供するために設けられた基準です。

介護職員は、施設の人間だけでまかなう「一般型」と外部の事業者に委託する「外部サービス利用型」の2タイプがあります。それぞれメリットとデメリットがあるので合わせて確認して下さい。

  特徴 費用報酬の扱い メリット デメリット
一般型 ケアプランの作成から実際の介護サービスの提供まで一括して提供する有料老人ホーム 要介護度別に1日あたりの費用が決まっている 全てを施設に任せられる

その施設以外のサービスは受けられない(福祉用具貸与が受けられない)

外部サービス利用型 ケアプラン作成や安否確認といったサービスだけを施設が担当し、実際の介護サービスは外部の事業者が提供する有料老人ホーム 定額報酬+出来高報酬(限度額がある) 外部の訪問介護やデイサービス、福祉用具貸与といったサービスが受けられる 施設が契約している事業者以外はダメ

2.住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは、「介護付き」と「健康型」のちょうど中間的な位置づけの施設です。

介護が必要な人でも健康な人でも入居することが出来ます。住宅型有料老人ホームでは、基本的に施設側は食事などの生活支援サービスだけを提供します。そして、もし介護が必要になったら、外部の事業者から訪問ヘルパーなどの介護サービスを受けるといったかたちになります。

介護サービスは、介護付き有料老人ホームとは違い、直接入居者が外部の事業者と契約します。それらのサービスは、介護保険が適用されますが、介護付き有料老人ホームとは違い「特定施設(特定施設入居者生活介護)」の対象ではないので、訪問介護やデイサービスなどを利用しすぎると月々の出費が大きくなってしまうことがあります。

3.健康型有料老人ホーム

健康型有料老人ホームは、名前の通り原則「健康で自立した人のみ」を対象とする施設です。

その為、他の有料老人ホームと比べて、リゾート感あふれる施設が多いのも特徴です。中には、海沿いの観光地などに建っていて、一流ホテルのスイートルームのように豪華絢爛な施設もあります。温泉やカラオケルームやトレーニングルーム、卓球台などが置かれていて、定期的にスポーツや合唱コンクールといった入居者同士が触れ合いがもてるイベントが用意されている施設もあります。

介護付きや住宅型と同じく、食事などの生活支援サービスはありますが、認知症やパーキンソン病、脳卒中の後遺症などで介護が必要になったら契約を解除して退去しなければいけません。

2.有料老人ホームに掛かる費用

ここからは、皆さんが一番気になる「有料老人ホームとお金」にまつわるお話をしていきたいと思います。

「有料老人ホームに入居するとどれくらいお金がかかるの?もの凄く高いと聞いたけど」と心配されている方も多いことでしょう。このように「有料老人ホーム=高い」というイメージをお持ちの方も多いと思います。

確かに、有料老人ホームは、民間企業が運営しているということもあり、特別養護老人ホームなどの介護保険施設よりも高めに設定されています。しかし最近では、低価格の施設も増えてきていており、掛かる費用は施設によってピンキリです。

1.お金の納め方は3つ(一時金方式、月払い方式、併用方式)

有料老人ホームは、お年寄りの為のマンションのようなものです。当然、マンションに入居するためには、家賃や敷金が発生します。

有料老人ホームの入居費用の納め方には大きく3種類あります。

一時金方式 入居費を全額または一部を一時金として前払いタイプ
月払い方式 前払いはせず、月ごとに居住費を納めるタイプ
併用方式 一時金方式と月払い方式を併用するタイプ

入居前払い金の「90日ルール」

有料老人ホームで将来分の費用を入居時にまとめて前払いする入居一時金は、途中解約するときに必要な金額を差し引いて返還されるお金です。ところが、この返還額を巡るトラブルが後を絶ちません。これまでは、契約を結んでから90日以内の解約なら、入居一時金の全額を返還するように国や都道府県が指導していました。これが「90日ルール」です。

しかし、正式に老人福祉法で定められていない為、この制度を設けていない事業者が存在していました。そこで2012年に施行された改正老人福祉法により、90日ルールが法制化されたのです。これによって入居から90日以内に退去した場合、厚生労働所売れいで定める方法により算定された。また、有料老人ホームの設置者が受け取れるのは、家賃、敷金、および介護サービス費のみで、権利金その他の金品を受け取ってはならないと明記されました。これに違反した事業者には罰則規定澪設けられています。

2.3つの入居方式(終身利用権方式、賃貸方式、分譲方式)

また、有料老人ホームには「終身利用権方式」「賃貸方式」「分譲方式」の3つの入居方式があります。

終身利用権方式 入居一時金を支払い、一代限りの終身利用権を買う購入方式です。償還期間が設けられていて、途中退去の場合は未償還分が返却される方式を取っている老人ホームが多いです。
賃貸方式 賃貸マンション暮らしと同様、毎月決まった家賃を支払う賃貸方式です。入居一時金を併用して、終身の賃料を予めもらい受けて置く老人ホームもあります。
分譲方式 所有権を買い、いつでも売却することが出来る購入方式です。相続も可能です。不動産収得税、固定資産税などの各種税金がかかります。

実際の、有料老人ホームに掛かる費用は施設によってピンキリです。

入居一時金として、数1000万円するところから0円のまでと施設によって大きく開きがあります。また、毎月の支払も数十万のところから生活保護費で賄える程度の低価格の施設も存在します。

もし、有料老人ホームを終身入居しようと考えていて、資金的な余裕がある場合は「一時金方式」を選択したほうが結果的に割安に住めます。また、健康型の有料老人ホームなどの場合は、介護が必要になったら出ていかなければならないので、「月払い方式」が適しています。

したがって、あなたの有料老人ホームの利用目的に合わせて、入居費用の支払い方式を決めましょう。

3.有料老人ホームの費用計算シミュレーション

先ほどまで説明してきたのは、有料老人ホームに入居する為のお金の話です。それ以外の食事・排泄・入浴介助といった介護サービスにかかる費用は含まれていません。

有料老人ホームの入居費用は施設によって異なりますが、介護サービス費は要介護度などを基準にして法律で定められています。

有料老人ホームの介護サービス費(一般型)
要介護度 1 2 3 4 5
単位/日 533単位 597単位 666単位 730単位 798単位
有料老人ホームの介護サービス費(外部サービス利用費)
要介護度 1 2 3 4 5
単位/日 82単位
給付限度単位/月 16,203単位 18,149単位 20,246単位 22,192単位 24,259単位

外部サービス利用型の場合、別途訪問系サービス(ヘルパーや訪問看護)と通所系サービス(デイサービス・デイケア)の費用が必要です。また、介護保険からの給付額に限度額が設けられています。

それでは実際に、有料老人ホームに掛かる介護サービス費用を月額料金をシミュレーション計算してみましょう。

  • 利用者は要介護3
  • 一般型の介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)
  • 加算項目なし

以上のサービスを利用した場合、次のように料金計算できます。(1単位=10円、個人負担=1割負担の場合)

【計算式】

  • 【1ヶ月分の単位数】 666単位×30日(利用回数)=19,980単位
  • 【1ヶ月にかかる介護サービス費(保険適用前)】 19,980単位×10円=199,800円
  • 【1ヶ月にかかる介護サービス費(自己負担1割)】 199,800円×10%=19,980円

有料老人ホームの自己負担費用(1ヶ月分)=19,980円+食費や居住費(部屋代、光熱費)、おむつ代、日常生活費(娯楽費、理美容費)など

それでは、どのようにして有料老人ホームの1ヶ月にかかる介護サービス費を求めたのか詳細を確認していきましょう。

まず、上の表をもとに「要介護度」、「施設のタイプ」を割り出します。そして、有料老人ホームの利用回数(ここでは30日)を掛けます。その後、1単位あたり約10円を掛け、さらに介護保険の自己負担分10%を掛けて計算完了です。

あなたの介護サービス費の自己負担分は、月額19,980円になります。

加えて、食費や居住費(部屋代、光熱費)、おむつ代、日常生活費などが全額自己負担でかかってきます。それらを全て合した総額は施設ごとに違いますが、おおよそ月額10~50万円ぐらいの費用が掛かると考えて下さい。

3.失敗しない有料老人ホームの探し方

有料老人ホームの中には、残念なことですが経営がズサンな企業もあり介護環境が劣悪な施設が存在するのも事実です。ここ最近も、介護職員が故意に入居者の方をベランダから転落させ高齢者3人を死亡させるという痛ましい事件が神奈川県川崎市の有料老人ホームで起こったばかりです。

せっかく高い費用を払って有料老人ホームに入居したのにも関わらず、期待したサービスが受けられないばかりか、身体拘束や介護虐待を受けてはたまったものではありません。したがって、あなたに最適な有料老人ホームを探すことは何よりも大切なことです。ここからは、「あなたが有料老人ホーム選びに失敗しない為のポイント」をご紹介していきますので、是非施設を選びの参考にして下さい。

1.施設選びの大前提

有料老人ホームを選ぶ際の一番のポイントは、「入居者の心身状態や施設の利用目的」と「施設体制やサービス」がマッチしているかが大前提です。

  • 介護が必要な場合は、介護付き有料老人ホームか住宅型有料老人ホームを選ぶ
  • 現在介護は必要ではなく、余生を楽しむ目的の場合は、住宅型有料老人ホームか環境型有料老人ホームを選ぶ

そして、前者なら「認知症や片麻痺、パーキンソン病の人を受け入れてくれるか」「重度の人を受け入れてくれるか」「痰の吸引や胃ろうなどの医療行為が必要かどうか」といったことを考慮して施設を選ぶ必要があります。後者なら「どういった土地や施設に住みたいのか」「将来的に介護が必要になった場合はどうしたいのか」といったことを基準に施設を選ぶ必要があります。

それ以外にも、失敗しない有料老人ホームを選ぶためのポイントをリストにして載せておきますので、まずは資料請求をして、実際に見学に行き自分の目で見てみることをオススメします。

2.有料老人ホーム選びのチェックポイント

有料老人ホームを探す際は、必ず見学に行きましょう。そして施設全体の雰囲気や部屋や共有スペースの様子、スタッフの対応など自らの目でしっかりと確認することが大切です。

  パンフレットやケアマネージャーの紹介などで下調べをしておき、予め気になるポイントや質問を考えておく
  有料老人ホームの入居費がどのくらいか、入居料の支払い方はどんな方式か、敷金などは必要か
  明るい雰囲気かどうか、殺風景でないか
  トイレや浴槽など施設環境は綺麗で衛生的か
  施設内のイベント行事は活発か
  地域の小学校や自治会などの外部との交流があり閉鎖的ではないか
  夜間や緊急時の対応はどうか
  食事はおいしいか
  居室は綺麗で快適に過ごせそうか(日当たりや室温などもチェック)
  利用者のプライバシーに配慮されているか
  実際の施設利用者の顔は明るく楽しそうか
  スタッフの顔は明るいか、言葉遣いや介護の仕方は正しくスムーズか
  必要な医療設備(痰の吸引器など)や介護設備(機械浴など)は揃っているか、

ー豆知識ー

元々、有料老人ホームは「常時10人以上の老人を入居させ、食事の提供や日常生活上必要な便宜を提供することを目的とする施設」と老人福祉法で定義されていました。しかし、2006年に「10人以上」という制限が撤廃され、①食事提供②入浴、排泄、食事の介助③洗濯、掃除などの家事④健康管理のどれかを提供すれば、入居者数に関わらず、すべて有料老人ホームとされるようになりました。つまり、例え入居者が1人でも、ある一定の介護サービスを提供していれば有料老人ホームと見なされることを意味します。

有料老人ホームと見なされた施設は、居室にスプリンクラーを設置などが義務づけられています。また、定期的に行政の立ち入り調査が実施されるなどの規制が掛かります。