パーキンソン病の診断基準を学びセルフチェックしよう

最近、次のような症状に身に覚えはありませんか?

  • 歩くときの姿勢が悪くなった
  • 手足が勝手に震える
  • 歩幅が小さくなって歩きにくい
  • つまずくことが増え、よく転ぶ

もしかすると、パーキンソン病という病気を発症している可能性があります。

もし、身に覚えがある方は、ここでパーキンソン病の診断基準について確認し、セルフチェックしていただければと思います。

パーキンソン病の疑いをセルフチェック

パーキンソン病では、有名な「パーキンソン病の4大運動症状」の他にも、歩行障害や自律神経症状、うつ症状、認知機能障害など多くの症状が現れます。その為、他の病気と勘違いしてしまうケースも多くあります。

しかし、パーキンソン病は進行性の病気なので、気づかずに放置しておくとドンドンと進行し、気づいた頃には取り返しのつかない事態となっている可能性があります。したがって、早期に病気を発見し適切な治療を受けることがとても大切です。

そうはいっても、何がキッカケでパーキンソン病に気が付くのでしょうか?

セルフチェックシート

パーキンソン病患者の多くは、次のようなことがキッカケで病気を疑い、医師に受診する人が多いです。一度ご自身でセルフチェックしてみて下さい。

  • じっとしていると、手足や足が震える
  • 歩くときの歩幅が小さくなった
  • 歩くのが遅くなった足が前に出ない
  • 歩いていると前のめりになってしまう
  • よく転ぶ
  • 着替えがしにくい、時間がかかるようになった
  • 声が思うようにでない
  • 食べ物が飲み込みにくい

このような症状が見られた場合は、パーキンソン病が疑われます。したがって、次の「パーキンソン病の診断基準」をご覧頂き、どのような流れで病気を医師が診断するのか学びましょう。

パーキンソン病の診断基準

パーキンソン病では、「安静時振戦」「筋固縮」「緩慢(寡動・無動)」「姿勢反射障害」の4大運動症状を元に診断されます。

しかし、このような症状が現れる病気は他にもあり、最初から4大運動症状全てが現れるわけではありません。受診時に安静時振戦がある人は60~70%ぐらいです。また、画像検査でパーキンソン病か確定診断をすることは現段階では不可能です。

その為、パーキンソン病かどうか100%正確に診断することは出来ません。ベテランの神経内科医でも、初診時にパーキンソン病と確定診断できるのはパーキンソン病患者の8~9割程度と言われています。残り1~2割は、1~2年ぐらいの間経過観察を行いパーキンソン病かどうか見極めることになります。

パーキンソン病の診断の流れ

パーキンソン病が疑われる場合、医師は、これまでの既往歴(過去の病歴)や診察や画像検査の結果を総合的に判断して診断します。

パーキンソン病の症状を診る パーキンソン病の4大運動症状、非運動症状の有無を確認
検査 血液検査を始め一般的な検査や画像検査等も行いパーキンソン病の可能性を確認
治療薬の投与結果を診る パーキンソン病の治療薬を服用し、自覚症状と神経所見にどのような変化が現れるか効果の出方を確認

パーキンソン病の診断基準

パーキンソン病の診断基準は多く存在しています。その中でも、パーキンソン病の診断基準として広く使われている「神経変性疾患調査研究班の基準」を確認してみましょう。

神経変性疾患調査研究班の基準
自覚症状 項目のいずれか1つ以上に当てはまる 安静時の震え(手足またはアゴに出やすい)
動作がゆっくりぎこちない
歩行がゆっくりぎこちない
神経所見 項目のいずれか1つ以上に当てはまる 毎秒4~6回の安静時振戦
無動・寡動(表情に変化がない、低く単調な話し方、動作がゆっくりでぎこちない、姿勢を変えると動作が上手くできない)
動かそうとするとカクカク感じられるほど筋肉が硬い(歯車現象)
姿勢・歩行障害(姿勢が前かがみ、手を振らずに歩く、歩き出すと止まれない突進現象が見られる、歩幅が小刻み、立ち直り反射障害がある)
臨床検査所見 項目全てに当てはまる 一般検査に特異的な異常はない
脳画像(CT/MRI)に明らかな異常はない
鑑別診断 項目全てに当てはまる 脳血管障害によるものではない
薬物性のものではない
その他脳変性疾患が無い

上の①~④を全て満たし、放っておくと病気が進行し、抗パーキンソン病薬による治療で自覚症状・神経所見に明らかな改善が見られる場合にパーキンソン病と診断されます。

<引用:神経変性疾患調査研究班の基準(1995)を一部改変>

また、次のようなパーキンソン病の特徴を覚えておくと良いでしょう

  • パーキンソン病では神経症状に左右差がある
  • 初期から高度の認知障害が現れたり、急激に発症したりした場合や画像検査で明らかな脳の萎縮や脳変性組織の病変が見られる場合は、パーキンソン病ではない可能性が高い

パーキンソン病が疑われる時は医師に相談しよう

パーキンソン病が疑われる場合は、できるだけ早い段階で専門医のもとを訪ねることが賢明です。ホーン・ヤールの重症度分類でステージⅠの早期の段階で専門医に受診する人もいれば、病気が進んだステージⅢの段階まで進行してから受診に来る人もいます。当然、パーキンソン病の治療は、なるべく早くに開始することに越したことはありません。

ホーン・ヤールの重症度分類

パーキンソン病の正しい診断・治療を受ける為には、パーキンソン病の専門医である「神経内科」の医師による診断が必須です。

もし、ここで説明した「パーキンソン病の診断基準」をもとに病気が疑われる場合やパーキンソン病に共通して初期から現れやすい「筋固縮(筋肉のこわばり)」が現れた場合は、直ぐに神経内科の医師に相談することをオススメします。