訪問看護のキホン
「訪問看護」とはどういったサービスなのか知らない人も多いのではないでしょうか?また、「訪問介護」「訪問リハビリ」と名前が似ているので、それらと区別がつかないという方も少なくないでしょう。
そこで、ここでは訪問看護とは「どんなサービスなのか?その内容は?利用料金は?」といったことを詳しく解説していきます。是非参考にして下さい。
<目次>
訪問看護とは
訪問看護は、1991年の老人保健法改正で老人訪問看護制度が創設されたことで誕生しました。それでは早速、訪問看護とはどのようなサービスなのか?その概要を見ていきましょう。
訪問看護とは、主に「看護師」や「准看護師」、「保健師」などの看護の専門家が利用者のもとを訪ねて、医療・看護の面から在宅療養をサポートするサービスです。「訪問ナース」とも呼ばれます。
これらの職種の他に、リハビリテーションの専門家である「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」が自宅を訪問して、身体の機能の維持・回復の為により専門的なリハビリテーションを提供してくれる事業所もあります。
対象
訪問看護を利用できる対象は次の通りです。
- 病院で高度な先進医療を受ける必要のない病状が安定したお年寄り
- 通院できないお年寄り
したがって、訪問看護は、要介護認定1~5の人が受けられる介護保険サービスの1つです。
また、医療保険でもサービスが利用できます。しかし、介護保険と医療保険の訪問看護を重複して受けることは原則出来ません。以前は医療保険を使っていましたが、2000年以降は介護保険が優先されるようになりました。
※要支援1・2の場合は、「介護予防訪問看護」の対象となりますが、提供されるサービスはほとんど同じです。
医療保険が適用される訪問看護
医療保健による対象者は次のような人です。
- 末期がん
- 厚生労働省が指定する難病疾患(多発性硬化症、脊髄小脳変性症、人口呼吸器を装着している患者など)
- 主治医が、急に病状が悪化し一時的かつ頻繁に訪問看護が必要と指示した場合(14日以内)
- 精神科疾患(介護保険との併用も可能)
サービス内容
訪問看護の目的は、在宅での自立した療養生活を可能な限り継続できるよう、医療的な支援をすることにあります。
ですので、訪問看護は、病状が安定していて主治医が必要と認めた場合でなければ利用することが出来ません。医師は、自らが必要と判断したサービスを「訪問看護指示書」に記載します。そして、訪問看護師はその指示書とケアマネージャーが作成したケアプランに基づいて、サービスを提供します。
サービス内容としては、健康状態のチェックや療養上の指導など非常に多岐に渡りますが、主に「①療養上の世話」「②療養環境の整備と家族への支援」「③医師の診療補助と医療機器の管理」「④機能訓練」の4つです。
療養上の世話 | 血圧、体温、呼吸、脈拍など健康状態のチェック |
---|---|
食事や排泄などの日常動作の支援 | |
清拭などの清潔保持及び感染予防 | |
療養環境の整備と家族への支援 | 療養生活環境に関する専門的な助言 |
療養生活環境に関する専門的な助言 | |
家族に対する看護や介護に関するアドバイス及び指導 | |
家族への健康相談 | |
医師の診療補助と医療機器の管理 | 痰の吸引、注射、摘便 |
褥瘡(床ずれ)の予防やケア | |
点滴、カテーテル、在宅酸素、栄養チューブ、人口肛門などの管理 | |
服薬指導や管理 | |
機能訓練 | 嚥下や歩行、移動に関する訓練 |
関節可動域訓練(ROM) |
他にも、「ターミナルケア」や「認知症ケア」「介護予防」なども行います。
※ターミナルケアとは、がん末期や終末期などでも、自宅で過ごせるよう適切なお手伝い
サービス提供事業所
訪問看護サービスの事業者は、大きく2種類に分かれます。
- 病院や診療所などの医療機関
- 訪問看護ステーション(地方公共団体、医療法人、医師会、社会福祉法人、営利法人が運営)
利用者や介護者が受けられるサービスは同じでも、どちらの看護サービスかによって利用料金が変わってきます。
訪問介護との違い
ここで、訪問看護と訪問介護(訪問ヘルパー)との違いに触れておきましょう。両者は名前が似ていますが異なるものです。
その大きな違いは、医療行為が行えるかどうかの違いでしょう。
訪問看護では、看護師がサービスを提供するので、「注射」や「摘便」、「採血」、「痰の吸引(訪問介護でも一部可能)」といった医療行為が行えるのが大きい相違点です。
訪問看護の利用料金
それでは、実際に訪問看護を受けるにはどれくらいの費用が掛かるのか確認していきましょう。
訪問看護ステーションと病院や診療所の料金比較
訪問看護の利用料金は、サービス提供の所要時間により、「20分未満」「30分未満」「30分以上1時間未満」「一時間以上1時間30分未満」といった具合に細かく分けられ、それぞれに料金が定められています。
要介護1~5でも要支援1・2でも利用時間が同じなら料金も同じです。ただし、先ほど説明した2つのサービスの提供事業者によって料金設定は異なります。地域差はございますが、およそ1単位10円と考えて下さい。
時間 | 訪問看護ステーションの単位 | 病院または診療所の単位 |
---|---|---|
20分未満 | 310単位 | 262単位 |
30分未満 | 463単位 | 392単位 |
30分以上1時間未満 | 814単位 | 567単位 |
1時間以上1時間30分未満 | 1117単位 | 835単位 |
理学療法士などによる訪問 1回20分 |
302単位 |
その他の加算
上の表の利用時間による料金設定を基本として、サービス内容や提供体制などの諸条件によって、別途加算料金が設定されています。
2015年に介護保険制度が改正された際に、新設されたのが「看護体制強化加算」です。これは、介護度が重い場合や医療の支援が多く必要な在宅療養者を支える訪問看護の体制を強化するために設けられた制度です。具体的には、緊急時の訪問看護や看取りなどを行うターミナルケアを熱心におこなった事業所について、月単位で算定されます。
そのほか、訪問看護には、早朝・夜間・深夜の看護や複数名の看護への加算があります。
加算項目 | 単位 |
---|---|
ターミナル加算 | 2000単位 |
早朝(6~8時) | 25%増 |
夜間(18~22時) | 25%増 |
深夜(22~翌6時) | 50%増 |
具体的ケース|実際に計算してみよう!
例えば、以下のような条件だと月額利用料はおよそ3,256円になります(1単位10円換算の1割負担の場合)。
- 訪問看護ステーションでのサービス利用
- 1回30分以上1時間未満
- 週1回(月4回)
<計算式> 814単位×4=3256円
ただし、病院や診療所による訪問看護よりも、訪問看護ステーションによる訪問看護の方が、料金は割高になります。
訪問看護と訪問介護を上手く組み合わせよう
訪問看護のサービスには、入浴や食事、排泄などの日常生活の介助も含まれています。しかし、訪問看護で最大の特徴ともいえるのは、専門知識を持った「看護師」「保健師」が医療的な視点からケアをすることです。
訪問看護の方が、訪問介護よりも利用料金が高くなっています。したがって、訪問看護では医療的なケアに専念してもらい、日常生活の介助は訪問介護を利用するなど上手にサービスを組み合わせて利用しましょう。