胃ろう(PEG)の基礎知識

口から食事が食べられなくなった時どうしますか?

このように口から食事を摂れなくなった時の栄養補給の為の手段として活用されるのが「胃ろう」です。

しかし、「胃ろうとは、一体どのようなものなのか」イメージが湧かない人も少なくないでしょう。

ここでは、そんな胃ろうについての基礎知識から、看護ケア(注入手順と管理法)に至るまで分かりやすく説明していきたいと思います。

1.胃ろうって何?

胃瘻いろうとは?

出典:介護職員等によるたんの吸引等(特定の者対象)の研修カリキュラム

まず、胃ろうとはどのようなものなのか確認しましょう。

胃瘻いろうとは、皮膚と胃の内部を繋ぐトンネル(瘻孔ろうこう)のことです。この瘻孔の中にカテーテル(チューブ)という管を通して、水分や栄養剤、薬剤を直接注入する方法を「胃ろう栄養」と言います。胃ろうを活用することで、長期的に安全かつ安定した栄養管理が出来ます。

脳卒中のマヒやパーキンソン病、認知症などで重度の嚥下障害がある人、誤嚥性肺炎を何度も繰り返す人などに用いられる経管栄養法の1つです。

手術(PEG)で造られる

胃ろうを造るには、お腹に穴を開ける必要があります。胃ろうを造設する手術方法は2つです。

内視鏡的胃瘻増設術(PEG=Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)
内視鏡を使って胃ろうを作る方法
開腹手術
外科的手術でお腹を開腹して胃ろうを造る方法

現在、開腹手術の必要がない①内視鏡を使ったPEG手術が主流となっています。PEGだと腹部の切開は数ミリと大変小さく済みます。

PEGは安全で確立された手術なのでリスクは少ないです。ただ、肺炎などの感染症に掛かるリスクはゼロではありません。患者がかなり衰弱していたり、重い合併症を持っていたりするとそのリスクは高まります。

また、胃ろうは内視鏡で造るので、口、のど、咽頭、食道などに内視鏡が通過出来ないような病気(食道がん、胃がんなど)がある人には適さないことがあります。そのような場合は、“腸ろう”など他の経管栄養法が選択されます。

経管栄養法(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)の違い

本来、胃ろうは瘻孔のこと、PEGは胃ろうを造る術式のことを指します。臨床現場では、胃ろう栄養とPEGはほぼ同義語で使われるので、この記事ではPEGのことも含めて「胃ろう」に統一することにします。

胃ろうメリット・デメリット

胃ろうのメリットは、日常生活の制限も少なく、本人のQOL(生活の質)が高い点です。具体的には次のような点が挙げられます。

  • 栄養状態が安定し、リハビリテーションによる機能回復、免疫力の改善に繋がる
  • 胃ろうとは並行して、口から食べることも出来る
  • 嚥下機能が回復すれば、胃ろうを外せ穴も自然にふさがる
  • 誤嚥性肺炎などの感染症にかかりにくい
  • チューブを抜いてしまいがちな経鼻経管栄養よりも胃ろうの方が扱いやすい
  • 服を着ていれば、胃ろうをしているか分からない

一方、胃ろうのデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 手術をともなう
  • 1~6ヵ月に一度は胃ろうカテーテルを交換しなければならない
  • 口で咀嚼そしゃくしないため、唾液の分泌が減り、自浄作用が低下し細菌が繁殖しやすくなる
  • 嚥下機能の低下により、唾液の誤嚥を起こしやすくなる

PEGの造設手術にかかる費用はHow Much?

胃ろうの増設手術に掛かる費用は、30万円弱です。そこから介護保険が使えるので、実際の費用負担は1割負担の場合3万円くらいです(現役並み所得者は3割負担なので8万円程度になります)。

なお、胃ろうの増設術には「同意書」が必要です。ご本人やご家族、成年後見人のサインが必要となります。

2.胃ろうの種類とカテーテル

胃ろうに通すカテーテルの種類は、患者の身体状態や生活習慣に応じて最適なものを選びます。

カテーテルの種類は、チューブの形(ボタン型、チューブ型)と内部のストッパー(バンパー型、バルーン型)の組み合わせで4種類に分けられます。

胃瘻の種類
  ボタン型 チューブ型
種類

メリット 引っ張りにく、抜けにくい 引っ張りにく、抜けにくい 栄養剤を入れやすい 栄養剤を入れやすい
デメリット 栄養剤を入れにくい 栄養剤を入れにくい 引っ張りやすく、抜けやすい  引っ張りやすく、抜けやすい 
交換の目安 4~6ヶ月 1~2ヶ月 4~6ヶ月 1~2ヶ月

3.看護ケア|胃ろうの注入手順と管理法

1.胃ろうの注入手順

胃ろうに液体栄養剤を注入する手順を解説していきます。胃ろうからの液体栄養剤の注入には1~2時間程度かかるので、しっかりと安全を確保し、利用者がなるべく楽な姿勢を取れるよう看護ケアと注入後の管理を徹底しましょう。

①指示確認と手洗いを行う

  • 医師の指示を確認します(介護職員等喀痰吸引等指示書などで)。朝・夕2回注入する利用者もいれば、朝・昼・夕3回注入する利用者もいます。
  • 手洗いを入念に行います。感染予防の基本は手洗いです。

②本人確認と状態チェックを行う

  • 利用者に名乗って貰ったり、ベッドのネームプレートで本人確認を行い利用者を間違えないようにします。栄養剤の量は患者の体格などで変わってきます。
  • 胃ろうによる経管栄養の時間であることを伝え、「○○さん、栄養剤を胃ろうから入れていいですか?」と同意を得ます。
  • 胃ろうを注入する前に、体温と血圧、酸素飽和度を測定しましょう。
  • 排尿・便の状態、意識状態、腹部の張りや違和感など、いつもと違う様子はないか確認しましょう。

高熱があるなど本人の状態が普段と違う場合は、医師または看護師に連絡を入れ指示をあおぎましょう。

③姿勢を整える

無理な姿勢で胃ろうに栄養剤を注入してしまうと、栄養剤が逆流し嘔吐や誤嚥のリスクが高まります。また、注入時間は1~2時間程度と長時間に及びます。したがって、安全かつ出来るだけ楽な姿勢に整えましょう。

  • 介護ベッドの背もたれは「ファウラー位(ベッドを30~60度と角度を付けた状態)」にして下さい。状態を起こすことで栄養剤の逆流による嘔吐や、誤嚥性肺炎を防止します。また、腹部は圧迫しないで下さい。
  • 褥瘡や猫背などでファウラー位を保てない場合、医師・看護職と良肢位(本人に合った姿勢)を相談します。
  • クッションや電動ベッドの膝上げ機能を使い、膝を軽く曲げ楽な姿勢にします。

④栄養剤をイルリガートル(ボトル)に入れる

  • クレンメを閉め、栄養剤が流れ落ちないようにします。
  • 栄養剤の容器がイルリガートル(栄養剤を入れるボトル)に入れていきます。
  • イルリガートルを点滴スタンドなどに吊るします。イルリガートルを吊るす高さは、本人の頭部から50㎝程度上です。
  • 半固形栄養剤の場合は、イルリガートルは不要です。

⑤栄養剤を点滴筒→栄養点滴チューブの先端まで流す

1.点滴筒まで、栄養剤を流します

栄養剤を点滴筒の3分の1~2分の1程度まで入れます。点滴筒の栄養剤が少なすぎたり、多すぎたりする点滴の落下速度を確認しにくくなります。

2.栄養点滴のチューブの先端まで、栄養剤を流します

クレンメを開ける→チューブの先端まで栄養剤で満たす→クレンメを閉め栄養剤の流れを止める。栄養剤をチューブの先端まで満たす理由は、胃になるべく栄養点滴チューブ内の空気が入らないようにする為です。

⑥栄養点滴チューブと胃ろうカテーテルを接続する

  • 身体から出ているカテーテルが胃ろうのカテーテルであるかどうか確認しましょう。他のチューブと間違えると、栄養剤が気管などに入ってしまい命にかかわる重大な事故になります(特に、気管切開の利用者の場合は気を付けましょう)。
  • カテーテルの破損や抜けはないか、皮膚に食い込んでいないか確認します。
  • 胃ろうカテーテルの接続部分をアルコールティッシュなどで拭きます。
  • 栄養点滴チューブと胃ろうのカテーテルを接続します。
  • 半固形栄養剤の場合は、胃ろうカテーテルと半固形剤の容器を繋げます。

⑦注入速度の調整

クレンメを緩めて、栄養剤を滴下させ、落下速度を調節します。腕時計を見ながら、一分間の滴下数を数え注入速度を調整しましょう。

下の数値は悪までも目安であり、メーカーによって異なることがあります(看護職に確認しましょう)。

  • 1時間に100㎖→3秒に1滴
  • 1時間に200㎖→3秒に2滴

半固形剤の場合は、両手で容器を押し、5~15分ほどかけて注入します。

⑧注入中は、利用者の状態を観察します

胃ろうによる経管栄養を開始したら、問題が無いか随時確認しましょう。胃ろうを使っている人の中には身体が弱り、痛みや苦痛を訴えることが十分できない人がたくさんいます。以下のような項目に注意して見守りましょう。

栄養剤注入の異常の有無 栄養剤の漏れはないか
滴下が速すぎないか
滴下が停止していないか
正しい体位を保持できてるか
顔色や呼吸など 息切れはないか
顔色に異常はないか
苦しそうにしていないか
汗が異常に出ていないか
意識状態や低下していないか
消化器の異常 腹痛はないか
吐き気、嘔吐はないか、気分は悪くないか
お腹の張りや下痢はないか

⑨注入後の看護ケア

胃ろうによる注入が終わり「ハイ終了!」という訳にはいきません。

胃ろうカテーテ内に栄養剤が残っていると、チューブが詰まったり、細菌繁殖の原因となりますので、注入後の看護ケアも大切です。

  • 栄養剤の注入後、クレンメを閉じて、栄養点滴チューブを胃ろうカテーテルから外します(栄養剤の注入が終了したことを利用者に伝えてから、接続を外しましょう)。
  • 胃ろうカテーテルに白湯を流します(白湯が少量の場合はカテーテルチップ型シリンジ、多量の場合はイルリガートルを使う)。
  • 白湯を流し終わったら、胃ろうカテーテルの蓋を閉めます。そしてしばらくの間(注入後1時間程度)、状態を起こした姿勢を保ち栄養剤の逆流を防ぎます。
  • その間、嘔吐、げっぷ、お腹の張り、むせ、吐き気などがないことを確認しましょう。

2.胃ろうの看護ケアと管理法

誤嚥性肺炎を予防する看護ケア

胃ろうを使ったら、口から食べないと思って歯ブラシなどを怠る人も多いと思います。胃ろうを使っていると誤嚥性肺炎が起こりにくいのは事実です。しかし、誤嚥性肺炎は栄養剤の逆流や唾液の誤嚥でも起こります。「誤嚥を防ぐ」という目的で胃ろうを造った人でも、現実的には誤嚥性肺炎が多発しています。

したがって、経管栄養の方法が間違っていたり、口腔ケアが十分になされていないと胃ろうを付けていても誤嚥性肺炎になるリスクはあります。

誤嚥性肺炎と経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻経管)

胃食道逆流の予防法としては、注入する栄養剤にトロミをつけたり、注入するスピードを遅くすることです。さらに食前の口腔ケアやマッサージを行い、口から食べなくても、咀嚼の動き、口唇や舌の運動などを定期的なケアを実施することが大切です。

経管栄養前の口腔マッサージ

胃ろうの周囲は清潔にケアしよう

胃ろうのケアは、常に清潔にしておく必要があります。普段のお手入れとしては、人工栄養を注入するときに、胃ろうの周囲を濡れタオルやウェットティッシュなどで拭いて、キレイにする必要があります。胃ろうから胃液が漏れると、皮膚が赤くただれることもよくあります。胃液が漏れたらそのたびにキレイに洗い流します。

また、胃ろうを増設したからといってお風呂に入れなくなるわけではありません。特に何かがぶったりする必要もなく通常通りに入浴し、石鹸で身体を洗うことも出来ます。なによりも、胃ろう周辺の皮膚の清潔保持に努めるよう介護者は看護ケアすることが大切です。

こより状にしたティッシュペーパーをチューブ挿入部に巻くと、チューブの角度が垂直に近くなるうえ、皮膚の圧迫や乾燥を予防できます。

胃ろうが抜けた時のケア

胃ろうカテーテル(チューブ)が抜けたときは、直ぐに医療機関に報告してください。

なぜなら、チューブを抜けたままにしておくと、胃ろうは急速に縮んで穴は閉じていきます(一般に6時間以上が経過すると)。そうなるとチューブの再挿入が困難になるからです。

また、胃ろうを増設して1か月未満で瘻孔が完成されていない時期にチューブが抜去してしまうと、胃の内容物が腹腔内に漏れて腹膜炎ふくまくえんなどを起こすことがあり非常に危険です。したがって、カテーテルが抜けたときは、速やかに病院やかかりつけ医に連絡してください。

4.胃ろうを「造設するか、しないか」の判断ガイドライン

医師から、胃ろうを勧められた時にみなさんは「胃ろうを造るべきか、造らないべきか」という難しい選択を突き付けられます。その時に、戸惑ってしまう人も多いはずです。そんな時にどのような判断を下せばよいのでしょうか?

まず、みなさんに知っておいて欲しいことがあります。それは、胃ろうが大きく2つの目的のために造設されるということです。

  1. 生活の質(QOL)の向上または臨時的な栄養補給
  2. 延命措置

①生活の質(QOL)の向上の為に造る

胃ろうは、食べられない人の最終手段ではなく、あくまで「生活の質(QOL)を向上」または「口から食べるようになるまでの臨時的な栄養補給」のための手段として使われます。

胃ろうから必要な量の栄養と水分を摂取し、適切な運動で体力をつけながら口腔ケアや嚥下訓練を継続していく中で、再び口から食べられるようになる人は沢山います。胃ろうと経口摂取を併用し、食べやすいものを食べられる分だけ食べて不足分を胃ろうで補う人もいます。

例えば、現在脳梗塞で嚥下障害があったとしても、リハビリを続ければ口から食べられる可能性がある患者さんの場合などに、胃ろうは効果的です。なぜなら、胃ろうを増設して十分な栄養を安全に補給することは、リハビリの効果を高め脳卒中の回復に有効なケースがあるからです(リハビリはより早期の段階で行うとより効果が高いとされています)。

また、嚥下機能が回復すると胃ろうを外すこともできます。筆者の母も2年ほど経管栄養をしていましたが、その後口から食べられるようになり胃ろうを外しました。

リハビリの回復

なので、「胃ろうを作ったから、もう口からは食べられない」と考えるのは、間違いです。それでは、なぜ胃ろうはこんなにも嫌われてしまったのでしょうか?

②延命措置の為に造る

それは、胃ろうが、認知症の終末期や老衰などの患者さんに対して「延命措置」として用いられているからです。

胃ろうを使い食事をすることで、口から食べられなくても生きるのに必要な栄養を補給することは可能です。しかし、これが大きな問題となることがあります。胃ろうの最大の問題点は、一度増設した胃ろうからの経管栄養を、中止することが大変難しいという現実です。

2012年の日本老年医学会のガイドラインでは、次のように胃ろうを含めた人工栄養の中止について、患者さんの尊厳を考慮したうえでの「撤退も選択肢」とされています。

胃ろう増設を含む経管栄養や、気管切開、人口呼吸器装着などの適応は、慎重に検討されるべきである。すなわち、何らかの治療が、患者本人の尊厳を損なったり苦痛を増大させたりする可能性がある時には、治療の差し控えや治療からの撤退も選択肢として考慮する必要がある。

<日本老年医学会2012年>

しかし、実際胃ろうからの人工栄養の中止に関する法律的な整備が無い日本では、胃ろう栄養の中止はグレーゾーンに近い行為であるという考えかたが医療現場には根強く存在します。

したがって、一度胃ろうを造設すると自然な最期を迎えることが困難になってしまったというケースが多くあり、過剰な延命措置が問題となっているのです。このような背景から、「胃ろうはただの延命措置であり、本人を苦しめるだけだ」という風に単純化され「胃ろうを作ったら最後」というバッシングに繋がったとみられます。

本人の状態や家族の希望等を総合判断して慎重に考えよう

「胃ろうを造るべきか、造らないべきか」という絶対的な判断基準はありません。

ただ、胃ろうを造るべきかかどうかの1つの判断基準として「胃ろうによって患者さんの全身状態が改善し、生活の質の向上が期待できるかどうか」考え選択してみてはいかがでしょうか。また、セカンドオピニオンを利用して、胃ろうを造る前に複数の医師の意見を求めるのもいいでしょう。

その為には、介護者自身も受け身になるのではなく、胃ろうとはどういうものなのか積極的に正しい知識を入れておくべきです。