認知症対応型通所介護のきほん
みなさん「認知症対応型通所介護」っていう言葉を知っていますか?
- 認知症の母が近所のデイサービスに受け入れを拒否された。私は日中仕事だしなんとか母を見てくれるデイサービスはないのかな?
- 認知症の父はデイサービスに馴染めないみたい・・・
このようなお悩みをお持ちのご家族に、私が是非オススメしたいのが「認知症対応型通所介護」です。
この記事では「認知症対応型通所介護とはどんな施設か」といった基礎知識はもちろんのこと、「サービスの対象者や人員基準」「費用の計算方法」など至るまで懇切丁寧に分かりやすく解説していきますので、ぜひご一読下さい。
<目次>
- 認知症対応型通所介護とは
- 認知症専門のデイサービス
- 施設形態は3タイプ
- 認知症対応型通所介護の施設選びのポイント
- 認知症対応型通所介護の利用料金
- 介護保険サービス費
- 認知症デイサービスの費用計算シミュレーション
1.認知症対応型通所介護とは
認知症対応型通所介護は、今後ますます認知症のお年寄りが増えることが予測される中、地域での充実が期待されるサービスです。
認知症対応型通所介護とは、認知症の高齢者のみを対象にしたデイサービスのことで、認知症デイサービスと呼ばれることもあります。
お年寄りを朝から夕方にかけ一時的に預かり、身体介護(入浴介助、排泄介助、食事介助)や利用者の状態や希望に合わせたレクリエーション(音楽療法、回想法などの認知症予防プログラム)、機能訓練、家事、買い物、散歩などのサービスを提供してくれます。
この説明だけを見ると、大して一般的なデイサービスと違いが無いように感じますが、そこには大きな違いが存在します。
それでは早速、認知症対応型通所介護と通常のデイサービスとの間にはどのような違いがあるのか確認していきましょう。
参考リンク>>一般的なデイサービスについて
1.認知症専門のデイサービス
対象
何といっても、通常のデイサービスと認知症対応型通所介護の一番の相違点は、施設の対象者の違いです。
通常のデイサービスは脳卒中の後遺症や認知症、パーキンソン病など様々な理由で介護が必要になった人が利用する施設ですが、認知症対応型通所介護では利用対象が認知症の方に限定されています。
認知症対応型通所介護の対象者は、医師により認知症と診断された要介護1~5及び要支援1・2の方です(急性期以外で病状が安定した人が対象であり、市区町村によってはADL(日常生活動作)の自立度が一定以上などの条件が設定されている場合もあります)。
※なお、要支援1・2の人は、認知症の介護予防を目的とした「介護予防認知症対応型通所介護」の対象です。サービス内容はほとんど同じです。
通常のデイサービスでも認知症の人を受け入れていますが以下のような理由から思い通りのサービスが受けられないケースがよく見受けられます。
- 病気の特性上、本人が施設に馴染めない
- 施設の職員が認知症に関する知識や理解が乏しい
- 大勢でのレクリエーションやリハビリが中心であり、1人1人に合わせたものではない。
- 認知症予防・改善に効果的なレクリエーションやリハビリが行われない
また、デイサービスは、ショートステイや訪問看護といった数ある介護サービスの中でも、特に認知症の方が事業所側から断られる確率が高いサービスなのです。なんと全体の60%近くをデイサービスが占めています。
一方、認知症対応型通所介護は文字通り、「認知症に特化したデイサービス」です。施設には、認知症の人を介護するにあたっての専門知識や介護技術を習得した介護職員や看護師が多く在籍していることもあり、通常のデイサービスでは受け入れを断られた方でも入所できることがあります。
施設によっては、認知症に効果的な「音楽療法やアニマルセラピー、学習療法」などの専門スタッフが在籍していて、定期的にレクリエーションやリハビリを実施してくれる施設も存在します。
人員基準
認知症対応型通所介護の定員は、「12名以下で少人数」であるように法律で人員基準が定められています。
これは、認知症の特性を踏まえ1人に合ったきめ細やかな介護ケアを受けられるだけではなく、「口数が減ったり」、「引きこもりになったり」、「暴力的になったり」しがちな認知症の方が、自然とコミュニケーションを取りやすい環境を整えるためです。
また、施設によっては古民家を認知症の方の為にバリアフリー化した施設もあり、家庭的で落ち着いた雰囲気の中で安全に過ごすことができるよう環境を整備しているところもあります。
こうした環境は、認知症により自宅にこもりがちなお年寄りの精神状態や身体機能の維持、社会的孤立感の解消に役立ちます。さらに、介護者にとっても日中の介護負担が軽減されるだけでなく、認知症の症状が和らぐことで在宅介護がグーンと楽になるはずです。
なんと、認知症対応型通所介護に通い始めたことで、認知症の行動・心理症状が入所前よりも改善したとする報告が、入所後に悪化したとする報告を上回っており、特に、被害妄想や介護拒否、落ち着きがないといった症状が10~20%の人で改善されたとするデータもあり、その効果が期待されます。(厚生労働省 認知症への対応について 2015年)。
2.施設形態は3タイプ
認知症対応型通所介護は、施設の形態によって3つのタイプに分かれます。
単独型 | 民家などを専用の施設として利用したタイプ |
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併設型 | 特別予後老人ホームや医療機関、介護老人保健施設などに併設されているタイプ |
共用型 | グループホームなどの共用部分(食堂・居間)を利用するし、利用者は施設入居している人達と共に過ごしますタイプ |
上のリストは事業所の多い順番に並んでいて、全体の50%を家庭的な民家などを利用した単独型が占めているのも認知症対応型通所介護の特徴です。どの施設でも自宅との送迎がサービスの中に含まれています。
3.認知症デイサービスの施設選びのポイント
認知症対応型通所介護を利用する際には、利用者本人と施設職員の相性を考慮する必要があります。施設選びのポイントとしては次のようなことに気を付けて下さい。
- 本人の人権・意思を尊重されている
- 認知症の人同士で、馴染みの人間関係が形成される
- 本人が何等かの役割をもって 自発的に行事に参加できる環境がある
- 自然や地域と触れ合う機会がある
- 問題行動を抑えつけず、受容的に受け止めてくれる
これらの条件はいずれも認知症の方と上手にケアしていく為に大切なことです。
参考リンク>>良い認知症ケアと悪いケア
2.認知症対応型通所介護の利用料金
認知症対応型通所介護では手厚いサービスが受けられることから、一般的なデイサービスよりも料金が高めに設定されています。それではどれくらいの費用が掛かるのかチェックしていきましょう。
1.介護保険サービス費
認知症対応型通所介護の費用は、基本的に以下の3つの条件によって決まります。
- 利用者の要介護度
- 施設形態単独型、併設型、共用型
- 利用時間「3時間以上5時間未満」「5時間以上7時間未満」「7時間以上9時間未満」の3つの時間設定
その他、サービスを追加した場合には以下のような加算項目が加わり利用料金が加算されていきます。
- 入浴介助
- 個別機能訓練加算
- 栄養改善加算
- 口腔機能向上加算
- 若年性認知症利用者受入加算
下の「平成27年度 認知症対応型通所介護の介護報酬・料金費用表」をご覧ください。実際にどれくらいの費用が掛かるのかご自身で計算してみて下さい。分かりづらい人は、下の費用計算シミュレーションで単位数などを交えて分かりやすく解説しています(2016年4月時点)。
<画像をクリックするとPDFファイルをダウンロードできます。>
2.認知症デイサービスの費用計算シミュレーション
それでは実際に、認知症対応型通所介護の月額料金をシミュレーション計算してみましょう。
- 利用者は要介護4
- 利用時間は「5時間以上7時間未満」
- グループホームと共用型の施設
- 1月の利用回数は6日
以上のサービスを利用した場合、次のように料金計算できます。(1単位=10円、個人負担=1割負担の場合)
【計算式】
- 486単位×6日(利用回数)=2,918単位
- 2,918単位×10円×10%=2,918円
認知症対応型通所介護の自己負担費用(6回分)=2,918円+食費やおむつ代、日常生活費(娯楽費、理美容費)などの自費費用
それでは、認知症対応型通所介護の1ヶ月にかかる利用費用の求め方を確認していきましょう。
まず、上の表をもとに認知症対応型通所介護1回の単位を割り出し、利用回数(ここでは6日)を掛けます。その後、1単位あたり約10円を掛け、さらに介護保険の自己負担分10%を掛けて計算完了です。
およそ、あなたの自己負担分は月額2,918円になります。
加えて、加算項目がある場合は、介護保険サービス費に足して下さい。