せん妄の症状や原因&認知症との識別や介護のコツ
「幻覚が見える」「大声で叫ぶ」といったの症状は、もしかすると「せん妄」という状態かもしれませんよ?
せん妄なんて聞いたことが無いなという人も多いと思います。
この記事では、その様な方の為に、せん妄の「症状」「原因」「介護のコツ」「治療法」について解説しておりますので、是非参考にしていただければと思います。
せん妄
せん妄状態とは
「せん妄」は意識障害の1つであり、認知症などの病気で現れる症状で次のような状態を指します。
せん妄とは、軽い意識障害と、不穏(興奮して動揺している状態)が合わさり、不安・幻覚・妄想などの症状が現れている状態。
つまり、一時的な意識障害に不穏が伴う状態をせん妄と言います。
せん妄の症状
せん妄は、軽度の意識障害に不穏が伴った状態です。本人は幻覚、妄想、不安、恐怖を感じており、精神的に極めてアンバランスな状態にあります。典型的なせん妄の症状は、目をつぶって体をゆすったり、意味が分からない言葉を呟いたりします。
また、せん妄の重症度(軽度・中等度・高度)に応じてその症状は多様です。
- 軽度のせん妄
- 困惑したような表情をしている。目がうつろで、相手と視線を合わせない。
- 中等度のせん妄
- 手で空中を掴むような仕草をする。夕方以降に不穏になる(夜間せん妄)。
- 高度のせん妄
- うろうろと動き回り、転んでばかりいる。大声で叫ぶこともある。
せん妄の原因
せん妄を起こす原因は、「身体的」「心理的・環境的」なものがあります。
- 体調不良(脱水や酷い便秘)
- 薬剤性のせん妄(パーキンソン病の薬、抗不安剤や抗うつ薬)
- 中枢神経系の病気(脳卒中の後遺症やレビー小体型認知症や脳血管性認知症)
- 内分泌疾患
- 血管・循環障害(心不全や心不整脈、貧血)
- 感染(肺炎による脳の酸欠で起こる)
- アルコール
- 代謝障害
- その他(ストレスなど)
高齢者のせん妄の主な原因
高齢者がせん妄を引き起こす主な原因は、「薬の影響」「心不全や呼吸不全」「代謝異常や内分泌疾患」などです。
せん妄の種類
せん妄は、原因やその症状でいくつかの種類に分けられます。
夜間せん妄 | 夕方から明け方までの夜間に悪化するもの |
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術後せん妄 | 全身麻酔の手術をした人や術後のストレスで一定の期間起こるもの |
作業せん妄 | 職業上の動作を意識障害下で繰り返すもの |
アルコール離脱せん妄 | アルコール依存症の人などが断酒をきっかけに起こるもの |
認知症とせん妄の関係性
せん妄は認知症で現れる症状の1つです。しかし、他の原因でも現れる症状ですので、「せん妄=認知症」というわけではありません。
したがって、せん妄の原因によっては治療法が異なりますので、認知症との鑑別診断が必要です。
せん妄がない状態の時に知能検査を実施
認知症の誤診や見逃しを防ぐ為にも、せん妄がある時期に認知症の知能検査(HDS-R)は行わないことが基本です。認知症の知能検査は、せん妄の時期に実施すると正確なスコアが取れず正しく評価ができないのでせん妄が無い時期に実施しましょう。
認知症の知能検査(HDS-R)については「簡単自宅で認知症テスト|長谷川式認知症スケール」を参考にして下さい。
一時的なせん妄は認知症では無い
一過性(一時的)のせん妄を起こしただけで正常に戻った人は、認知症ではありません。これは、先の原因などから起こる一過性のせん妄です。適切な治療により改善ができるものです。
しかし、一度でもせん妄を起こしたことがある高齢者は、認知症になりやすいハイリスク群です。したがって、一時的なせん妄を頻発する人は、認知症である確率が高いです。
せん妄はレビー小体型認知症で多い症状
せん妄は、意識障害と不穏(興奮して動揺している状態)が合わさり、不安・幻覚(妄想・幻視・幻聴)症状が現れる症状です。
一般に、アルツハイマー型認知症と前頭側頭型認知症(ピック病)の方は意識がハッキリしていて、ほとんどせん妄を起こしません。しかし、レビー小体型認知症や脳血管性認知症の方は、意識障害があり「せん妄」を起こしやすい認知症です。
- アルツハイマー型認知症の5%でせん妄が起こる
- 脳血管性認知症の30%でせん妄が起こる
- レビー小体型認知症の70%でせん妄が起こる
ご覧の通り、レビー小体型認知症は、特にせん妄が好発する認知症です。主に、「幻視」という「存在するはずのない虫や人などが見える幻覚症状」が現れます。レビー小体型認知症の幻視は、長い時では数ヶ月続きます。
アルツハイマー型認知症でも、幻覚症状の1つである妄想が現れますが、意識障害はない場合が多く、その場合はせん妄ではありません。
せん妄の治療と介護のコツ
認知症のせん妄として起こりやすいのは、レビー小体型認知症の幻視です。ここでは、レビー小体型認知症に現れるせん妄(幻視)の治療法と介護のコツについて解説しております。
せん妄(幻視)の治療薬
レビー小体型認知症のせん妄による意識障害には、シチコリンの静脈注射を打ち意識を元に戻すこともあります。また、幻視症状には、「アリセプト(コリンエステラーゼ阻害薬)」や「抑肝散「という漢方薬を用いると認知機能の改善が期待でき効果的です。
せん妄(幻視)の介護のコツ
レビー小体型認知症の幻視は、本人にとってはとてもリアルに見えますので、無理に否定はしてはいけません。次のような介護対応を心掛けると良いでしょう。
- 見えている物が「どのようなものか」「どこにあるのか」といった情報をしっかりと聞き、本人に理解を示しつつ、不安や興奮を落ち着かせる。
- 「私には見えないけど、どこにいるの?」と否定も肯定もせず原因を聞きだす
- 「幻視」は、自分から近づいてきたり、襲ってきたりすることはないので、一度その場から離れてみる
- 暗がりで「幻視」は現れやすいので、明かりをつけると良い
- 錯覚を起こす原因となった人形や絵、服などを取り除くことで、錯視の原因を失くす
- せん妄は昼夜逆転が起きていると現れやすい傾向があるので、日中にしっかりと動いておいてもらう
- 水分補給をしっかりと行い脱水症状を改善する
他にもレビー小体型認知症の介護のコツについて「これで安心!レビー小体型認知症の方への介護のコツ6選」で解説しております。