純粋型・通常型?発病の仕方で変わる2つのレビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、大きく分けて2タイプに分かれることをご存知でしょうか?

この2タイプの違いにより治療法などが変わってきます。したがって、ここで2つのレビー小体型認知症について学び、治療や介護に活かしていただければと思います。

「純粋型」と「通常型」のレビー小体型認知症とは

レビー小体型認知症は、発症年齢や初発症状などの違いから「純粋型」と「通常型」の2タイプに分かれます。

純粋型レビー小体型認知症
純粋型は、発症年齢が40歳くらいの若い方に多く、約80%の方にパーキンソン症状が初発症状として現れるのが特徴。記憶障害が初発症状として現れるのは約11%と低い。
通常型レビー小体型認知症
通常型は、発症年齢が70歳くらいの高齢者に多く、約57%の方にもの忘れなどの記憶障害が初発症状として現れるのが特徴。パーキンソン症状が初発症状として現れるのは約14%と低い。

つまり、「純粋型のレビー小体型認知症」が若年期で発症し、初発症状がパーキンソン症状であるのに対し、「通常型のレビー小体型認知症」は初老あるいは老年期で発症し、初発症状が記憶障害が現れます。

純粋型 アルツハイマー病の病変は、あってもごく少量あるいはほとんどありません。始めに、レビー小体型認知症と診断されるケースやパーキンソン病から移行してくるケースがあります。
通常型 まず、記憶障害などのアルツハイマー病の特徴症状や病変が現れます。そして後に、幻視やパーキンソン症状といったレビー小体型認知症の特徴症状や病変が現れます。いわゆるアルツハイマーとレビーの混合型認知症のケースです。

つまり、アルツハイマー型認知症の病変が有るのが「通常型」で、無いのが「純粋型」のレビー小体型認知症になります。通常型では、パーキンソン病の病理像があるのにもかかわらず、約30%の人には、亡くなるまでパーキンソン症状が現れないというデータもあります。

また、レビー小体型認知症患者の数は、圧倒的に「通常型」が多いとされています。このことから、アルツハイマー病とだけ診断され、レビー小体型が見逃されてしまうことが非常に多いので注意が必要です。

レビー小体型認知症とはどういった病気で、どのような症状が現れるのかは『レビー小体型認知症の基礎知識』で詳しく解説しています。

レビー小体型認知症の基礎知識

通常型DLBと純粋型DLBの臨床データ
    通常型DLB 純粋型DLB
発病年齢   69.2歳 38.9歳
初発症状 記憶障害 57.1% 11.1%
精神病状態 14.3% 11.1%
パーキンソンニズム 14.3% 77.3%
起立性低血圧 10.7% 0%

Kosaka K,”Diffuse Lewy body disease in Japan:Journal of Neurology”(1990)を基に作成

純粋型と通常型の違い

また、両者の違いは、「アルツハイマー型認知症」を合併しているかどうか」が見極めのポイントとなってきます。

アルツハイマー型認知症の基礎知識

レビー小体とアルツハイマーは兄弟?

しかし、一体なぜ?

「アルツハイマー型とレビー小体型の合併タイプ」や「アルツハイマー型からの移行タイプ」といった通常型が圧倒的に多いのでしょうか?

この点に関しては、レビー小体型認知症の発見者である小阪憲司先生も、アルツハイマー病とレビー小体病は非常に密接な関係があると言及されています。

現在、両者のハッキリとした関係性は解明されていませんが、いわば「兄弟のような関係」であると考えられています。ここで、両者の関係性を説明した秋山治彦先生(東京都医学総合研究所)が立てられた仮説を1つご紹介します。

秋山仮説

仮説では、それぞれ病気の発症原因をもとに、両者の関係性は下のように説明されています。

  • アルツハイマー病の原因は、アミロイドβからできた老人斑というシミであり、ゴミのような存在
  • レビー小体病の原因は、αシヌクレインというタンパク質からできたレビー小体という構造物であり、不要なものを捨てるゴミ箱のような存在

つまり、「アルツハイマー病」がゴミで、「レビー小体病」がゴミ箱というわけです。まず、「アルツハイマー病(=ゴミ)」が現れることで記憶障害といった認知機能障害が現れます。そして、時間の経過とともにゴミも段々と増えていきます。

そこで、「レビー小体病(=ゴミ箱)」が登場です。ゴミであるアルツハイマー病をゴミ箱に閉じ込めつつ自分自身も増えていくという仮説です。

いかがでしたか?とても説得力がある仮説ではないでしょうか?また、両者の関係が解明され次第、このサイトでも情報を発信させて頂きたいと思います。

治療薬の問題

(写真はイメージです)

「アルツハイマー型もレビー小体型も同じ認知症で兄弟みたいなものだから、同じ治療法で良いよね?」とお考えではないですか。

しかし、それはダメです!

アルツハイマー型認知症からレビー小体型認知症を合併した場合やパーキンソン病からレビー小体型認知症に移行してきた場合は、治療薬の見直しが必要になることがあるからです。

通常型の治療薬

「アリセプト」という「アルツハイマー型」と「レビー小体型」で共通的で用いる有名な治療薬があります。

しかし、どちらの認知症でも同じように使えるという訳ではありません。なぜなら、「レビー小体型」の方は、薬剤過敏性があり薬が効き過ぎてしまうからです。

したがって、「アルツハイマー型」と「レビー小体型」を合併している「通常型」場合は、アリセプトなどの今までアルツハイマー型の治療で用いた薬の種類や処方量の見直しが必要なケースがあります。

純粋型の治療薬

また、パーキンソン病からレビー小体型認知症に移行してきた場合、治療に使えなくなる薬があります。

それは、「抗コリン薬」というパーキンソン病の治療に使用される薬です。

「抗コリン薬」は、神経伝達物資のアセチルコリンを減少させることで、パーキンソン病で減少するドーパミンとのバランスを取ることで震えなどを抑える薬です。

しかし、レビー小体型認知症は、そのアセチルコリンの量が減少する病気です。その為、「抗コリン薬」を用いることで、もの忘れや幻視などの認知症の症状を悪化させる恐れがあるからです。

レビー小体型認知症の兆候が現れたら直ぐに医師に相談

したがって、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病の方に幻視や薬剤過敏性などのレビー小体型認知症の兆候が見られた時は、医師に直ぐに相談しレビー小体型認知症の疑いが無いか診てもらいましょう。

レビー小体型認知症を見逃すな|早期発見の為の6つのポイント」で病気を早期発見の為の参考にして下さい。