レビー小体型認知症の画像検査法|CT・MRI・SPECT・MIBG
レビー小体型認知症は、1980年代以降からようやく世界的に認知されるようになった新しいタイプの認知症です。
以下の理由により、レビー小体型認知症は、医師でも誤診や・見落としが多い病気です。
- アルツハイマー型認知症や若年性アルツハイマー病とは違い、レビー小体型認知症は広く知られていない認知障害
- レビー小体型認知症は、鬱病や統合失調症、自律神経失調症、パーキンソン病といった様々な病気と同じ様な症状が現れる
- 今現在レビー小体型認知症の原因である「レビー小体」そのものを検出できる検査法は存在しない。
実際は、レビー小体型認知症なのに他の認知症や病気と診察され、間違った治療を続けると気が付いたことには症状が悪化し、取り返しのつかないケースもあります。
レビー小体型認知症の誤診や見逃しを少なくするためにも、レビー小体型認知症の画像検査について解説していきます。介護者の方にも、分かりやすく解説しますので是非参考にしていただければと思います。
<目次>
レビー小体型認知症の画像検査を行う上での注意点
レビー小体型認知症やパーキンソン病の原因である「レビー小体」自体は、どんな画像検査でも映し出すことはできません。
しかし、次のような画像検査法を用いることで、アルツハイマー型認知症、脳梗塞、脳出血、脳腫瘍といった他の病気と区別し、発見の見落としや誤診を防ぎ、より正確な診断を下すことが可能です。
- CT
- MRI
- SPECT
- MIBG心筋シンチグラフィ
しかし、レビー小体型認知症の診断は、画像検査だけを判断材料にしては誤診や見逃しを招く危険性があります。画像検査と実際に現れているレビー小体型認知症の特徴的な症状を併せて総合的に判断することが大切です。
介護者の皆様も、画像検査だけでレビー小体型認知症かどうか判断する医師にはご注意下さい。レビー小体型認知症を見落としてしまう可能性があります。「説明が分かりにくいな・・・」「真摯的に話を聞いてくれないな・・・」と感じた時は、セカンドオピニオンを求めましょう。
「レビー小体」については「認知症やパーキンソン病の原因|レビー小体の正体に迫る!」で詳しく解説してます。
CT・MRI|脳の形や病変を見て他の病気と区別する
CTやMRIは、脳の形状を把握するための画像検査として「アルツハイマー型認知症」などの診断でよく用いられます。
しかし、純粋型のレビー小体型認知症やパーキンソン病の多くは、脳CT(コンピューター断層撮影)、脳MRI(核磁気共鳴画像法)では、特に目立った異常は見られないことがほとんどです。異常があれば、別の病気の可能性が高いと判断できます。
下の表はCTやMRIで検査した際に映し出される脳の病変を病気別にまとめたものです。
レビー小体型認知症 |
明らかな病変が見られないことが多い |
---|---|
アルツハイマー型認知症 |
脳の萎縮が、海馬周辺を中心に見られる |
脳血管性認知症 |
主な原因は多発性脳梗塞。小さな梗塞が複数カ所に見られる |
脳梗塞、脳出血、脳腫瘍などの病変 |
CT・MRIで病巣が映し出される |
CTやMRIだけで判断しない
脳CTや脳MRIは、検査装置が広く普及している為、認知症の疑いがある場合は、よく利用される認知症の画像検査法です。しかし、CTやMRIだけでは、レビー小体型認知症やパーキンソン病は発見できず、正しい診断はできませんので、診断材料の1つとして認識しましょう。
実際には、レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症を合併している(混合型認知症)にもかかわらず、次のように見逃されるケースが後を絶ちません。
- 脳に委縮が見られる場合、アルツハイマー型認知症とだけ診断される
- 脳に複数の梗塞巣が見られる場合、脳血管性認知症とだけ診断される
したがって、次にご紹介する「SPECT」や「MIBG心筋シンチグラフィ―」といった画像検査法も併用し、レビー小体型認知症の診断材料にすると良いでしょう。
SPECT|脳の働きを見てレビー小体型認知症の判断材料を入手
SPECT(単一光子放射型コンピューター断層撮影)は、ガンマ線という微量の放射線を出す薬を注射し、その薬剤を映し出すことで、体内の様子を断層状に画像化する核医学検査の1つです。
レビー小体型認知症では、後頭葉の血流が低下している場合が多く、なんと50%以上の人に見られる所見です。この後頭葉の血流低下が、レビー小体型の特徴症状である「幻視」を引き起こしていると考えられています。
脳の働きを知る検査として2つのSPECT検査法があります。
- 黒質線条体節前ドーパミン機能画像
- 脳血流シンチグラフィ
黒質線条体節前ドーパミン機能画像
ドーパミントランスポータ(DAT)という、ドーパミンを取り込む働きを持つたんぱく質の働き具合を見る検査です。レビー小体型認知症やパーキンソン病などの神経変性によってパーキンソン症状が起こる病気では、ドーパミンの取り込みが悪くなっています。
脳血流シンチグラフィ
出典:日本メジフィジックス(認知症診療に脳血流SPECTを活かす!)
脳血流シンチグラフィ検査により、脳の血流が低下している部位を探し出すことが出来ます。脳血流の低下は、脳神経細胞の機能が低下していることを表ししています。レビー小体型認知症では、視覚を司る後頭葉の機能低下が見られます。
出典:日本メジフィジックス(認知症診療に脳血流SPECTを活かす!)
CTやMRI検査で明らかな脳の形の変化が見られなくても、脳血流シンチグラフィ検査により血流の低下が起きている部位を見ることで、「レビー小体型認知症」と他の認知症(アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症)とを区別する際の参考になります。
レビー小体型認知症 |
後頭葉の血流低下が見られるケースが多い |
---|---|
アルツハイマー型認知症や若年性アルツハイマー病 |
頭頂葉や側頭葉での血流低下が見られる場合が多い |
MIBG心筋シンチグラフィ|神経の働きを検査
MIBG心筋シンチグラフィは、「レビー小体型認知症」と他の認知症(アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症)といった他の認知症と区別する際に有効な画像検査です。レビー小体型認知症は脳の萎縮が少なく、アルツハイマ―型認知症との識別が難しい病気ですが、決定的な違いがあります。その違いとは、交感神経に障害が発生しているかどうかです。
この交感神経の障害を画像化する検査法がMIBG心筋シンチグラフィです。
MIBG心筋シンチグラフィは、先のSPECTと同じく核医学検査の1つです。しかし、画像化する部位は「脳」ではなく、「心臓の筋肉=心筋」です。心筋を司る交感神経がどれだけ機能しているか確かめレビー小体型認知症の診断材料にします。
MIBGの集積の低下を見る
出典:国立長寿医療研究センター
MIBG心筋シンチグラフィでは、MIBG(メタヨードベンジルぐアニジン)を注射し、心筋の交感神経が機能しているか検査します。
MIBGとは、ノルアドレナリンという神経伝達物質に似た構造物質です。MIBGにヨード123という放射性物質を加え、画像化できるようにします。そして、MIBGを注射し、心筋を司る交感神経の末端に、どれだけMIBGが集まるのか検査します。
交感神経が正常に、機能していればMIBGの集積が見られます。しかし、レビー小体型認知症の場合は、MIBGの集積がほとんど見られず心筋が映し出されません。
高確率でレビー小体病以外の病気と区別できる
多くのレビー小体型認知症患者に、交換神経の機能低下が見られます。なぜなら、レビー小体が発生していると自律神経、特に交感神経が傷ついている為です。
MIBG心筋シンチグラフィは、「レビー小体型認知症」と他の認知症(アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症)と区別する際の感度(異常を示す割合)・特異度(異常を示さない割合)は90%以上と言われるほど有用性が高い検査法です。
まとめ
今回ご紹介した画像検査法は、レビー小体型認知症かどうか判断する上で数多くの判断材料を提供してくれます。また、日々レビー小体型認知症に関する新しい検査法の研究が進めたれています。そして、いつの日か画像検査だけでレビー小体型認知症かどうか判断できる時が来るかもしれません。
しかし、現段階で画像検査だけでレビー小体型認知症を診断すると、誤診や見逃しを招く危険性があります。したがって、実際に現れているレビー小体型認知症の特徴的な症状と画像検査の結果を併せて総合的に判断することが大切です。