車椅子~豊富な種類からピッタリな車いすを選ぶコツ
車椅子は、足腰が弱い方や歩行障害がある方にとって欠かせない介護用品です。手すりや杖、歩行器を使っての自力歩行が困難になってきた方が利用します。
ただ、車椅子は歩けない人の移動を目的に使用されるだけにとどまらず、ベッドからの離床にも使用され車椅子は椅子の代わりになり生活の大半を過ごすスペースになっていることも多いです。また、車椅子バスケットや車椅子テニスなどのスポーツ競技でも広く活用されています。
ここではそんな便利な介護用品である「車椅子」について「種類や正しい選び方、サイズ調整の仕方」に至るまで分かりやすく解説していきますので、是非ご覧下さい。
1.車椅子の各パーツ(部位)の名称
車椅子を構成する各部位の名称について知っておくと、車椅子の調整や壊れたバーツを交換してもらう時に大変便利です。特に、「アームレスト」や「レッグレスト」、「バックレスト」は移乗介助や運搬の際に深く関係しますので、どういった部位なのかしっかり確認しましょう。
アームレスト(肘当て) |
アームレストとは、肘当てのことです。車椅子からベッドやトイレの便座への移乗などの際、車椅子のアームレスト(肘掛け)がなければ、お尻を横にずらすだけで乗り移りが出来ます。立つのが困難な人や立位が不安定な人は、このアームレストが取りはずせたり、跳ね上げたりできるタイプの車椅子を選びましょう。ワンタッチで可動・着脱できると、ベッドやトイレから車椅子への移乗がスムーズです。 また、アームレストは、立ち上がりや移乗の時に、手すりとなり身体を支える役割にもなります。 |
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フットレスト(足置き台) | フットレストとは、足置き台のことです。フットレストを取り外したり移動したりできる車椅子が便利です。フットレストの奥行分ベッドなどに近づくことが可能になりスムーズに乗り移りしやすくなり、足が引っ掛かりやすい人でもスムーズに介助でき便利です。 |
バックレスト(背もたれ) | バックレストとは、背もたれのことです。外出などで車に詰め込む時にバックレストが折りたたみコンパクトに収納出来る「折りたたみ式車椅子」もあります。ただし、折りたたみ式車椅子を、開いたり折りたたんだりする時は指を詰めないように注意して下さい。シートの端を持って折りたたむと指詰めの原因になるので、シートの真ん中を持って折りたたむと安全です。 |
レッグレスト | レッグレストは、足が後ろに落ち地面に巻き込まれることを防ぐ為の物です。しかし、レッグレストが付いていると足を後ろに引けないので立ちあがりや移動が困難になる場合があります。なので、片麻痺でも自力で車椅子をこげる方は、ヒールループという踵を固定するものを代わりに使うとよいでしょう。 |
クッション |
介護保険でレンタルできる車椅子の多くは、標準型(自走式と介助用車椅子の両方の機能があるタイプ)の大量生産品で、個々の利用者に合わせて作られたものではありません。ですので、座面と背もたれが布張りになっています。これは折りたたみがしやすいというメリットがある反面、たるみが発生し座位が不安定になるというデメリットがあります。また、障害によっては姿勢が崩れやすい人もいるでしょう。 そういった場合は、車椅子用のクッションを敷いて座位を安定させ姿勢崩れを防止する必要があります。また、クッションには体圧を分散させる除圧タイプもあり、褥瘡予防にも役立ちます。 |
2.車椅子の種類
車椅子は「自走式」と「介助用」の2タイプ
車椅子は「カワムラサイクル」や「ヤマハ」、「MIKI」など多くのメーカーから様々なタイプが販売されていていますが、これらは大きく「自走式」と「介助用」の2タイプに分けることができます(amazon通販で高評価の車椅子のリンクも合わせて掲載しております)。
操縦者 | 特徴 | |
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自走式車椅子 | 利用者自身の手で動かすタイプ | 後輪が大きく、タイヤの外側に付いている「ハンドリム」を持って操作します。自走式車椅子の中でも、介助者が押す為のグリップや手元ブレーキも付いているタイプを標準型と呼びます。片麻痺でも足漕ぎが出来る低床タイプの車椅子もあります。 |
介助用車椅子 | 介護者が操作するタイプ | 後輪は自走式よりも小さく軽量です。ハンドリムが付いていないので、自分でこぐことは出来ません。その代わりに、介護者が座席の後部にある「ハンドグリップ」を握って車椅子を押し操作します。電動自転車のように介護者が車椅子を押す時に動力が追加される「アシスト機能」が付いているタイプもあり、坂道でも楽に押せます。 |
また、介助用車椅子の中には、座位が不安定や長時間座っていられない人でも、楽な姿勢で乗ることができる「リクライニング機能」や「ティルト機能」の付いた車椅子があります。
リクライニング式車椅子
リクライニング式車椅子は、バックレスト(背もたれ)が長く、自由な角度で傾斜がつけられます。全く座位が取れない人や体調が急変する恐れがある人など座位が不安定で持久力が無い人向けです。寝たきりの人は、リクライニング式の車椅子を使いましょう。ベッドから離れる機会が増えて、生活空間を大きく広げることが出来ます。
ティルト機能付き車椅子
ティルト機能付き車椅子は、シートとバックレスト(背もたれ)の角度を変えずに背を倒すことが出来ます。背中が曲がった人やシートが水平だと座位が保持できない人向けです。また、ティルト機能を使うことで、体圧が掛かる部分をこまめに変えられ褥瘡(床ずれ)の予防にもなります。
電動車椅子
なお、電動モーターで動く「電動車椅子」は、自走式と介助用いずれのタイプにもあります。電動車椅子の操作は、手元に付けられた“ジョイスティック”というコントローラーを使用して車椅子を操作します。屋外を走っても運転免許は不要です。
3.車椅子の選び方とサイズ調整のコツ
車椅子は移動の道具ですが、食事やTVを見る時、外出時など朝起きてから夜寝るまで、一日の大半を車椅子で過ごす人も少なくないでしょう。それだけ、車椅子は歩行が困難な人にとっては介護用品というよりも、身体や生活の一部であり欠かすことができないアイテムなのです。
しかし、もし障害の状態や体形などに合わない車椅子を長時間使い続けるとどうなってしまうでしょうか?当然、移動や介助に支障を来すだけでなく、快適性が損なわれ疲れや褥瘡の原因にもなります。これでは折角の車椅子の機能も半減してしまいます。
車椅子選び1つで、今後の生活の質を大きく左右するといっても過言ではありません。
車椅子選びに失敗しない為にも、ここで紹介する「車椅子選びのポイントやコツ」をしっかりと確認しましょう。
身体機能や状態、使用目的に合わせて選定せよ
利用者の身体にフィットした車椅子を選ぶことは、購入やレンタルに限らず「介護の基本」です。
車椅子選定にあたっては、「常によい姿勢を保ち、楽に座っていられるか」「楽に移動できるか」「ベッドや便器への移乗が簡単か」この3点が車椅子選びの基本的な条件です。
車椅子選びの基本条件
- 常により姿勢を保ち、楽に座っていられる
- 楽に移動できる
- ベッドや便器への移動が簡単
この「車椅子選びの基本条件」をもとに「いつ・どこで・どのように」使うのか、利用者の身体機能や状態、使用目的、使用場所を考慮して選ぶことが望ましいです。
具体的には「自力で操作できるか介助が必要かどうか」、「使う人の障害や姿勢、体力」、「長い間座っていられるかどうか」、「リクライニング式が良いか」、「ベッドやトイレへの乗り移りがスムーズに出来るか」、「電動車椅子の方が良いか」といった項目をチェックし、本人に合う車椅子の条件を整理しましょう。
また、「使用場所の廊下の広さ」や「介護者の体力」、「座面、背もたれ等車椅子の重量、握りの高さ、持ちやすさ、折りたたみ式」、「値段」。「車に積めるか」といったことも検討する必要があるでしょう。
リハビリや介護福祉用具の専門家に相談せよ
こうした条件を書き出して理学療法士・作業療法士などのリハビリの専門家にアドバイスを求めることが、車椅子選びに失敗しないコツです。
作業療法士は車椅子で自由に動けるか、ブレーキがかけられるかなどきちんと使えるかどうかをチェックし、理学療法士は座った姿勢が安定しているか、手足が動かせるかという視点でアドバイスします。
また、車椅子をレンタルしている事業者にいる「福祉用具専門相談員」に相談するのもいいでしょう。
しかし、こうした専門家の中にも「車椅子については良くしらない」人も存在します。また、背もたれや座面の角度や高さ、幅を変えられるなど車椅子の性能はドンドン進化しており最新の車椅子までは知らない人もいるでしょう。
ですので、車椅子選びについては複数のスタッフの意見を参考にしましょう。「車椅子に詳しい人は誰?」と聞いてみるのもよいでしょう。
試乗が大切!車椅子はレンタルも出来る
最終車椅子を決定する際は、実際に本人に試乗してもらうことが大原則です。
本人に合うサイズの車椅子が絞り込めたら、10~20分前後実際に本人に試乗してもらいましょう。この時間内に身体がずれてくるようであれば、どこかに問題がある証拠なので、再度見直す必要があります。こうした調整は、専門用語で「シーティング」(座位の保持)といって、福祉用具のプロによる高度な技術が必要です。
車椅子は「福祉用具貸与」という介護保険制度を利用してレンタルすることも可能です。レンタル事業者によっては、数台のサンプルを1週間ほど貸出し試乗させてくれるところもあるので頼んでみるとよいでしょう。
レンタル品は使って見て合わなければ交換できますが、購入する場合は必ず車椅子選びの専門家にシーティングを依頼して下さい。
車椅子のサイズ・寸法調整法
小柄な人なら、大きめの車椅子でも良いと思うかもしれませんが、長時間座っていると、肘掛けの高さが高くて腕が疲れたり、身体が不安定になったりして、疲れやすくなります。ここでは車椅子のサイズや寸法調整の基本について解説していきますので、しっかり確認しておきましょう。
座面(横幅)のサイズ・寸法合わせ
車椅子をフィットさせるポイントは、まず座面(シート)の横幅です。大きすぎると姿勢が不安定になり、小さすぎると窮屈で動きにくくなります。膝裏を圧迫しない程度に奥行があり、座位がしっかり支えてくれることが大切です。座面の横幅は、お尻の幅より左右に2~3㎝余裕があるサイズを選びましょう。
座面(高さと奥行)のサイズ・寸法合わせ
座面の高さと奥行も重要です。
座面の高さは、車椅子に座った時に「膝が上がり過ぎず膝裏を圧迫しない高さ」、「足首が垂れ下がっておらず足の裏がフットレスト(足台)にしっかりと着いている状態」で、膝の角度がちょうど「90度」になっているのがベストです。また、アームレストは自然に置いたヒジが90度に曲げられる程度の高さがいいでしょう。
座面の奥行は、背もたれにお尻を付けて座り膝の裏よりも5cm程短い方が安定します。奥行がありすぎると腰が前に出て座位が不安定になります。
バックレストの角度と高さのサイズ寸法合わせ
背中を支える「バックレスト(背もたれ)」は、座った時にバランスよく背中を支えられるようサイズ調整しましょう。バックレストは、肩甲骨の下つまり腋の下と同じ高さがいいでしょう。また、背もたれに寄りかかっている時に腰の角度が90度であることが必要です。