転倒を予防せよ!すくみ足や小刻み歩行の対策法
パーキンソン病の方には、歩行障害がみられることがあります。
例えば、腕を振らずすり足でチョコチョコと小刻みに歩く「小刻み歩行」、ピタリと足が踏み出せなくなる「すくみ足」、前のめりで突進するように歩く「突進歩行」といった歩行障害が現れます。
こういった歩行障害が現れると、非常に転びやすくなります。ただ転ぶだけで済めばよいのですが、ケガを負ってしまうことで、さらに病状を悪化させてしまうことも少なくありません。
したがって、安心安全な生活を送る為にも、ここでご紹介する「パーキンソン病の方の歩き方のコツ」や「すくみ足や小刻み歩行が現れた時の対策法」をマスターし転倒予防に努めましょう。
たった一度の転倒が寝たきりに繋がる
「少し転ぶくらい平気、大丈夫」と転倒について甘く考えていませんか。そのような油断が、あなたの生活を一変させてしまうかもしれません。なぜなら、たった一度の転倒によるケガが原因で、あなたの予後が一気に悪くする可能性があるからです。
パーキンソン病は、高齢者ほど発症しやすい病気です。また、パーキンソン病では、身体が思い通りに動かなくなる運動症状が現れます。この2つが問題なのです。高齢になるほどケガ(骨折等)は治りにくくなり、長期間の療養が必要となります。当然、療養中はベッド上での生活が中心となるわけですから、活動性が低下し、それとともに筋力も低下していきます。こうなると元々のパーキンソン病の運動症状に加え、筋力低下も進んで行くわけですから、そのまま寝たきりになってしまうというケースもあります。
どうですか、転倒の恐ろしさを十二分に理解していただけたと思います。したがって、日頃から転倒には十分注意し、なるべく転ばないよう予防・対策することが必要なのです。
パーキンソン病の方が転倒しやすい原因
誰でも年を取ると、ちょっとした段差につまずいたり、バランスが取れずに姿勢が崩れたりして転ぶことが多くなります。しかし、パーキンソン病の患者さんは、健康な方よりも転倒する割合は格段に高くなっています。
パーキンソン病の方が転びやすい原因としては、次のようなことが考えられます。
運動症状 | 筋強剛・筋固縮や姿勢反射障害といった運動症状 |
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歩行障害 | 運動症状に伴う、すくみ足や小刻み歩行、突進歩行といった歩行障害 |
薬の副作用 | 治療薬の副作用による影響 |
起立性低血圧 | 急に立ち上がった時の立ちくらみ。パーキンソン病で現れる自律神経症状の1つ |
さらに、パーキンソン病が進行すると、レビー小体型認知症という認知症を合併することがあります。レビー小体型認知症を合併すると、視覚障害や認知機能障害が現れ、さらに転倒しやすくなるのです。
パーキンソン病の歩行障害|すくみ足・突進歩行・小刻み歩行
それでは、ここからはパーキンソン病の「歩行障害」として現れる代表的な症状について詳しく説明していきます。パーキンソン病では、運動症状の悪化に伴い「すくみ足」、「突進歩行」、「小刻み歩行」といった歩行障害が現れます。
小刻み歩行 | 歩幅が狭くなり、チョコチョコと小刻みに歩く歩行障害です。運動症状の緩慢(寡動・無動)の影響で現れます。 |
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すくみ足 | 歩き始めや歩いている時に、足の裏がまるで地面にくっついてしまったかのように、ピタッと歩けなくなる歩行障害です。運動症状の緩慢(寡動・無動)の影響で現れます。特に「最初の一歩を踏み出す時」、「狭い場所にいる時」、「方向転換の時」に足が踏み出しにくくなります。他にも、横断歩道を渡る時や電車の乗り降り時などの「時間的制約がある時」、「ウェアリング・オフの時」もすくみ足が現れやすいです。 |
突進歩行 | 体が前のめりになり突進しているような歩き方になり、歩き出すと止まれなくなる歩行障害です。バランスが取りにくくなる姿勢反射障害という運動症状の影響で現れます。 |
これらの歩行障害が現れると、躓いたり、姿勢が崩れたりしやすくなるので注意が必要です。
転倒を防止するパーキンソン病の歩き方のコツ
上で説明したようにパーキンソン病の方は、病気の特性から非常に転びやすくなっています。頭で「動かなくては」と思っていても、心とは裏腹に身体がついてこないことがあります。特に、立った状態で振り向くなど、複数の動作を同時に行うことが苦手です。
その為、ここでご紹介する「パーキンソン病の歩き方のコツ10選」を実施し転倒予防に努めましょう。また、「実際に、すくみ足や突進歩行」が現れた時の対処法」をあわせて覚えておけば、いざという時も慌てずに対応できます。
パーキンソン病の歩き方のコツ10選
まずは、パーキンソン病の方が安心安全に歩く為のポイントを学びましょう。歩行時は次の10個のポイントに気を付け歩きましょう。
- 慌てていると足がもつれやすくなります。まずは落ち着くことが大切です。
- 自分の中で、「1・2・1・2」とリズムを取りながらテンポよく歩く。
- 前かがみの姿勢を治し、できるだけアゴを引き、胸を張り背筋を伸ばして歩く。
- パーキンソン病の方は、無意識の内に動作が小さくなり、小刻み歩行になっていることがあります。歩行時は、腕の振り大きく、膝を高く垂直に持ち上げるような気持ちで、大股で前に前に足を運んでいく(自分の意識の3割増しを心掛ける)。
- カカトから地面につくように足を下ろし、次につま先を地面につけるように歩く。
- 方向転換の際に上手く動けないと感じたら、手すりなどのしっかりとした物につかまりながら身体の向きを変える。また、足を肩幅と同じくらいに開き、一方の足を軸に半円を描くようにゆっくりと方向転換するのも良い方法です。
- 転倒は、突然の来客や電話に対応しようとして、慌てている時に多いです。まずは、慌てないことが大切です。
- 底がつるつるのスリッパや靴下は転倒のリスクを高めます。滑り止めが付いたものを履く。
- 両手に荷物を抱えていると、転倒時に手か付けず転倒時のダメージが多くなります。なるべく片手はフリーにし、重い荷物は家族やヘルパーさんに持ってもらう。
- 転倒時に備えて、大切な頭を守れるように、衝撃吸収素材などでできた保護帽をかぶるのもオススメです。外見は普通の帽子のようにオシャレな保護帽もあります。
普段から「パーキンソン病の歩き方のコツ10選」を頭に入れておき”焦らず、ゆっくり、集中”し歩きましょう。
歩行障害が現れた時の対策法
パーキンソン病が進行すると、すくみ足や突進歩行といった歩行障害が現れることがあります。しかし、すくみ足や突進歩行などの歩行障害が現れても、決して慌ててはいけません。慌ててしまうことで、余計に転倒を招く確率が高まってしまいます。もしも歩行障害が現れた時は、まず冷静になり、ここでご紹介する方法を思い出し実践してみて下さい。
すくみ足の対処法
すくみ足は、歩き始めや狭いところ、方向転換の時に現れやすい症状です。すくみ足が現れた時は、次のような対策法を試してみて下さい。
- 【その場で足踏み】 その場で足踏みを繰り返してから前に進む。
- 【リズムを取る】 「1・2・1・2」という掛け声でリズムを取り、聴覚に合図を与えることで、すくみ足が改善することがあります。
- 【一歩下がる】 最初の一歩目を後ろに引いてから足を前に出すと、上手に一歩を踏み出しやすくなります。
- 【横か斜めに足を出す】 横に足を出す「カニ歩き」や斜めに足を出す「スケート歩き」も効果的です。
- 【目印を作って足を出す】 床の模様や石ころ、タイル、など目印になる物を見つけてそれをまたぐようにすると足が出やすくなります。
- 【杖を使う】 横向きのバーが先についた杖や、レーザー光線が出る杖を使い、バーやレーザー光線をまたぐように足を出しましょう。
- 【歩行器やシルバーカーを使う】 何かを押しながらだと、スタスタ歩けることもあります。困った時は歩行器やシルバーカーを使ってみるのも、すくみ足に効果的です。
足腰を鍛えるリハビリやバリアフリー化も転倒予防には大切
リハビリで足腰を鍛え転倒を予防
パーキンソン病の患者さんは、すくみ足や突進による転倒が怖くて外に出ずに家の中に引きこもりがちになる方が多くいらっしゃいますが、それではいけません。歩行障害に加えて、運動不足による筋力低下が合わさることで、ますますバランスが取りにくくなり、転びやすくなります。
したがって、パーキンソン病の方こそ、家に引きこもらずに日頃から運動やリハビリに励みましょう。
自宅での転倒対策|室内をバリアフリー化しよう
以外にも、パーキンソン病患者の転倒事故は室内で多く、そのほとんどが自宅なのです。したがって、室内環境を見直し、バリアフリー化することも転倒予防の為には必要なことです。
次のようなことに気を付け室内をバリアフリー化して、転倒対策をしましょう。
- カーペットのヘリなどちょっとした段差を失くしつまずきを防止する。
- すくみ足対策に、すくみ足が出やすいところにテープで目印をつける。
- 方向転換しやすくしたり、とっさに掴めるように家具の配置を工夫する。
- トイレや廊下に手すりを取り付け、歩行や立ち上がりをサポートしてもらう。
介護保険を利用して、住宅改修の費用の一部を援助してもらえる制度もあるので、うまく利用しましょう。