嚥下をスムーズに!食事の前に必ずやっておきたいこと(リハビリ体操編)
高齢者やマヒなどで嚥下障害のある方にとって食事は、「戦い」であり、私たちの想像以上に大変で覚悟がいることです。
何度か、食べ物を「のどに詰まらせたり、むせてしまったり」を繰り返すと、段々と「食べる・飲み込む」ということが怖くなり、食事というものが恐怖の対象でしかなくなります。 そうなるとやがて何も食べたり・飲んだりしなくなって最悪の場合、胃ろうを付けなければならないことも少なくありません。
在宅介護をする上で、高齢者や嚥下障害の方に、なるべく口で安全に食事を楽しんでもらう為にも介護者さんは、以下の嚥下機能強化のための「嚥下リハビリ体操」を行い、本人が万全の状態で食事という名の「戦い」にのぞめる体制を作ってあげてください。
私の母も、胃ろうを付けておりましたが、この誤嚥予防のための「嚥下リハビリ体操」を実践することで、胃ろうを外すことが出来ました。
嚥下リハビリ体操とは
食べ物や水を誤って気道に飲み込んでしまう誤嚥は、一口目に起こることが多いと言われています。それは食べるという意識がまだ目覚めていないことや、食べる時に使われる筋肉がまだこわばって硬いままでいることが原因です。
誤嚥予防のためには、食べることに使われる筋肉をほぐし柔らかくすることが肝心であり、食事の前に筋肉をほぐし柔らかくするためには嚥下リハビリ体操が非常に有効的です。寝たきりの人、意識障害やマヒの人などスムーズな嚥下が出来ない人は、いきなり食事を始めるのではなく、食事の前に口の周囲や首の筋肉の緊張を和らげる嚥下リハビリ体操を行いましょう。
緊張がほぐれればリラックスして食べることができ、嚥下がスムーズになります。
また、「さあ、食事の時間だ」という心構えを持ってもらうことで、嚥下予防だけでなく食欲の増進にも役立ちます。
嚥下リハビリ体操の基本
嚥下リハビリ体操は肩から首、口の周囲の筋肉をリラックスさせて食事を食べやすくする体操です。 ラジオ体操と同様にリラックスした状態で、深く深呼吸することから始めます。
それから、首→肩→舌→口の順でゆっくりと動かしリラックスさせます。 その後発声のリハビリ体操を行い、嚥下とせきのリハビリ体操をして、最後に再度深呼吸をして終了いたします。
食前リハビリ体操は、すべて行っても5分を目安にします。疲れるほどやって食欲を減退させたら逆に意味がないので、本人の様子をしっかりと観察しながら行うようにしましょう。
嚥下障害の方に有効な8つの嚥下リハビリ体操
1.深呼吸
リハビリ体操を始める前に、リラックスした状態で姿勢を整えて座り、お腹に手を当てて深呼吸をします。
2.首のリハビリ体操
- 1.下から上へ、上から下へと首を曲げます。(往復3回)
- 2.首を肩につけるつもりで、ゆっくりと首を左右に倒します。(左右6回ずつ)
- 3.後ろを振り向くようにゆっくりと首を回します。(左右6回ずつ)
- 4.大きくゆっくりと首を時計回り・反時計回りに回します。(3回ずつ)
3.肩のリハビリ体操
- 1.両肩をすぼめるようにして上げ、スッと力を抜き元の高さへと肩を上下させるリハビリ体操です。
- 2.両手を上にあげて組み、腰から肩にかけて大きく背中を反るように傾けます。
- 3.両手を上にあげて組み、腰から肩にかけて左右に傾けます。
4.舌のリハビリ体操
舌を動かすことは、食べることや発音をするために重要な筋肉をほぐし鍛えることで、奥歯に食べ物を送る咀嚼時、喉の奥へと食べ物をおくる嚥下時に舌の動きをスムーズに動かすことができます。
- 1.舌を口から出し、上唇下唇へと上下に(5回ずつ)動かします。
- 2.舌を出し、左右の口角につけることを意識しながら、左右に(5回ずつ)動かしてください。
5.ほほのリハビリ体操
口を閉じたまま、頬に空気をためて膨らまし、そして頬をへこますことを繰り返します。頬の筋肉をほぐし鍛えることで、しっかりと噛む力をつけたり、口からの食べこぼし防止たり、鼻へ食べ物が流れ込だりすることを防ぐリハビリテーションです。
6.発声のリハビリ体操
発声するときの舌の位置と嚥下するときの舌の位置が似ていることから、発声のリハビリテーションも嚥下リハビリ体操になります。食事の前に行えば、より効果的ですが、普段でも嚥下に問題のある人にはぜひ行ってもらいたいリハビリテーションです。
それぞれ発生する言葉で、食事をする時の唇や舌の動きに似た動き目的別にトレーニングします。
- 1.「パパパパ」・・・くちびるをしっかりと閉じるリハビリ体操(食べるときの=唇を閉め摂食します)
- 2.「タタタタ」・・・舌先を上あごにしっかりとつけるリハビリ体操「食べるとき=舌で食べ物をつぶしたり丸めたりする動きに似た動きをします。」
- 3.「カカカカ」・・・舌の奥が後方に引かれるリハビリ体操(食べるとき=舌の奥が後方に引かれることで、鼻腔への食べ物の逆流を防ぎます。)
7.嚥下・せきのリハビリ体操
- 1.嚥下で喉を動かす時の動きをスムーズにするため「ゴックン」と唾を飲むリハビリ。
- 2.咳払いをする。誤嚥をしそうになった時に咳払いをすることで、肺まで食べ物が流れることを防止するリハビリです。
8.深呼吸
最後に食事にリラックスした状態で臨めるように、始めと同様、お腹に手を当てて深呼吸をします。
まとめ
食べることを一度怖くなってしまい恐怖心を抱いてしまうと、恐怖心がなくなるまでにかなりの時間が掛かってしまいます。
そうならない為にも、是非、食前の嚥下リハビリ体操を一緒に行ってあげて下さい。ふたりでやると本人も恥ずかしくなくなります。
嚥下リハビリ体操は嚥下をスムーズに行うために大変効果的なリハビリテーションです。毎日根気強く繰り返すことで、目に見えて嚥下が改善していく方が多くおられます。
また、嚥下介助は、介助者の方が急かしてしまったりすると、気持ちが焦ってしまって誤嚥を招きかねませんので、急かさずに気長に付き合ってあげてください。食事を楽しんでもらうことは、アットホームな在宅介護を目指していく上できっとプラスに働きます。