脱水症・熱中症の症状や対策法を徹底解説|特に高齢者は注意が必要

高齢者を介護する上で、特に注意したいのが「熱中症」や「脱水症」です。

おととしの今頃に、著者の母も脱水症になり入院しました。診断室で、医師から「お母さんは、脱水症状で持病のてんかん発作を誘発させてしまった」と言われました。 普段から、熱中症や脱水症状には注意はしていたのですが、この様な事態になってしまいました。

当時の反省を踏まえ、熱中症や脱水症について様々な文献を読み漁り、その中でも、実際に効果が高かった脱水症・熱中症対策法をまとめてみました。著者自身もこの記事に掲載している「脱水症・熱中症対策」を実践してからというもの、一度も母が脱水症・熱中症で倒れてしまうことは無くなりました。

1.熱中症・脱水症対策は、まずその原因と症状を知ることから始めよう

1.熱中症と脱水症の症状

皆さんは脱水症と熱中症の違いについてはご存知でしょうか?熱中症と脱水症の症状は非常に似た症状が現れます。 熱中症の具体的な症状としては、以下のものが挙げられます。

熱失神
脳の酸欠状態によるめまい、立ちくらみ
熱疲労
倦怠感、嘔吐、頭痛
熱痙攣
けいれん
熱射病
意識障害、異常な発汗、逆に全く汗が出なくなる

一方、脱水症の症状も熱中症に非常に似た症状が見られます。これは一体どういうことなのでしょうか?実は、熱中症と脱水症は、お互いに密接に関係しているためなのです。それでは、早速その関係性に迫っていきたいと思います。

2.熱中症と脱水症状の関係性

熱中症とは次の症状の総称です。
①体内の水分不足で起こる障害
②体温の上昇で起こる障害

そして、熱中症は次のような流れで発症します。

  1. 体温上昇
  2. 発汗
  3. 体液不足(脱水症)
  4. 発汗ストップ
  5. 熱中症

少しわかりにくいですね。具体例でチェックしていきましょう。

  1. 例えば、夏場など気温が高い環境で運動や仕事を行うと、体温が上昇します
  2. 体温上昇にともない、体がだるくなるといった障害が出てきます。よって、体内では発汗をすることで上昇した体温を下げ障害を防止します
  3. しかし、長時間その状態が続くと体内の水分が不足します
  4. 水分をそれ以上、体外に出さないようにするため発汗を中止します
  5. すると、発汗で体温が下げられなくなり、体温が上昇することで熱中症になるのです

発汗による体温調節がストップしてしまうと、体内の臓器にダメージが及びます。もっとも影響を受けやすいのは脳です。脳へのダメージから痙攣や意識障害などが起こることもあります。

このことからも分かる通り、熱中症の原因の1つとして脱水症が影響していたのです。したがって、脱水症を予防することが最大の熱中症対策となります。

3.脱水症の重症度

脱水症は症状の深刻さに応じて、軽度、中度、重度の三段階に分けられます。通常は体重の減少率を目安に判断します。

脱水症状の重症度 体重減少 主な脱水症状の症状
軽度の脱水症 1~2% 見た目にはわからない脱水症で、のどが渇いたり尿量が少なくなったりします(いわゆる“かくれ脱水”のことです)
中度の脱水症 3~9% けんたい感、頭痛、嘔吐、めまいなどが起こり、喀痰(痰)を出すのが困難になったり、血圧や臓器の血流低下といった症状が出てきたりします。
重度の脱水症 10%~ けいれん、運動障害、意識障害などの症状が見られ、命に係わる危険な状態です。

2.高齢者や要介護度の高い方は、熱中症・脱水症になりやすい?

1.若者と高齢者の体の水分貯留量の違い

「人の体の60%以上は水でできています」これは、某飲料メーカーのCM内だけのことではなく、実際に人間身体は体重の60%以上が水分でできています。そのうち、15%ほど減少する(体重の9%)と「脱水状態」となり、めまいや嘔吐・吐き気・発作・脳梗塞・心筋梗塞など様々な障害を引き起こしてしまいます。

体内の水分は主に筋肉に蓄えられるのですが、加齢に応じて筋肉は減っていきます。 したがって、特に高齢者は老化により筋肉量が減少しておりますので、水分貯留量が体重の50%しかなく、若い人と比較して10%も少ないこともあり脱水症状になりやすくなっています。

3.高齢者や重度のマヒを持つ方が水分を上手に摂取できない理由

健康な方でも、食欲不振やこまめな水分補給を怠った場合や、糖尿病による尿量の増加、発汗、嘔吐、発熱などで水分が大量に体の外に出ていく場合は脱水症や熱中症になっております。重度の麻痺の方や高齢者は、他にも次のような理由で脱水症や熱中症になりやすくなっています。

  • 嚥下機能の低下・障害により渇きを感じる神経が鈍くなりのどの渇きが自覚しにくくなる
  • 腎機能が衰え、尿の濃縮度も低下し、薄い尿となり、水を体内に蓄える力が衰え、水分が失われやすい。
  • 言語機能障害などで、上手く自分がのどが渇いていることを介護者さんに伝えられない・意思表示ができない
  • 手の麻痺などの身体障害で自分自身で水分を補給できない
  • 本人が介護者にトイレ介助やおむつの交換などを頼むのを遠慮したり気づかったりして、自ら水分の摂取量を制限してしまう。また、介護者さんがトイレ介助やおむつ交換がめんどくさいので水分を摂取させない

いわば、高齢者は日ごろから”脱水気味”です。下痢や嘔吐、発熱や発汗などが加われば、すぐに脱水症や熱中症になるリスクが高まることに気を付けていただきたいと思います。

4.脱水症・熱中症の兆候を見抜く5つのポイント

しかし、いったい何に注意を払ったら熱中症・脱水症を予防することができるのでしょうか。 そこで、これからご紹介する「脱水症・熱中症の兆候を見抜く5つのポイント」をしっかりと押さえてください。

  • 食欲がない
    食事の量が減り、好物にも箸が進まない
  • ぼんやりしていて、意識レベルが低い
    いつもより元気がなく、言葉もはっきりしない
  • 皮膚がカサカサで乾燥している
    皮ふをつまんだら、しわが戻らない。お肌に張りがない
  • 口や舌が渇いている
    口の周りがカサカサしたり、舌が渇いている
  • 尿量が少ない
    尿の回数・量が少ない。おむつが濡れていない

高齢者や重度のマヒの方を介護する際は、上記の脱水症状の兆候を見抜く5つのポイントを参考にするとともに、普段から十分に水分を取っているかどうかをよく観察することが大切です。

5.水分補給をこまめに摂取することが脱水症・熱中症の一番の予防対策

一日に必要な水分量

一日に必要な水分量は約2.5リットルです。 そのうち約1.3~1.5リットルは食事や体内から作られます。なので、あとの1.0~1.2リットルを飲み水などで補うことが大切です。

効果的な水分補給の方法

定期的な水分補給が一番の脱水症・熱中症の予防です。 水分補給では、コップ1杯程度(150~120ミリ・リットル)の水をバランスよく飲む習慣をつけることで脱水症や熱中症を予防しましょう。心臓病や腎臓病などによる飲水量の制限のある人は別ですが、制限のない人は次のように水分補給すると効果的です。

あらかじめ水分補給の時間を起床時、午後10時、入浴後、就寝時といった具合に、8回に分けてコップ1杯の水分をこまめに補給しましょう。

水分と言っても冷たい飲み物を一気に500cc以上飲んだり、お酒やコーヒーなどの利尿作用があるものは極力避けてください。その代わりにコップ1杯分の常温の水やお茶であれば、トイレが近くなることも少なく脱水症・熱中症に効果的です。

食事は、朝昼晩、しっかりと適切な量をとるよう心掛けてください。果物やキュウリ、夏野菜など水分量の多い食材が豊富な料理で水分を補いましょう。

高齢者向けの栄養バランスのいい食事について『高齢者の栄養不足を予防・改善するバランスのいい食事を作る3つのポイント』で詳しく解説しております。

6.室内の熱中症対策

TWINBIRD 加湿器 アロマトレイ付 SK-4974W

水分は汗や尿だけでなく、皮膚からの蒸散や呼吸によっても失われています。その量は体重60キログラムの成人では一般に1日900ミリ・リットル程度です。
夏などの熱い時期は、我慢せずに冷房などをご活用ください。扇風機と併用することで、温度をあまり下げすぎることなく冷房効率が高まります。 「冬だからと言って、脱水症の心配がない」と思っていたら大間違いです。冬は空気が乾燥していますので、脱水は夏よりも気づきにくくなっています。

室内の乾燥対策には、加湿器を使ったり、洗濯物の中で干したり、観葉植物を置いたりするなどの工夫をし、湿度をコントロールすることが有効です。

経口補水液の作り方

経口補水液 オーエスワン(OS-1) 200ml×30本

熱中症・脱水症の対策グッズとして、所ジョージさんのCMでもおなじみの傾向飲料ドリンクos-1は特におススメです。経口補水液は、体液に近いため素早く吸収され、失われた水分やミネラルを補うことができます。

実はこの経口補水液は、ご家庭でもお作りいただけます。朝の情報番組スッキリでも取り上げられた経口補水液の作り方ですご参考下さい。

自宅で作れる経口補水液

準備するもの

  1. 水1リットル
  2. 塩3グラム
  3. 砂糖20グラム
  4. レモン汁

経口補水液の作り方

簡単!!材料を混ぜるだけです。飲みにくい場合は、レモン汁を垂らして下さい。手作り経口補水液の賞味期限は1日です。

注意点

経口補水液は、「美味しくない」ものですが、もし「美味しい」と感じたら脱水症になりかけなのでご注意ください。

まとめ

脱水症状になってしまうと、入院などで安静にしなくてはならず運動機会が減り筋肉量が減少してしまったり、障害がより一層悪くなったりなど、これまでの折角の治療やリハビリの効果が一気に台無しにしてしまうことも少なくありません。

また、それにともない介護者さんの負担も重くなり介護疲れを引き起こしてしまう原因にもなりますので、これからの季節は特に脱水症・熱中症にはくれぐれもご注意してくださませ。