ダイエットで変形性膝関節症を治療しよう
”肥満”は、変形性膝関節症(膝OA)の発症や進行させる原因となります。
その一方で、ダイエットで肥満を解消するだけでも、膝の痛みや身体機能の低下といった変形性膝関節症の症状の改善が期待できます。
しかし、ただ闇雲にダイエットに取り組むと、かえって変形性膝関節症を悪化させる危険性があるのも事実です。
そこで、この記事では、健康的に無理なくダイエットを成功させる為のコツをご紹介していきます。変形性膝関節症を患っている方の中で、「少し太っていてるかも・・」とお感じの方は、ぜひ参考にして下さい。
体重管理は膝OAに効果的な治療法
肥満解消で膝痛などの症状が改善
肥満は、変形性膝関節症の発症や悪化にかかわる”原因”いわゆる”リスク因子”です。なぜ肥満が変形性膝関節症のリスク因子になるかというと、理由は単純で”体重が重ければ重いほど、膝にかかる負担が増え、軟骨のすり減りを早めてしまう為”です。
逆に、肥満を解消するだけでも、膝痛といった変形性膝関節症の症状を改善させる効果が期待できるのです。
たとえ2kg減量するだけでも、膝にかかる荷重は何倍も軽くなります(歩行時:約4~6kg、階段昇降時:約10~14kg)。
また、肥満の解消は、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病、さらには脳卒中や心疾患といた病気の予防改善に役立ちます。したがって、肥満気味の方は、痩せるためにダイエットしましょう。
※体重管理は、変形性関節症の国際学会(OARSI)や日本整形外科学会(JOA)、日本理学療法士学会(JSPA)といった変形性膝関節症の主要組織のいずれのガイドラインにおいてもエビデンスレベルが高く科学的根拠のある膝OAの治療法とされています。
闇雲なダイエットは骨粗鬆症や筋力低下を招き逆効果
しかし、闇雲なダイエット(行き過ぎた食事制限や運動など)は、他の病気のリスクを高め、かえって変形性膝関節症を悪化させてしまう恐れがあるので要注意です。
- 過度の食事制限が原因で、必要な栄養が不足すると「骨粗鬆症」や「筋肉量の低下」を招く危険性があります。骨粗鬆症になると骨密度が低下し骨が脆くなるので、軟骨がすり減りやすくなります、また、筋肉量の低下も膝痛や腫れなどの引き金となり、変形性膝関節症を悪化させる恐れがあります。
- 過度の運動が原因で、膝関節に大きな負荷がかかり、変形性膝関節症の進行を早めたり、骨折や脱臼を起こしてしまう恐れがあります。高齢者の怪我は、治りも遅くベッド上での生活が長くなり廃用症候群を招く心配もあります。
このような闇雲な食事制限や運動は「不健康なダイエット」であることは一目瞭然です。しかし、「健康的なダイエット」とはどのようなものなのでしょうか?
健康的なダイエットを成功させるコツ
健康的なダイエットを成功させるコツは、「正しい目標体重の設定」と「無理のないダイエット方法」を学ぶことです。
適正体重とBMIを参考にダイエットの目標を立てよ
まず、正しい目標体重を設定するにあたり”自身が肥満か痩身か”把握しておく必要があります。その目安として「適正体重(標準体重)」と「BMI」を参考にすると良いでしょう。
- 適正体重(標準体重)
- 適正体重とは、肥満でも痩身でもなく、最も病気になり難いとされる体重です。適正体重は、BMIが22とされています。
- BMI(Body Mass Index)
- BMIとは、肥満や痩身を判定する体格指数です。体重と身長から測定します。【体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)=BMI】
この2つの言葉はセットで用いられます。つまり、最も病気になり難いとされる「適正体重」は、「BMI」を元に算出されるのです。そして、適正体重となるBMIの値は次のようになります。
適正体重(最も病気になり難い体重)=BMIの値が22
したがって、BMIが22前後になるよう目標体重を設定すると良いでしょう。
例えば、Aさん(身長:160cm、体重:70kg、年齢:65歳、性別:男性)の適正体重を計算していきましょう。
Aさんの適正体重を求める計算式は、X(kg)÷1.6(m)÷1.6(m)=22となり、56.32kgが適正体重となります。
したがって、70(kg)-56.32(kg)=23.68(kg)の減量を目標に痩せる必要があります。
次のBMIによる肥満判定基準を参考に、ご自身の肥満度をチェックしてみて下さい。肥満度がもし普通体重を上回るような場合、痩せることをお勧めします。
食事療法+運動療法で健康的にダイエット
しかし、ただ痩せれば良いというわけではありません。
先ほど説明したように、無理なダイエットは、かえって変形性膝関節症を悪化させてしまう危険性があります。したがって、健康的に痩せながら適正体重を目指すことが大切です。
健康的に痩せるには、食事療法と運動療法を上手く組み合わせることが重要です。
- 食事療法により、必要な栄養を確保しつつ、過剰なカロリーを摂取しない。
- 運動療法により、カロリーを消費しつつ、筋肉をつけ基礎代謝を上げる。
つまり、”「食事」により必要な栄養を摂取しつつカロリーコントロールしながら、「運動」によりカロリーを消費しつつ筋肉を維持増加させる”ことが「健康的なダイエット」には必要不可欠なのです。
では、ここからは変形性膝関節症の”食事療法”を中心に解説していきます。運動療法については、リンク先で詳しく説明しているので合わせてご覧下さい。
膝OAに対する食事療法のポイント
骨や筋肉の形成に不可欠な栄養素は積極的に摂取
変形性膝関節症の食事療法を成功させるには、まず身体の維持形成に必要な栄養素を十分に摂取しましょう。
特に、骨や筋肉の形成に欠かせない「タンパク質」や「カルシウム」、カルシウムの吸収をサポートする「ビタミンD」などの栄養素は積極的に摂取したいところです。その上で、日々の活動に不可欠な「炭水化物」や「脂質」といったエネルギー源が適正な範囲で収まるように摂取量を調節していきます。
3大栄養素(PFC)のバランスが重要
それでは、「①炭水化物(Protein)」「②脂質(Fat)」「③糖質(Carbohyrate)」、いわゆる三大栄養素(PFC)は各々どれくらいの量摂取すれば良いのでしょうか?
その理想的な栄養バランス(PFCバランス)は次の円グラフになります。
つまり、3大要素(PFC)の比率が次のようなバランスになるのが理想です。
炭水化物:脂質:糖質:=60:25:15
その為には、色々な食品をバランスよく食べ、必要な栄養素を確保できるよう心がけましょう。
炭水化物と脂質でカロリーコントロール
体重の増加は、日々の生活で燃焼する「消費カロリー」に対し、食事による「摂取カロリー」が上回っていることが原因です。
- 消費カロリーが摂取カロリーを下回ると・・・・太る
- 消費カロリーが摂取カロリーを上回ると・・・・痩せる
したがって、「消費カロリー」を上回る量の食事を摂取していては、いつまでたっても痩せることができません。消費カロリーよりも、摂取カロリーが少なく又は同等量になるようカロリーを調節していきます。
ただし、ここでも無理は禁物です。身体の維持形成、活動を行う為に必要最低限のカロリーは必ず摂取するようにしましょう。
1日あたりの総消費カロリー
「1日あたりの総消費カロリー」は、”基礎代謝量”と”身体活動レベル”をもとに計算します。
基礎代謝量
基礎代謝とは、人が生きていく為に最低限必要なカロリーのことです。呼吸、体温の維持・調節、新陳代謝、心臓や肺などの内臓の活動など、常に消費されているカロリーのことです。
基礎代謝の計算方法は、色々存在しますがここでは「ハリス-ベネディクト方程式(Harris-Benedict)」をご紹介します。
例えば、先ほどのAさん(身長:160cm 体重:70kg 年齢:65歳 性別:男性)の基礎代謝量は、上の計算式に当てはめると次のようになります。
基礎代謝量(kcal)=66+13.7×70kg+5.0×160cm-6.8×65
Aさんの基礎代謝量は、1383kcalとなります。
ただし、基礎代謝量は、肥満度や健康状態、年齢、性別、筋肉量などによって大きく変わってきます。
身体活動レベル
身体活動レベルとは、ライフスタイル(1日をどのように過ごしているか)の違いに基づき、低い・普通・高いの3種類にレベル分けしたものです。
1日あたりの総消費カロリーの計算
それでは実際に、1日あたりの総消費カロリーを「基礎代謝量」と「身体活動レベル(活動量)」を元に算出していきます。
1日あたりの総消費カロリー=基礎代謝量+活動量
例えば、先ほどのAさん(身長:160cm 体重:70kg 年齢:65歳)の身体活動レベルを普通とします。
それでは実際にAさんの「1日あたりの総消費カロリー」は次のようになります。
- 基礎代謝量=1383kcal
- 活動量=1.75
1日あたりの総消費カロリー(2420kcal)=基礎代謝量(1383kcal)×活動係数(1.75)
もし1日あたりの総消費カロリー以上に、食べ過ぎている場合は適正範囲でカロリーが収まるようコントロールするか、積極的に身体を動かしカロリーを消費するよう努めましょう。
これまでの説明を元に、ご自身の1日あたりの総消費カロリーを計算しましょう。それがあなたの1日あたりの摂取カロリーの目安となります。
まとめ
最後にしつこいとは思いますが、「健康的なダイエット」を成功させる為には、食事から必要な栄養素をバランスの良く摂取しつつ、カロリーコントロールにより減量することが一番のポイントです。また、運動療法を組み合わせることもダイエットを成功させる為の重要なポイントとなります。
無理は禁物です。計画を立ててゆっくりと健康的にダイエットしましょう。
カレンダーや手帳、ノート、スマートフォンのアプリなどに、”食べた物”や”摂取カロリー”を記録する「レコーディングダイエット」を試してみるのもお勧めです。実際に、”食べた物”や”摂取カロリー”を記録することで、カロリーを気にする癖がつき食べ過ぎの予防に繋がります。