回想法で認知症予防!回想法のやり方と5つの治療効果

認知症は脳を鍛えることで予防・治療できることをご存知でしょうか?

脳の活性化を図ることで、認知症の進行を抑制したり、症状を緩和・治療したりすることが可能なのです。脳を鍛え認知症に負けない脳を作るには、2つのポイントがあります。

  1. 頭を使う機会を増やす
  2. 他人とのコミュニケーションを取りワイワイ楽しむ

認知症のほとんどは、記憶障害から始まります。これは、認知症で一番多いアルツハイマー型認知症が、記憶を溜めて置く海馬という部位からダメージを受けるためです。

そして、実は、この記憶をコントロールしているのが前頭葉という新しいことを記憶したり、古い記憶を海馬から引っ張りだしたりする役割を担う脳の部位も認知症ではダメージを受けます。また、前頭葉には「コミュニケーションを取る」という働きもあります。

つまり、前頭葉を鍛えることで、認知症の進行抑制・治療効果が期待できるのです。

脳を鍛える方法は、いくつかございますがここでは「回想法」をピックアップして、その方法や効果について確認していきたいと思います。

回想法とは?

認知症に効く「回想法」とはいったいどういったものなのでしょうか?ズバリ、回想法とは次のような認知症予防プログラムです。

回想法とは、昔の出来事を思い出しながら語ってもらい、聞き手が共感的に傾聴することで心の安定を図る療法です。昔のことを回想してもらうことで、海馬や前頭葉を活発に刺激することができます。また、回想法は、自分だけでなく他人とのコミュニケーションを取りながら行うので、より前頭葉が活性化し認知症の進行抑制・治療効果が期待できます。

回想法のやり方は、写真や道具を使うものから劇仕立てのものまで様々ですが、その本質はそこで行われる「会話」であると考えられています。上手にコミュニケーションを取るには、言葉やジェスチャーなどを駆使して、相手に自分の考えを伝える作業が必要になってきます。この作業は記憶を蓄積する海馬、視覚野、言語野と多岐に渡る脳の部位を連動させて使うので、脳が活性化のよいトレーニングになり認知症の予防改善が期待できます。

また、回想法により、お年寄りは輝いていた過去を再認識し、相手に認めてもらうことで自尊の感情が高まり、情緒が安定します。高齢になれば、認知力が低下し、新しいものへの興味が無くなり「わからない」ことが増え、段々と自信を失ってきます。そこで回想法により「昔のよき時代」を思い返すことで、再び「自分はスゴイ、今まで生き抜いてきたんだ」と自信を取り戻すきっかけにもなるのです。

認知症の人は昨日の出来事を忘れても、昔のよい思い出は大抵覚えています。これは重度の認知症でない限り、長期記憶は障害されにくい為です。懐かしい記憶を思い起こすことで脳全体を活性化させ、認知症の進行を遅らせる効果が期待されています。

回想法を行う上での注意点

回想法を実施する上でいくつかの注意点がございます。注意点を守らずに回想法を実施すると逆効果になる場合がございますので次のことを守って下さい。

話の邪魔をしない 大切なことは、以前に聞いたことがあったり記憶に間違いがあったりしても聞き手は話を遮らないことです。話を遮られてしまうと本人は混乱し取り乱してしまいますので、話の内容は全て受け入れるように注意しましょう。
無理やり回想させない 誰にでも他人に話したくないことはあります。戦争世代の方も多く、今でも心に深いキズを残している人もおられます。無理やり回想法を行うことで、反って心を閉ざし、ふさぎ込んでしまうとコミュニケーションが減り逆効果となります。また、体調がすぐれない時に無理やり参加させるのは禁止です。
回想法の内容を参加者以外に話さない 本人にとってプラスになることは、介護職員の間で共有し、介護に活かすと良いでしょう。しかし、時には、参加者の方以外に知られ気分を害す方もおられます。介護者の方はそういった見極めが大切です。
定期的に回想法を実施する 一度だけでなく、何度も行うことが大切です。できれば毎週・毎月実施すると良いでしょう。また、時間は体調なども考慮にいれ1時間程で調整しましょう。次の機会を楽しみにすることで、生活に張りが出て、問題行動がへることが期待でいます。

回想法の2つの方法

回想法の方法には1対1で行う「個人回想法」と1人の専門家と6~8人の参加者で行う「グループ回想法」の2つがあります。

個人回想法
個人回想法は自宅でもアルバムなどを見ながら本人とその家族である介護者で行うことができます。脳の活性化だけでなく、本人の人生を振り返ってもらうことで自己を再認識や自信を取り戻してもらうキッカケになります。
グループ回想法
グループ回想法はデイサービスやデイケア、グループホームなどの介護施設などでお年寄り同士のコミュニケーションを図るのに最適です。みんなでワイワイとコミュニケーションを取りながら回想法を実施することで、より高い治療効果が期待できます。

回想法を行う前の準備とやり方

ただ昔のことを回想して語ってもらうだけでも効果が期待できますが、色々な道具を用いるとより高い効果が期待できます。会話の内容はどんなものでもよく、ドンドンと昔話に花が咲けばよいという感じで進めていきましょう。

そして、お年寄りが喋りやすいようにうなずくなど相手が話しやすい雰囲気を作ります。そして、話が詰まった場合などは上手くフォローをいれ話が続くよううながすことが大切です。

まず個人の認知能力や情報をチェック

まず回想法を実施する前準備として、本人の認知力や精神状態をチェックしておきましょう。記憶障害や見当識障害など認知症の重症度がどれくらいなのか確認しておきます。「長谷川式簡易知能評価スケール」という認知症テストを使い、回想法の実施前後で、どれほど効果があるのか定期的に記録を取りましょう。1ヶ月に1回くらいが目安です。

また、その人の生年月日や出身地、職業、趣味などについても予め確認しておきましょう。

アルバムや写真を使って回想してもらう

アルバムや写真を使用してその人の歩んできた人生やその時代の話をしてもらいましょう。アルバムや写真を使うことでより具体的に当時の情景を思い出しやすくなります。昔出版された本や雑誌もいい素材です。回想法の為の写真集も発売されていますので、それを活用することも出来ます。

今はビデオやインターネットなどで大正や昭和の頃の映像が公開されていることもあるので有効に使いましょう。

道具やキーワードを使うと効果アップ

回想法を実施する時は、「故郷」や「小学生時代」、「中学生時代」、「昔遊んだ遊び」といった具合にキーワードを予め決めておきます。それに沿って、昔懐かしいアイテムを用意しましょう。

  • 「めんこ」「こま」「いろはかるた」「日光写真」「けん玉」「たこ」といった昔懐かしい玩具・おもちゃ
  • 「しちりん」「まき」「そろばん」「レコード」「蓄音機」」といった昔懐かしい道具
  • 「まんが」「紙芝居」といった昔懐かしい出版物
  • 「駄菓子」「チキンラーメン」といった昔懐かしい食べ物

こうした実際の物を使用することで、「味覚」「嗅覚」「触覚」「視覚」「聴覚」といった「五感」が刺激され、より回想法の効果が高まります。歌を歌ったり、香りを嗅いだりすることも回想法の効果をより高めます。

回想法の5つの治療効果

回想法は、過去の楽しい思い出を回想し、相手に共感してもらうことで心を安定させ、認知症の症状を和らげる治療効果が期待できます。昔のことを思い出しながら話す。一日一時間程度でも認知症の症状の出方に大きな違いが出てきます

回想法の具体的治療効果

回想法は、認知症の方はもとより、認知症を発症していない人でも同様の効果が期待できますので、認知症の介護予防にも繋がります。具体的な、回想法の治療効果は次の様なものです。

1.認知症の進行抑制・治療効果

昔の思い出を回想し、語り合うことにより普段の日常会話と比較して、脳全体の血流量が増加し、認知症の進行を抑制する効果があります。また、認知症の進行抑制効果だけでなく、以前よりも「もの忘れ」が少なくなったなど認知症の中核症状である記憶障害の治療効果も期待できます。

2.表情が豊かになる

無表情な方でも、回想法によって懐かしさや他人と共感し合える喜びを感じることで、自然と表情が豊かになります。

3.行動・心理症状が和らぐ

回想法によって他人に共感してもらう経験を重ねると、精神状態が安定し行動・心理状態も落ち着き「暴力」や「妄想」が減ります。また、昔のことを回想することは脳を活発に使うので、ほどよい疲れを生み夜間の「徘徊」などの周辺症状が減ります

4.お年寄り仲間が増える

昔のことを回想し共感し合うことで、お年寄り同士の友情が芽生えたり、より深まったりします。生きる希望が育まれたり、他人と比較することでアイデンティティの認識に繋がります。

5.介護者との関係が良くなる

回想法の効果は、お年寄りだけではありません。回想法により、お年寄りの昔話を聞くことで、その方に対する理解が深まり、関係が良好になります。また、回想法により、お年寄りが興味を持つ物事を知り上手く活用することで、認知症の中核・周辺症状が和らぎ介護者の介護負担の軽減が期待できます。

まとめ

このように回想法は、過去の楽しい思い出を回想することで、記憶障害の予防・治療効果が期待できだけでなく、他人とのコミュニケーションをとることで、共感し合い、精神を安定させることが出来ます。

また、何も回想法を実施するのは専門家だけではありません。認知症の方を介護している家族も実施していただけます。「家族にしか分からない思い出」を思い起こすことは、どんなに優れた回想法のプロや介護士でも難しいことです。

デイサービスなどで行われる回想法は、昔を懐かしむことを楽しむのが基本です。しかし、家族で行う回想法は、楽しいことだけでなく、辛かったこと、悲しかった出来事など複雑な思い出を思い起こすかもしれません。ですが、家族だからこそ共有できるイキイキとした記憶を思い出し、愛情を持って語り合うことは認知症の方にとってきっと良い結果に結びつくはずです。また、介護で悩む家族が回想法を通して「家族とは何か」を自らに問い直し、精神的な介護負担を軽減する効果も期待できます。

回想法で認知症の予防・治療に努めましょう!