変形性膝関節症の運動療法(リハビリ)
数ある治療法の中でも、運動療法(リハビリ)は変形性膝関節症(膝OA)に対して高い効果が望める治療法として有名です。
運動療法では、筋力トレーニングや有酸素運動、ストレッチなどを行い身体を動かすことで、変形性膝関節症を治療します。とはいえ、変形性膝関節症の運動療法について詳しくご存知ない方も少なくないでしょう。
- どのような効果があるの?
- 運動をすると逆に膝を痛めそうな気がする・・・
- 筋力トレーニングやストレッチのやり方やコツは?
このような疑問を解決しないまま、ただ闇雲にリハビリに取り組んでも、その効果が期待できないどころか、逆に症状を悪化させてしまう可能性さえあります。
したがって、まずはこの記事で”変形性膝関節症の運動療法”の基本を押さえて下さい。
変形性膝関節症に対する運動療法の効果
変形性膝関節症の治療は、運動療法(リハビリ)を基本に組み立てると言っても過言ではありません。運動療法は、薬物療法などの対処療法とは異なり、直接膝に働きかけることができる治療法です。
運動療法(リハビリ)の効果
変形性膝関節症は、膝の関節軟骨や半月板の”すり減り”や”変形”が原因で生じる病気です。この病気の特徴的な症状として”ズキズキとした痛み”や”こわばり”が現れます。
これら変形性膝関節症の原因や症状に対し、リハビリに取り組むことで次のような治療効果が期待できます。
- 関節軟骨や半月板のすり減りの抑制効果
- 疼痛(ズキズキした痛み)の緩和効果
- 関節可動域の維持・拡大による拘縮(こわばり)予防効果
個人差はありますが、1~2ヶ月続けると、多くの人で痛みが改善します。
しかも、変形性膝関節症に対するリハビリの効果は、国内外問わず多くの臨床研究において広く認められています。したがって、運動療法はエビデンスレベル・推奨度のいずれをとっても高く評価されている確かな証拠のある治療法と言えるでしょう。
運動療法(リハビリ)は、変形性関節症の国際学会(OARSI)や日本整形外科学会(JOA)、日本理学療法士学会(JSPA)といった変形性膝関節症の主要組織のガイドラインでいずれも高い推奨度を得ています。
膝OAに運動療法(リハビリ)が効果的な理由
しかし、不思議ではありませんか。
なぜ運動を行うことで「病気の進行を遅くしたり、痛みを緩和したりする効果」が期待できるのでしょうか?
その理由は、運動をすることで以下の4つの作用が働くためです。
- 筋肉量の増加による筋力の強化
- 体重の減少
- 関節の柔軟性向上
- 新陳代謝の促進
それでは、4つの作用がどのようにして変形性膝関節症の治療に効果を示すのか、そのメカニズムを解き明かしていきましょう。
①「筋肉量の増加」で膝関節の状態が安定
膝関節は、骨だけで成り立ってるわけではありません。骨同士が接する面積は、あまり広くはなく、筋肉と靭帯の力を借りて、膝の安定性や動きを支えています。
磨耗し変形した軟骨を元の状態に戻すことは、現代医学をもってしてもほぼ不可能です。そこで、骨ではなく筋肉を増やし、筋力を強化することで不安定な膝関節を安定させ、膝にかかる負荷を減らします。そして、膝への負担が軽減すると痛みの軽減にも繋がるというわけです。
膝関節を安定させる為には、”大腿四頭筋(膝を伸ばす筋肉)”や”ハムストリングス(膝を曲げる筋肉)”など、膝を支える筋肉を中心に鍛えます。
②「体重の減少」で膝への負担を軽減
変形性膝関節症のリスクを高める要因として、肥満があります。体重が重い肥満体型の人は、それだけで膝にかかる負担が重くなり、軟骨のすり減りを促進します。
したがって、体重が負担になっている場合は、身体を動かしダイエットすることで、病気の進行抑制や膝痛を軽減する効果が期待できます。
ですが、ただ単に体重を減らせば良いというわけではありません。身体に必要な栄養素が不足すると骨粗鬆症などの他の病気にかかり変形性膝関節症の進行を早めてしまう心配があります。したがって、十分な栄養を確保した上で、体重を適正な範囲にコントロールすることが大切です。
③「関節の柔軟性向上」で拘縮予防
膝の痛みが現れると、膝を動かすのが億劫になってきます。ですが、関節を動かさずにいると、その柔軟性が失われこわばる「拘縮(関節が固まり動かせる範囲が狭まる症状)」が現れることがあります。拘縮があると、より膝が動かしづらくなり日常生活に支障を来たします。また、拘縮は、なかなか改善が難しい症状として知られています。したがって、ストレッチなどで適度に関節を動かすことは、関節の柔軟性を維持・向上させ拘縮を予防する為にも必要不可欠です。
④「新陳代謝の促進」で膝痛の物質を排出&関節の健康を保つ
痛み物質が放出される
運動療法に取り組み、血流を改善し代謝を促すことも、変形性膝関節症の治療効果が期待できます。これは、新陳代謝が促進されることで、膝痛を引き起こす物質(サイトカイン、軟骨の破片)や疲労物質が排出されやすくなる為です。
まだ運動療法に取り組んで間もなく筋肉量が増加していない時期でも、痛み改善するのは、この新陳代謝の影響だと考えられています。
関節軟骨に栄養が行き渡る
関節軟骨を健康に保つためには、栄養や酸素が不可欠です。関節軟骨には血管が無いため、その代わりに関節液が栄養を運んでいます。上手く栄養を行き渡らせるには、関節液を膝軟骨に十分浸透させる必要があります。ですが、安静にしたままでは、関節液を十分に浸透させることができません。そこで、運動を行い膝を動かすことで関節液を浸透させ、関節軟骨を健康に保つのです。また、栄養や酸素が軟骨に行き渡ることで、軟骨が持つ僅かな”自己修復力”を高め再生が促進される可能性も研究により指摘されています。なお、軟骨が修復されるのは関節に負荷がかかっていない時です。なので、昼間は運動で身体を動かし、夜はぐっすり寝る、習慣をつけることが大切です。
運動療法の種類と重症度別のリハビリプログラム
膝OAのリハビリは大きく3種類
それでは、今説明した運動療法(リハビリ)の”4つの効果”を最大限に発揮するにはどのような運動に取り組めば良いのでしょうか?
それは、次の3つの運動をバランスよく実施することです。
主な目的 | |
---|---|
筋力トレーニング | 筋肉量の増加、筋力の向上 |
ストレッチ | 筋肉や靭帯などの柔軟性向上、血流促進 |
有酸素運動 | 全身の筋力アップ、減量 |
実際の治療現場では、個々の症状に合わせて、この3つの運動を組み合わせたリハビリプログラムを作成し、それに取り組みます。
重症度に応じてリハビリプログラムを組み立てる
運動療法は、変形性膝関節症の軽度から重度の方まで、どの段階においても有効とされる治療法です。また、手術の後でもリハビリは有効的です。
※最もリハビリの効果が高いのは軽度の方で、病気が進行するに連れて効果が低くなっていきます。
ですが、軽度と重度とでは、リハビリプログラムに違いが出てくるのは当然です。その人に合わないリハビリプログラムでは、最大限に効果を発揮できないばかりか、膝痛を悪化させてしまう危険もあります。
そこで、個々の患者さんに合わせたリハビリプログラムを作成する為に、重視されるのが”重症度(グレード)”です。重症度は単純X線検査の結果で判断されますが、必ずしも本人の自覚症状と一致するとは限りません。
重症度が軽度の場合は、重点的に筋力トレーニングと有酸素運動を行い、筋力の増加と減量、心肺機能の向上を目指すリハビリプログラムを組みます(ストレッチも行います)。そして、病気の進行に合わせて、より負担の少ないメニューへとシフトしていくと共に、ストレッチを重点的に行い関節可動域が狭まるのを予防します。
変形性膝関節症の運動療法のやり方
それでは、いよいよ3つの運動(筋力トレーニング、有酸素運動、ストレッチ)別に、患者さんの症状や体調に合わせて無理なく行える運動を選択できるよう、出来るだけ多くの運動を取り上げてご紹介していきます。
1.筋力トレーニング
目的
筋力トレーニング(略して筋トレ)の主な目的は、膝周辺の筋肉を強く鍛え、膝を安定させ負担を軽減することです。筋力は年齢を重ねるごとに衰えやすくなるので、筋肉量を維持・増加させる筋トレは変形性膝関節症の治療に大きな効果をもたらします。
- 筋力強化により膝関節が安定し、疼痛が軽減する
- 筋肉量の増加に伴い、基礎代謝も増加しダイエットに役立つ
筋トレで鍛える筋肉部位
変形性膝関節症の筋トレでは、「大腿四頭筋(太腿の前側にある、膝を伸ばす筋肉」を鍛えることが最も重要ですが、「ハムストリングス(太ももの後ろにある、膝を曲げる筋肉)」を鍛えることも必要です。さらに、O脚の方は、「大臀筋、中臀筋、小臀筋(お尻の筋肉)」を鍛えると、膝の内側にかかっている負担を減らす効果が期待できます。
こういった筋肉を鍛える方法は多くありますが、ここでは「①脚上げ運動」「②タオル・枕つぶし運動」「③脚外上げ運動」の3種類を取り上げています。
①脚上げ運動、②タオル・枕つぶし運動、③脚外上げ運動
<出典:日本整形外科学会>
この3種類の運動は20回を1セットとして、朝に3セット、夕方に3セットを行うことを基本としています。一度にかかる時間は、朝夕それぞれ15分ほどになります。この3種類の運動は、横になったまま、座ったままで行うため、膝に負担がかかりにくいメリットがあります。また、TVを見ながらや、少しの隙間時間に気軽に行えます。
なお、筋肉の生成に役立つタンパク質や骨の材料となるカルシウム(ミネラル)が多く取れる食品を積極的に摂ると良いでしょう。
2.有酸素運動
目的
変形性膝関節症の有酸素運動の主な目的は、膝に負担をかけないよう減量すると同時に、筋力強化です。他にも、全身の血行をよくする、血管の老化を防ぐ、心肺機能を高めるといった効果が認められています。
このように有酸素運動は、膝だけでなく、全身へも好影響を及ぼすことが期待できる変形性膝関節症の治療法です。また、高齢者に多い認知症や脳卒中などの病気にも有酸素運動は効果的です。
①ウォーキング、②自転車こぎ、③水中運動
有酸素運動とは酸素を体内に取り込みながら比較的ゆっくりと行う運動全般のことを指します。変形性膝関節症の治療でオススメする有酸素運動は、膝に負担がかかりにくいとされる3つの運動です。
- ウォーキング
- 自転車こぎ(サイクリング・エアロバイク)
- 水中運動(水泳・アクアビックス・水中歩行)
※なお、ジョギングも有酸素運動の1種ですが、膝への衝撃が大きいので、変形性膝関節症の方にはあまり向きません。
変形性膝関節症の治療では、体重管理(ダイエット)も大切です。脂肪の燃焼は、運動開始後、約20~始まるとされています。なので、長い時間かけてゆっくりと取り組む有酸素運動は、同時に効率的にダイエットも行えるオススメの治療法です。
- 全身の筋力が向上する
- 体脂肪を効率よく燃焼させる
- 心肺機能が向上し、基礎代謝量が増える
- 血流が改善され、新陳代謝が促される
ウォーキング
ウォーキングは、特別な道具や機械、プールなどを必要としない、最も気軽にできる有酸素運動です。ですが、他の2つの運動に比べて膝への負担は少し強いので、歩くと膝に痛みを感じるという方は、無理にウォーキングをしてはダメです。
ウォーキングを始めるにあたり、次のポイントを押さえておきましょう。
- 歩数計でまず自分の1日の歩数を計る
- 1回20~30分、一週間に3回程度行う
- 少し息が上がるくらいのペース
- あまり痛みを感じない軽度〜中等度の方にオススメ
- 自分にあった(サイズなど)スポーツシューズを履く
- 正しい姿勢(顎を引いて胸を張り、腕を大きく振りながら、歩幅は痛みが生じない程度でなるべく広めに調整)で、リズミカルに歩く
- 歩くと痛む場合は、足踏みをする運動から始めます。テーブルに両手をついて膝関節の負担を減らしながらその場で足踏みをします。痛みが軽くなってきた段階で、ウォーキングに移行します
自転車こぎ(エアロバイク・サイクリング)
自転車こぎは、変形性膝関節症にオススメの有酸素運動です。自転車こぎには、一般的な自転車を使う方法(サイクリング)とエアロバイクという機械を使う方法があります。
特に、変形性膝関節症の方にオススメしたいのは、後者のエアロバイクです。
エアロバイクは、サイクリングとは異なり、ペダルの負荷や回転数などを調節することで、強度を自由に変えられるというメリットがあります。
自転車こぎは、膝関節への影響が小さく、筋肉を効率的に強化できる運動
エアロバイク(自転車エルゴメータ)とは、室内で自転車こぎができる機械のことです。スポーツ施設などでも設置されていますが、家庭用のエアロバイクも販売されています。
エアロバイクは、膝関節への負担も少なく、大腿四頭筋を含めた下肢全体の筋肉を鍛えることができるので、変形性膝関節症の運動としてはオススメです。
最近のエアロバイクは、心拍数や消費カロリーが表示され、負荷条件を設定できるようになっています。ペダルにかかる負荷は手元のスイッチで自由に調節できます。また、高性能のエアロバイクなら脈拍(心拍数)を図る装置を身体に取り付け、その情報を元に機械がペダルの抵抗を自動調節くれるので、無理なく筋力を鍛えることができます。
膝に痛み生じない負荷で、かつ1分間の心拍数が120を超えないように負荷を設定し、実際にモニターで確認しながら行うと良いでしょう。1回の運動時間は20~30分を目安に、週に2~3日ペースで取り組みます。
ただし、エアロバイクは、サドルの高さを上手く調節する必要があります。ベダルが一番上に来たとき、太ももとふくらはぎの角度が90度(直角)を目安にサドルの位置を調節します。また、負荷をかけ過ぎると膝関節を痛めやすくなったり、心臓への負担が増したりしますので注意が必要です。
水中運動
水中運動とは、水中ウォーキング(歩行)や、アクアビックス、水泳などの水を使った運動療法のことです。水中運動は、変形性膝関節症の人に適した治療法です。なぜなら、水中運動では”浮力”や”水圧”、”水抵抗”、”水温”といった水の特性を利用したリハビリが行える為です。
浮力で膝にかかる負担を軽減
水中運動の最大のメリットは”浮力”です。水に浸かると身体が軽くなったという経験はございませんか?実際にどれくらい軽くなるのか次に示すデーターを見てください。
- 腰まで浸かった場合、体重の約50%が浮力で軽くなる
- 胸まで浸かった場合、体重の約70%が浮力で軽くなる
- 首まで浸かった場合、体重の約90%が浮力で軽くなる
なんと、体重が60kgの人の場合、胸まで水に浸かった時は、体重が約18kgまで軽くなるのです。その為、同じ歩行でも水中では陸上のそれと比べて、膝にかかる負荷がかなり少なくて済み、身体を楽に動かすことができるのです。
また、転倒する心配もないのも浮力のメリットと言えるでしょう。
水抵抗、水圧、水温で全身の筋肉を効率的に強化、さらにはダイエット効果も
”水抵抗”や”水圧”といった特性も、水中運動のメリットです。水による抵抗力は、地上のおよそ20~40倍とも言われています。さらには、あらゆる角度からかかる水圧が全身を刺激します。
したがって水中運動では、”水抵抗”により全身の筋肉をバランスよく効率的に鍛え、さらには、”水圧”により「血流促進による新陳代謝のアップ」や「消費カロリーのアップ(圧力が横隔膜を押し上げ呼吸を制限する為)」といったダイエット効果や心肺機能の向上が期待できます。
また、水は空気の約20~30倍も熱を伝えやすい為、水中では体熱が奪われます。人間の身体は、自然と体温を一定に保つ為に、脂肪燃焼が活発化し、エネルギー消費量が陸上にいるときよりも増大します。
つまり、水中の方が陸上と同じことを行なっても、有酸素運動としての効果は高まるのです。
水中ウォーキングは誰でも取り組みやすいリハビリ
実際の水中運動には色々な方法がありますが、泳げる泳げないに関わらず手軽に始められる水中ウォーキングがオススメです。
水中ウォーキングでは、腰から胸あたりまで水に浸かり、ゆっくりとしたペースで歩きます。前方に歩くだけでなく、後ろ向きに歩いたり、横方向にカニ歩きで歩行したりします。
水中ウォーキングは、1回20~30分を目安に、週に2日程度行うと良いでしょう。
ただし、地上で行うウォーキング以上に水中での姿勢が重要となります。水中運動を始める際には、理学療法士やインストラクターなどの指導員からきちんと基本姿勢を教えてもらう必要があります。
※水圧は、心臓や肺への負担を強めることもあるので、高血圧や心肺系の病気をお持ちの方は、主治医や専門指導員などに予め相談しましょう。
3.ストレッチ
ストレッチ(体操)は、変形性膝関節症の重症度に関係なく、広く行ってもらえる運動療法です。
- 筋肉や靭帯の柔軟性の維持・向上
- 柔らかく質の良い筋肉が作られる
- 血行が改善し、痛み物質や疲労物質の排出が促進される
ストレッチで関節可動域の維持・改善、新陳代謝を促す
変形性膝関節症で生じる関節こわばり(関節可動域の制限)は、薬や注射では治療が困難なので、ストレッチにより筋肉や腱(けん)の柔軟性を維持・向上を図ることはとても大切です。また、ストレッチは血流を改善するので、痛み物質や疲労物質の排出効果も期待できます。筋トレや有酸素運動の後にストレッチを行うと、筋肉の疲労を残しにくくするばかりか、質の良い筋肉が増えていきます。
下肢全体をストレッチ
足関節ストレッチを中心に、大腿四頭筋、ハムストリングス、ふくらはぎ、アキレス腱のストレッチなど数種類を行い、なるべく様々な部位を伸ばすようにすると効果的です。
また、関節や筋肉は温めると柔らかくなるというゴムのような性質を持っているので、ストレッチは湯船の中や風呂上がりなど、膝関節が温まっている時に行うとより効果的です。いつもは膝に痛みがあってできない屈伸も、浮力があって関節への負担が少なくなる水中なら痛みを感じずに行える場合が多いです。
ストレッチの際は、いきなり無理に反動を使って伸ばすと、かえって痛みを強くする原因になります。反動をつけずゆっくりと伸ばしていき、痛みのない範囲で気持ち良いと感じる程度に留めておくのがコツです。
継続的なリハビリで悪循環を断ち切る
ここまでの説明で”運動療法が変形性膝関節症に効果的な治療法”とされる理由が、お分り頂けたと思います。ですが、運動をすると、軟骨のすり減りが進み変形性膝関節症が悪化するのではないかと思われている方も多いと思います。確かに、運動により軟骨のすり減りが進む可能性はあります。ですが、それ以上に運動をしないことによるリスクの方が高いと言えるでしょう。
リハビリをしないと悪循環に陥る
膝の痛みを抱えている為に、身体を動かすのが苦痛となり、運動をしないばかりか、安静にし過ぎてしまいがちです。安静にし過ぎて膝を動かす機会が減ってしまうと、下の図のような悪循環に陥り”変形性膝関節症の進行スピードを速めてしまう恐れがあります。
膝の痛み→身体を動かさない→筋肉量が減る・関節可動域が狭まる・体重が増加→関節への負担が増加→膝の痛み
したがって、少しの痛みぐらいなら、身体を積極的に動かした方が、結果的に症状の悪化を防ぐことができるのです。また、日頃からなるべく外出するなど活動的な生活を送った方が生活の質(QOL)も高まります。
リハビリは無理せず継続することが1番
運動療法は、無理せず適度な運動を継続することが一番です。
三日坊主でいてはその効果はほとんど期待できません。また、無理な運動によってかえって膝への負担が増すような事態は避けなければなりません。
やり込み過ぎや間違った方法で無理をしても、せっかくの運動の効果も期待できないばかりか、逆に骨折などの怪我をしてしまう可能性さえあります。
運動に取り組む際の注意ポイント
このような事故を起こさない為には、自らの膝の状態だけでなく心身状態をよく知っておく必要があります。運動療法を始める前には、必ず主治医やリハビリスタッフ(理学療法士など)とよく相談し、自分にあった運動療法のリハビリプログラムを作ってもらいましょう。適切な量をコツコツ継続する(ちょっと足りないくらいを毎日続ける)ことが大切です。まさに「継続は力なり」なのです。
また、ご紹介した有酸素運動は膝関節への負担が少ないものです。ですが、有酸素運動は心臓や肺など全身に負担をかける可能性があります。持病などが心配な方は、事前の診察(メディカルチェック)を受けることが望ましいでしょう。また、膝の腫れや痛みが続く場合や悪化した場合は、自己判断をせず早めに専門の医師の診察を受けることが大切です。