レビー小体型認知症の診断基準&テスト

レビー小体型認知症は、国際的に認識されるようになってからまだ日が浅い病気です。その為、レビー小体型認知症に関する知識や治療経験が豊富な医師が少なく誤診や見逃しが多い病気です。他にも、レビー小体型認知症は、次のような特徴から見逃されたり誤診が多い病気です。

  • レビー小体型認知症の初期段階では、まさに認知症という「記憶障害」が現れないことが多い
  • レビー小体型認知症の症状は多彩で、他の病気と誤診されやすい
  • 脳CTや脳MRIといった画像検査でレビー小体型認知症の病変であるレビー小体が映し出されない

したがって、医師でもレビー小体型認知症は見逃したり、誤診したりしやすい病気です。実際にはレビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症を合併しているにも関わらず、脳に萎縮があるというだけでアルツハイマー型認知症とだけ診断されるケースも多々あります。

しかし、そのままレビー小体型認知症を放置したり、適した治療が行われないと悪化する恐れがあります。この記事では、「レビー小体型認知症の診断基準」や「レビー小体型認知症に合わせた認知機能テスト」をご紹介していますので、是非ご活用ください。

レビー小体型認知症の診断基準

レビー小体型認知症の原因である「レビー小体」は、脳MRIや脳CIといった画像検査では映し出されることはありません。「レビー小体がどこにどれだけ存在するか」は、その方が亡くなった後の病理解剖で調べない限り正確なことは解りません。

それでは、どうやってレビー小体型認知症と診断することができるのでしょうか?

そこで重要になってくるのが、「改訂版レビー小体型認知症の診断基準(第3回DLB国際ワークショップ)」です。この「改訂版レビー小体型認知症の診断基準」は、「レビー小体型認知症の特徴的な症状」や「画像診断」や「神経心理学的検査」といった様々な視点から総合的にレビー小体型認知症かどうか診断します。

中心的な特徴 認知障害 レビー小体型認知症の初期段階では、記憶障害は起こらない場合もある。注意・実行機能・視覚空間テストで障害が目立つことがある。
コアとなる中核的特徴 認知の変動
  1. ほぼ確実(PROBABLE)と診断するには2つ以上
  2. 疑いがある(POSSIBLE)と診断するには1つ以上が必要
具体的で詳細な内容の幻視が繰り返す
薬剤などの影響のないパーキンソン症状
示唆的な特徴 レム睡眠障害
  1. 1つ以上のコアとなる特徴に加え、1つ以上の示唆的な特徴がある→ほぼ確実(PROBABLE)
  2. コアとなる特徴はないが示唆的な特徴が1つ以上ある→疑いがある(POSSIBLE)という診断には十分

※示唆的な特徴のみで、ほぼ確実(PROBABLE)と診断すべきではない

抗精神病薬に対する重篤な過敏反応
大脳基底核でのドパミントランスポーターの取り込み低下(SPECT)
支持的特徴 繰り返される転倒 通常存在するが、「この症状や所見があればこの病気の可能性が高い」という診断特異性は証明されていない
一過性の意識消失
重い自律神経症状
系統化された妄想
幻視以外の幻覚症状
抑うつ症状
側頭葉内側の委縮がみられない(CT・MRI)
後頭葉の血流低下・代謝低下(SPECT・PET)
MIBG心筋シンチグラフィによる取り込み低下
脳は検査による全般的な徐波化
診断の可能性が低い症状 脳血管障害の存在  
他の身体疾患・脳疾患の存在
重い認知症の檀家にになって初めてパーキンソン症状が出現

この「改訂版レビー小体型認知症の診断基準」からも分かる通り、診断の際にもっとも重要になるのは、「レビー小体型認知症の特徴的な症状」が現れているかどうかです。その点を重視して、レビー小体型認知症の診断材料にしてみて下さい。

レビー小体型認知症を検査するテスト

レビー小体型認知症の診断基準の「中心的な特徴である認知障害」の有無を調べるのに、神経心理学検査の1つである認知機能を調べる検査を行ってみると良いでしょう

一般的な認知症テスト

主に、認知機能を数値化し、認知症の疑いがあるかどうか判断する材料として、次のようなテストがあります。

これらのテストはレビー小体型認知症だけでなくアルツハイマー型認知症や若年性アルツハイマー病の検査にも利用されるテストです。これらのテストで、「今いる場所や日時といった見当識」や「記憶力」や「計算力」といった認知機能が正常に保たれているか判断する材料となります。

レビー小体型認知症の特徴症状に合わせた検査テスト

しかし、初期段階のレビー小体型認知症では、アルツハイマー型認知症に代表される認知障害の1つである「記憶障害」が目立たないことがあります。その代わりに、レビー小体型認知症の特徴的として視覚的な認知機能の低下による「幻視」や「誤認」症状が確認できることが多いです。レビー小体型認知症の人の多くは視覚認知機能を確かめるテストが苦手です。

したがって、レビー小体型認知症の診断材料の1つとして、視覚認知機能が正常化どうかテストします。次のような視覚認知機能を活用するテストを行います。

視覚的な認知機能に着目したテスト|時計描画テスト

やり方

紙に円、その中に数字(時刻)、さらに、10時10分を示す針を描いてもらいます。15分以内で、時計を見ないで描いてもらいます。

判定

  • 円が小さすぎる(直径8cm以下)
  • 数字の配列が逆
  • 数字がマルク並んでいない
  • 数字が足りない
  • 数字が多い
  • 張りの方向が違う
  • 張りが3本以上ある
  • 時間をデジタル時計表示で描く

どれか一つでも当てはまるようならレビー小体型認知症を疑います。また、テスト中に腕時計などを見た場合も認知症の疑いがあります。たったこれだけのことですが、時計描画テストでは、レビー小体型認知症の特徴である視覚認知機能に問題がないかの判断材料になります。

その他のレビー小体型認知症テスト

時計描画テスト以外にも次のようなテストでレビー小体型認知症かどうかの判断材料にして下さい。

山口式キツネ・ハト模倣テスト
検査をする人が手や指を使って「キツネ」や「ハト」を作ります。その後、同じ形になるよう手まねをしてもらいます
錯綜図テスト
重なった図形を見て、何が描かれているのかを答えてもたったり、同じものを描いてもらったりします(錯綜図の描写はMMSEの検査項目の1つです)

レビー小体型認知症は認知の変動への対応

レビー小体型認知症の場合、記憶力や判断力といった「認知機能の調子が良い時・悪い時の変動が激しいという特徴」があります。このことを認知の変動と言います。したがって、「レビー障害型認知症かどうか」この認知の変動により、1回の検査だけでは白黒つけ難いです。その為、日を変えて何度かレビー小体型認知症かどうかテストしてみましょう。

まとめ

レビー小体型認知症の診断基準やレビー小体型認知症テストの結果から少しでも、レビー小体型認知症が疑われるようなら専門医療機関に受診してください。したがって、信頼できる医師にかかることが大切です。レビー小体型認知症は新しい病気です。たとえレビー小体型認知症の治療経験が少ない医師でも一緒に学び理解や解決に一緒に取り組める医師なら信頼性は高いでしょう。

しかし、次のような医師はレビー小体型認知症を診断・治療していく上で注意が必要です。

  • 画像や検査データだけを重視して、家族や患者の話を聞こうとしない。←レビー小体型認知症の特徴症状を見逃しにつながる
  • 治療方針や治療薬に対する説明が一方的←その人に合った治療ができない
  • うつ症状に対して、抗精神病薬をいきなり処方する←レビー小体型認知症が悪化することもある

レビー小体型認知症を早期に発見するとそれだけ治療の可能性が広がります。しかし、一方で誤った治療を続けると病状が悪化してしまう可能性もあります。介護者の方も少しでも「うちの人はレビー小体型認知症かな・・」と思ったら積極的に医師に意見を求めましょう。しかし、しっかりと相談に乗ってもらえないなど、少しでも診療に疑問や不安を感じる場合は、別の医師へ意見を求めるセカンドオピニオンを活用するのも良いでしょう。

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