廃用症候群の症状&予防に大切な2つのケア

脳卒中の人の多くは、治療で安静を求められたり、麻痺などの運動機能障害によって体を自由に動かせなくなるため、ベッド上で過ごす時間が長くなってしまいます。また、認知症の人も、寝たきりや抑うつになることでベッド上での生活が長くなりがちです。

しかし、長い間寝たきりの生活を送っていると、「廃用症候群はいようしょうこうぐん」になってしまうかもしれません。

とは言っても、「廃用症候群・・・って何?」という方も多いのではないでしょうか。
そういった方の為に、この記事では「廃用症候群とは何なのか」ということから「予防法」に至るまで、詳しく解説しておりますので是非チェックしてみてください。

<目次>

  1. 廃用症候群とは
    1. 定義
    2. 症状
  2. 廃用症候群の原因
    1. 寝たきりが最大の原因
      1. 1週間の寝たきり生活で筋力が20%も低下する
      2. 生活やリハビリの足枷になる
    2. 廃用症候群は悪循環的に進行していく
  3. 廃用症候群予防の為の2つのケアポイント
    1. ケアポイント1|寝ている時の姿勢に注意!!
    2. ケアポイント2|定期的なリハビリテーションが大切

廃用症候群とは?

廃用症候群の定義

まず、「廃用症候群とは何なのか?」その定義から確認してまいりましょう。

廃用症候群とは、長い間、身体の機能を使用せず療養を続けた場合に起きてくる二次的な身体的・精神的機能低下の総称です。つまり、身体の機能を使用しなかったために、身体の組織や器官が徐々に萎縮したり衰えたりする状態のことです。別名「生活不活発病」とも呼ばれています。

少しわかりにくいですね。 廃用症候群にはどういった障害があるのか掘り下げていきます。

  • 若い頃スポーツでバリバリ身体を鍛えた人でも、運動を続けなければ段々と筋力が落ち動けなくなる。
  • ピアニストが練習を休むと指の動きが鈍くなってくる。

この様に人間の心身の機能は「活発に使うほど機能や能力が高くなり、逆に使わなければ衰えてくる」という原則があります。この使わなかったり、活動しない状態で生じる心身の機能低下を廃用症候群と呼ぶのです。

例えば、骨折してギプスを巻いた後に、関節の動きが硬くぎこちなくなったり、手足の筋肉が細く痩せてしまうのも廃用症候群の1つなのです。更に寝たきりで身体を全く動かさない状態ではどうでしょう?

廃用症候群の症状

長期間ベッド上だけで寝たきりの生活を送っていると、多くの病気や症状が現れます。

廃用症候群は、安静にしていたり寝たきり生活で生じる病気や症状の総称です。使わないことによる機能の衰えは、筋肉だけではなく、骨や関節、皮膚、心臓、呼吸器、消化器、尿路など身体全体にも現れます。したがって、廃用症候群は、1つの病気を指すのではなく、その中には様々な病気や症状が含まれています。廃用症候群に含まれる主な病名や症状は、次のようなものです。

廃用症候群の主な症状
肺炎 便秘 むくみ
嚥下障害 骨粗鬆症 褥瘡(床ずれ)
認知症の進行 めまいやふらつき 筋力の低下・筋肉が硬くなる
拘縮(関節が硬くなる) 体重減少・食欲不振 抑うつ・意欲や興味の減少
尿失禁・排尿障害・尿路感染 心機能や肺活量の低下  誤嚥性肺炎

廃用症候群は、これだけ多くの病気や症状のことを指す言葉です。そして、なんと寝たきりの生活を送るだけでこれだけ多くの病気や症状が現れる可能性があるのです。

また、手足の関節拘縮といった身体的なものだけでなく、抑うつや意欲の低下などの精神的な症状も廃用症候群に含まれます。安静による刺激の少ない生活は知的な活動をも低下させることから、ボケや認知症が進行することもよく理解できます。

廃用症候群の具体例

実際に、どのような過程で廃用症候群になっていくのか具体例を3つ挙げて確認していきましょう。

拘縮 筋肉や関節は、使わないでいるとすぐに硬くなってしまいます。この様に硬くなった関節の状態を拘縮といいます。脳出血や脳梗塞の後遺症の麻痺があると、特に拘縮が起きやすくなります。
認知症の進行 身体を動かさずにいると、活動による脳への刺激が少なくなるので、知的能力の低下も起こりやすく、高齢者では認知症の引き金になることがあります。
嚥下障害や骨粗鬆症 点滴などで栄養補給し、口から飲食物を摂取しないで何日も過ごしていると、口やのどの筋肉が硬くなって、嚥下障害が起こることもあります。栄養面の不安や運動による負荷の不足などから、骨密度が低下して骨粗鬆症になるリスクも高くなります。

廃用症候群の原因

寝たきりが最大の原因

廃用症候群の原因はズバリ!ベッドでの寝たきりの生活にあります。

皆さんは、「一日中寝ていたら、次の日身体の動きがかなり鈍くなってしまった」なんて経験はございませんでしょうか?

1週間の寝たきり生活で筋力が20%も低下する

ベッド上での生活が長引けば長引くほど、体力や筋力は低下していきます。病気やケガで、1週間程度をベッド上で何もせず過ごすと、どんな人でも筋力や体力の低下が顕著になると言われています。なんと、若い健康な人でも1週間寝たきりの状態が続くと約15~20%も筋力が低下し、3週間もすると半分近くまで低下してしまうと言われています。

健康な人が1週間安静にしていただけでも、これだけの筋肉量の低下が見られます。特に、高齢者では元々の筋力量が低下しているので、2~3日ほど安静にしているだけで衰えが顕著になり、そのまま寝たきり状態になってしまうケースも少なくありません

廃用症候群は生活やリハビリの足枷になる

また、廃用症候群は脳梗塞や脳出血の急性期に安静にし過ぎたり、回復期にリハビリを長く行わなかったような場合に起こりがちです。関節の組織は4日程度で硬くなり始め、十分に肩が上がらないなど客観的な運動制限は3週間ほどで現れます。

廃用症候群を放置すると手首や足首が反りかえったりして、いざ動ける状態になっても、安定して立ったり、歩いたり、物を持ったりするのが困難になります。

一方、廃用によって生じた身体機能の低下を回復させるためには、長い時間が伴います。1日の安静によって生じた機能低下を回復させるには1週間、1週間の安静により生じた機能低下を回復するには1ヶ月もかかってしまうと言われています。関節を元の様に動かすためには、痛みも伴うことでしょう。

その為、廃用症候群は、リハビリテーションやその後の生活の大きな足枷となってしまうのです。

廃用症候群は悪循環的に進行していく

しかも、廃用症候群は先のリストで取り上げた病気・症状のどれか1つだけが現れるというわけではありません。一度、廃用症候群になると「負のスパイラル」に陥る可能性もあります。

つまり、廃用症候群の中の1つの症状が引き金となり、雪だるま式に様々な症状に派生していくのです。

例えば、廃用症候群の症状の1つである「認知症」が進むことで「抑うつ」になり、段々と動く意欲が低下し身体を動かさなくなり「筋力の低下」が進むことで、ベッド上での動作が困難となっていき「褥瘡(床ずれ)」になり、さらに動きにくくなるといった具合に、悪循環的に進行するのが廃用症候群の特徴です。

でも、どうやって廃用症候群を予防すればよいのでしょうか?

廃用症候群予防の為の2つのケアポイント

廃用症候群の恐ろしさを分っていただけましたか?したがって何よりも廃用症候群を予防することが重要であり、万一発生した場合は、出来るだけ早く気づき、悪循環を断ち切ることが大切です。

廃用症候群を予防するには「寝たきりにせず」「身体を動かす」ようケアすることが何よりも大切です。その為にはまず、座位を取ることが必要です。座ることによって筋肉が刺激されます。例え歩けなくても、座っているだけで上半身の筋肉は活動し、筋力の低下を防ぐことが出来るのです。そして、筋肉が活動すれば食欲も出て、栄養状態も良くなり元気が出てくるのです。

さらに、次の「寝ている時の姿勢」と「リハビリテーション」の2つのケアポイントを実践し廃用症候群を予防・治療するよう徹底しましょう。

ケアポイント1|寝ている時の姿勢に注意!!

廃用症候群予防のケアポイントとして、ベッドに寝ている時の姿勢に注意することです。筋肉・関節の拘縮や褥瘡を起こさないような姿勢で寝てもらうことが大切です。

筋肉・関節の拘縮予防には、麻痺側の手の指を開きハンドタオルをロール状にしたものを握らせます。そして、足裏には、フットボードやクッションを当てて足首が直角になるように保持し、足首が伸びきった状態で関節が固まってしまうことを予防します。

褥瘡は2~3時間おきの定期的な体位変換や体圧分散マットレスなどを使って予防しましょう。

褥瘡(床ずれ)の原因と予防方法【高齢者や寝たきりの人必見!】

ケアポイント2|定期的なリハビリテーションが大切

廃用症候群は、寝たきりによって引き起こされます。

近年、発症直後からのリハビリテーションが重視されるようになった背景には、廃用症候群を予防する目的もあります。本人の意識が無い状態でも医療スタッフによるリハビリが行われるのも廃用症候群の予防が目的の1つでもあります。

廃用症候群予防は、動かせるところは動かし、なるべくベッドから起き上がるよう気を付けることが重要です。

安静が必要な人はベッド上でのリハビリ→座れる人は座っている時間を長くするリハビリ→ベッドから移動できる人はベッドにいる時間を減らし車椅子や歩行のリハビリといった具合に、その人の状態に合わせ、なるべく寝たきり生活から脱却することが一番の廃用症候群の予防になります。

また、拘縮予防には関節可動域(ROM)訓練が効果的です。

まとめ

廃用症候群は一度なってしまうと厄介な症状です。また、悪化するたびに本人にとっても介護者にとっても負担が大きくなります。

しかし、廃用症候群はしっかりと「廃用症候群予防の為の2つのケアポイント」を守り実践することで、可能な限り予防することが出来ます。本人の為にも介護者の為にも根気強く続けることが大切です。

また、家事や趣味などの活動や社会活動など、日頃から活発に動き行動範囲や交友関係を広げることも大切です。

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