認知症の病院・専門医の探し方&良い医師・悪い医師の見分け方
認知症治療のポイントは、早期発見し、適切な治療を出来る限り早い段階で行うことです。しかし、認知症の場合は、「早期」ということが逆に見落としや誤診を招いてしまう元になることがあります。
家族が「お父さん、認知症かな・・・」と感じ早期の段階で病院に受診しに行くとします。ところが、早期であればあるほど、一般の医師は認知症と気づき難いというジレンマがあり、見逃しや誤診が多く存在するのも事実です。
近年、日本では、少子高齢化に伴い、「認知症」という言葉がTVや新聞、インターネット上で賑わっています。我が国では、これだけ世間で問題視されているにも関わらず、その専門医である「認知症の専門医」が不足していることをご存知でしょうか?
理由は、本格的な認知症学は、ここ20年前からと歴史が浅い為です。内科学などは100年超の歴史があることと比較してもその違いは歴然です。したがって、必然的に専門医が少ないのは致しかねません。だからといって、「どんな先生でもいいのか」と言われると、皆さんの答えは、「NO」だと思います。
だからこそ、認知症は、「どの診療科でどのような医師に診てもらうか」が大切になってきます。
この記事では、「認知症の診察において、どの診療科に行くべきか」「良い医師悪い医師の見分け方」についてご紹介していますので、是非参考にしていただければと思います。
認知症の診察・治療には、どの病院・診療科に行くべきか
認知症の疑いがある場合、まずどこに受診すればよいのか迷うところです。ここでは、診察や治療のキーパーソンである専門医の探し方やどの診療科に行けばよいかご紹介しております。
認知症の専門医の探し方
まず、認知症の診察・治療を受ける場合は、「認知症の専門医」に受診することが一番です。日本には、認知症を研究している学会が大きく2つあります。次をご覧ください。
日本認知症学会 | http://dementia.umin.jp/ |
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日本老年精神医学会 | http://www.rounen.org/ |
一般的には、この2つの学会に認定されている医師が「認知症の専門医」と言っても良いでしょう。
学会名の横に、ホームページのURLアドレスも掲載しましたので、病気が疑われる場合は、まずはそこからお近くの「認知症の専門医」を探してみることをオススメします。(都道府県別に専門医の名前や所属している医療機関等の情報も掲載しています)
また、「アルツハイマー型認知症」や「若年性アルツハイマー病」に関する研究を行っている「アルツハイマー病研究会」という団体もございます。
近くに、認知症の専門医がいない場合、行くべき地域の診療科
「高齢で、足が痛く遠出できない」といった理由で、先の「認知症の専門医」に受診することが困難な場合もあると思います。そういう場合は、お住まいの地域の病院などの医療機関を利用するしかありません。
「認知症の専門医」に受診できない場合は、一般的に内科、神経内科、脳神経外科、精神科、老年科、もの忘れ外来などで診療してもらいます。
そこで、皆さんの疑問は、「専門医に受診できない場合は、どの診療科に行けば良いの?」ということでしょう。
それでは、早速「近くに、専門医がいない場合、行くべき地域の診療科」についてそれぞれの診療科のメリット・デメリットを併せて、ご紹介していきます。
メリット | デメリット | |
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脳神経外科 | 【脳の外科手術の専門家】 | 脳卒中などの命にかかわる緊急度の高い病気を専門としていますので、認知症を専門にしている脳神経外科は多くありません。 |
画像検査(CTやMRI)で、アルツハイマー病で見られる脳の萎縮といった病変を診つけたり、手術で治る認知症(特発性正常圧水頭症)を治療するのが得意。 | ||
精神科・心療内科 | 【脳と心の専門家】 | 認知症では、「鬱病」に似た症状が現れます。「認知症のうつ症状」の場合(特にレビー小体型認知症)、「鬱病」の治療薬である「抗うつ薬」を服用すると期待した効果が得られないことがあります。こういった場合に、「レビー小体型認知症」も含めた診断の見直しをせず、「抗うつ薬」の処方を頑なに続ける医師はダメです。 |
精神科にかかる認知症患者が増えてきています。また、周辺症状である「不安」や「抑うつ」と「うつ病」の鑑別診断。心理療法的アプローチで問題を上手く解決してくれる場合があります。 | ||
神経内科 | 【脳や脊髄、神経、筋肉の専門家】 | 神経内科では、「パーキンソン病」の患者も多く診ます。したがって、「パーキンソン病」に似た症状が現れる「レビー小体型認知症」を「パーキンソン病」と考え、治療薬を「パーキンソン病」と同じ量処方されることがあります。しかし、「レビー小体型認知症」と「パーキンソン病」とでは治療法が異なります。治療薬の服用により、症状が悪化する可能性があります。 |
病気を内科的にアプローチする診療科です。他の神経の病気と共に、認知症を診ることが多く、認知症に関する知識が深い医師も多く存在し、認知症と他の神経の病気との鑑別診断が可能。特に、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症は得意とするところです。 | ||
老年科 | 【高齢者の為の総合診療科】 | |
老年科は認知症や骨粗鬆症、嚥下障害など高齢になってから患うことが多い疾患全般を担当しており、高齢者にとっては1つの窓口で多くの疾患を診てもらえるというメリットがあります。また、高血圧や動脈硬化、低栄養、拘縮といった高齢になってから起こりやすい症状の特徴も良く知っており、それに合わせた治療を行ってくれます。 | ||
もの忘れ外来 | 【認知症の診察に特化した診療科】 | |
もの忘れ外来は、日本国中に多く存在しており、先の団体の認知症の専門医がいない地域でも気軽に相談できる窓口です。認知症が疑われる場合、まずはもの忘れ外来に相談してみるのも良いでしょう。 |
まずは、老年科やもの忘れ外来に受診
以上の通り、受診する診療科を悩んだときは、まず「老年科やもの忘れ外来」といった地域の病院に受診し、症状が認知症によるものかどうか見極めてもらい、必要があれば大きな病院や他の診療科を紹介してもらうことをオススメします。
もし、「鬱病」と診断され治療を受けているのに症状の改善が見られない場合は、認知症かもしれません。しかし、診断の見直しをせず、頑なにそれまでの治療にこだわり、処方量や薬を見直さない医師の場合は、他の医療機関に移ったり、セカンドオピニオンを求めましょう。
認知症の診察・治療において、良い医師・悪い医師の見分け方
認知症は、正しい治療を行うことで進行を遅らせたり、症状の改善が望めます。その一方で、誤った治療を続けることで、効果がなかったり症状の悪化を招いたりすることがあります。
しかし、認知症は、専門医の不足や他の疾患と似た症状が現れるなどの理由で、見逃しや誤診が後を絶たず、誤った治療が行われ症状の悪化を招くケースが多く存在します。
したがって、たとえ「認知症の専門医」でなくても、真摯に診察・治療を行ってくれる「良い医師」を見つけることが大切です。ここでは、「認知症の診断・治療において良い医師・悪い医師の見分け方」についてご紹介します。
良い医師は、認知症を3つの観点から総合的に判断する
認知症の診断は、次の3つの観点から総合的に判断し、認知症のタイプやその治療法を決めていきます。
- 問診(本人や家族)
- 画像検査(CT・MRI・PET・SPECT)
- 認知症テスト(長谷川式簡易知能評価スケール、時計描画テスト、MMSE)
その為、これら1つでも欠けてしまうと誤診や見逃しを招く危険性があります。
特に、認知症の場合は、画像検査だけでなく、本人や家族の話によく耳を傾け診断・治療することが重要です。したがって、「認知症の診断・治療において良い医師」は、例え専門医でなくても、この3点から総合的に判断してくれる医師です。
認知症の診断は画像検査だけではダメ
しかし、残念ながら画像検査のみで、認知症かどうか判断する医師が多かれ少なかれ存在します。これは、小さな病院に限ったことではなく、大学病院や大病院にもです。
例えば、アルツハイマー病は、脳の海馬周辺が委縮していることが有名ですが、必ずしもそれがテストの結果と相関関係があるわけではありません。海馬周辺に委縮が見られても、アルツハイマー病を発症していないケースがあります。逆も然りです。
また、MRIなどの検査機器に頼りすぎると、アルツハイマー型と脳血管性の混合型認知症であるにもかかわらず、脳血管性認知症とだけ診断され見逃されるケースがあります。したがって、認知症を診断する際は、「問診」「画像検査」「テスト」の3つから総合的に判断する必要があるのです。
次に「認知症治療において良い医師と悪い医師の特徴」についてまとめてみましたので参考にしてみて下さい。
認知症診断・治療において良い医師
良い医師とは本人や家族の苦しみを理解し、本人がつらくないように家族が介護しやすいようにしようと考えてくれる医師です。それには認知症の専門医である必要はありません。
- 問診・画像検査・認知症テストの3つの観点から総合的に判断してくれる医師
- 画像検査で判断が付かない場合は、認知症の専門医を探してくれるなど真摯に対応してくれる医師
- 共に、認知症のことを学んでくれようとする勉強熱心で真面目な医師
- 必要以上に治療薬を増やさない医師
認知症診断・治療において悪い医師
悪い医師とは、データーばかりに気を取られて本人や家族を診てくれない医師です。過剰な薬で患者を抑えつけたり、薬を減らしてほしいという申し出にも耳を傾けない医師も残念ながら存在します。
- 画像検査の結果のみで、本人や家族への問診や認知症テストを行わない、不十分な状態で判断する医師
- 症状の改善が見込めない治療法にいつまでも固執する医師
- 家族や本人の話に耳を傾けず、カルテやパソコンばかり診ている医師
- アルツハイマー病しか知らず、新たな病気について学ぼうとしない不勉強な医師
- 過剰な薬や抗うつ薬で患者をとりあえずコントロールしようとし、減薬の申し出にも耳を傾けない医師
まとめ
認知症は、正しい治療を行うことで進行を遅らせたり、症状の改善が望めます。その一方で、誤った治療を続けることで、効果がなかったり症状の悪化を招いたりすることがあります。
したがって、この記事で「あなたのパートナーとしてベストな医師」を探すヒントにしていただければと思います。
また、あなた自身も「認知症」について知っておくことも必要です。もしよろしければ、下の関連記事を併せて読んでいただきより病気に関する知識を付けていただければと思います。