レム睡眠行動障害の症状と対応を学ぼう

あなたの周りに「睡眠中に叫んだり、寝ぼけてベッドで暴れたりする人」はいませんか?

「お父さん寝相が悪いな」「ただの寝言、悪夢にうなされているだけ」とあまり気にしていない人も多いのではないでしょうか。

しかし、ちょっと待って下さい!

実はこのような睡眠時の寝言や異常行動は「レム睡眠行動障害」と言う、パーキンソン病や認知症などの病気の症状やその前兆かもしれませんよ。

ここでは、「レム睡眠行動障害」とはどのような症状なのかということから、その対策や介護対応の仕方について解説しておりますので、ぜひ参考にして下さい。

レム睡眠行動障害の症状

レム睡眠行動障害とは、次のようなものです。

レム睡眠行動障害とは、睡眠中にうなされたり、大きな声で寝言を呟いたり、奇声を上げたり、怒ったり、怖がったり、暴れたりといった行動を取る睡眠障害の一種です。

レム睡眠行動障害の名前の由来は、後で説明する「レム睡眠」時に現れることから命名されました。

レム睡眠行動障害では、例えば下のような症状が見られます。

  • 「うわー」などと奇声を上げる
  • 「この野郎」「助けて」と大声で寝言を叫ぶ
  • 目を瞑ったまま腕や足をばたつかせ、壁に体をぶつけたり、隣で寝ている人を叩いたりする
  • 急に起き上がったり、ベッドから転落したり、

このレム睡眠行動障害は、悪夢を見ていることがほとんどです。例えば、借金取りに追われる夢だったり、嫌いな相手に暴力を振るわれている夢だったりします。ただし夢遊病のように歩き回ることはほとんどありません。

なお、意識障害の一種であるせん妄とレム睡眠行動障害とは別物ですが、区別することが難しい場合がよくあります。

レム睡眠行動障害の原因

皆さんが「睡眠障害」と聞いて一番に思いつくのが不眠症だと思います。

主に、不眠症の原因は不安やストレスといった心理的原因によるものが多いです。レム睡眠行動障害でも、不安やストレスが原因になるコトはありますが不眠症の場合とは少し違います。

レム睡眠行動障害の根本的な原因は、パーキンソン病レビー小体型認知症、脳腫瘍などの病気であることが殆どです。病気により、脳幹の橋や脳幹網様体という部分が傷つくことが原因で発生すると考えられています。

レム睡眠行動は、半分起きて半分寝ている状態で起こる

脳の中で「眠りなさい」という睡眠物質を出している場所は、脳の視床下部前部や前脳基底部というところです。一方、「目を覚ましなさい」という覚醒物質を放出するのが、視床下部後部や橋、脳幹網様体と呼ばれるところです。

パーキンソン病やレビー小体型認知症では、この覚醒物質を生成する機能が低下してしまいます。その結果、覚醒物質よりも睡眠物質の方が強くなってしまい、脳が「半分起きて半分寝ている状態」になるわけです。

パーキンソン病や認知症などの病気の前兆かも

パーキンソン病やレビー小体型認知症の患者では、病気の発病前にレム睡眠行動障害が現れていたというケースが少なくありません。振り返ってみると、発病の10年~20年前からレム睡眠行動障害が現れていたという場合がありえます。

したがって、レム睡眠行動障害はパーキンソン病やレビー小体型認知症の発病を暗示している可能性があります。レム睡眠行動障害の疑いがある場合は、放置せず医師に診てもらいましょう。(参考⇒認知症の病院・専門医の探し方&良い医師・悪い医師の見分け方

なお、レビー小体型認知症の中期以降では、このレム睡眠行動障害が現れなくなる人がほとんどです。

レム睡眠とノンレム睡眠とは?睡眠のメカニズムからレム睡眠行動障害に迫る

そもそも「なぜレム睡眠行動障害が起こるのか」そのメカニズムを「レム睡眠」「ノンレム睡眠」というキーワードに注目して学んでいきましょう。

レム睡眠(REM睡眠)

レム睡眠とは、身体が休憩していて脳が活動している状態で浅い眠りです。

レム睡眠のレムは、「Rapid Eye Movements」の頭文字REMから取られたものです。つまり、レム睡眠時には、眼球がキョロキョロと早く動いているのが特徴です。その時にペンライト等を当てると眼球が忙しく動いているのが分るはずです。夢は、このレム睡眠の時に見ています。また、血圧や心拍数も不安定な状態です。

一方のノンレム睡眠とは次のような状態です。

ノンレム睡眠(Non-REM睡眠)

「ノンレム睡眠」とは、脳が休んでいて、体は起きていているレム睡眠とは逆の状態で深い眠りです。

ノンレム睡眠は、眼球の動きは穏やかなのが特徴です。ただし、寝返りを繰り返します。一般に人は、1時間に1~3回寝返りをします。また、血圧や心拍数も落ち着いています。

レム睡眠とノンレム睡眠の違い
  レム睡眠 ノンレム睡眠
活動 休憩
身体 休憩 活動
眠りの深さ 浅い 深い
血圧 不安定 安定
目玉の動き 活発 穏やか

睡眠時のレム睡眠とノンレム睡眠の周期

レム睡眠とノンレム睡眠を1セットに周期的に交互に繰り返されます。この睡眠サイクルは、およそ90分という一定した時間を保って繰り返されます。

まず、ノンレム睡眠の後にレム睡眠がやってきます。そして、再びノンレム睡眠へと切り替わります。通常、睡眠全体に占めるそれぞれのおよそ次の通りです。

レム睡眠とノンレム睡眠の割合
レム睡眠 20%
ノンレム睡眠 80%

レム睡眠は朝方になるにつれて時間が長くなっていきます。朝型に長い夢を見ることが多いのはこのためです。

  • 睡眠のサイクルは、約90分の一定した時間を保ち、一晩で4~5回繰り返される。
  • 最初のレム睡眠7~10分程度と短く、徐々に時間が長くなる。
  • 通常、睡眠全体に占めるそれぞれの割合は、レム睡眠20%、ノンレム睡眠80%
  • 生活習慣の乱れなどにより、レム睡眠とノンレム睡眠の割合が崩れる

パーキンソン病やレビー小体型認知症の場合、レム睡眠の時間が少し長い傾向にありますが、レム睡眠とノンレム睡眠の周期を頭に入れておくことは、後で説明するレム睡眠行動障害への介護対応に役立ちます。

レム睡眠行動障害の対策法と介護対応

不眠症のような睡眠障害に対しては、「ストレスや悩みを解消する」「病気を治療する」といった根本原因を取り除くことが一番です。

しかし、レム睡眠行動障害の場合は、一筋縄ではいきません。なぜなら、「認知症やパーキンソン病」といったレム睡眠行動障害の原因疾患を完治させる方法は、現在存在しないからです。

したがって、レム睡眠行動障害には、睡眠の質を高めるように対策し、症状が現れたら適切な介護対応を行うことが大切です。

対策|睡眠の質を高めよう

レム睡眠行動障害は、脳が活動しているレム睡眠の時に現れます。

通常、睡眠はレム睡眠が2割、ノンレム睡眠が8割で成り立っています。ですが、生活習慣の乱れなどが原因でレム睡眠の割合が多くなってしまうのです。よって、生活リズムを整え、ノンレム睡眠の時間を十分に確保し睡眠の質を高めることが、レム睡眠行動障害に対しての最大の対策です。

しかし、睡眠の質を高めるとはどのようなコトに注意したら良いのでしょうか?次のようなコトに注意してみて下さい。

  • 健康管理(風邪や脱水などの予防)
  • メリハリのある生活をして体内時計を整える
  • 日中は、体を積極的に動かし適度に疲労させ
  • 昼寝は、1時間まで(夜間の不眠を招くだけでなく、認知症を促進する原因にもなります)
  • 寝る前にテレビやスマホ、携帯などは見ない
  • カーテンを閉め、電気を消し部屋を暗くする
  • ホットミルクを寝る前に飲む
  • 就寝前にストレッチなどをしてリラックスする(やりすぎは逆効果)
  • お酒を控える
  • お風呂に入浴後、なるべく速く布団に入る

レム睡眠時の上手な起こし方

いくら対策をしていても、「レム睡眠行動障害」が現れることがあります。その時は適切な介護対応を行うことが大切です。

この時に、先の「睡眠のメカニズム」がレム睡眠行動障害へ対応する為に非常に役立ちます。レム睡眠がいつ現れるかおぼえていますか?

短いレム睡眠行動障害への介護対応|取りあえず見守ろう

最初のレム睡眠は、就寝してから約80分後にやってきます。このレム睡眠時に大きな寝言や奇声などのレム睡眠行動障害が見られることがあるわけです。大体10分以内に収まるはずなので、暴れて危険なことが無い限りそっと見守ればあまり問題にはなりません。

しかし、朝方の長いレム睡眠の時のレム睡眠行動障害にはどのように介護対応すれば良いのでしょうか?

長いレム睡眠行動障害への介護対応|無理やりはダメ!自然と起こそう

この場合は、起こすのも1つの方法です。ただし、体をゆすって急に起こすのは禁物です。なぜなら、悪夢と現実が混合してしまい、混乱や興奮を招き、時には心筋梗塞などを引き起こす心配がある為です。

したがって、長時間のレム睡眠行動障害の介護対応としては、部屋の電気をつけて明るくしたり、懐中電灯の優しい光を顔に当てたりして、自然に目を覚まさせるようにします。

また、目覚まし時計やキッチンタイマーなどを用いて覚醒を促すのも良いでしょう。こうした音はダイレクトに脳内に響くため、「起きて下さい」「朝ですよ」といった声かけよりも有効です。

レム睡眠行動障害の治療薬

レム睡眠行動障害に対応するためには、薬の使用も検討することがあります。

しかし、一般的に言う睡眠薬はレム睡眠行動障害には効果が期待できません。なぜなら、睡眠薬により眠りを早めることは出来ますが、レム睡眠行動障害自体を失くすことは出来ないためです。逆に、副作用などの悪影響が見られる場合あるので注意が必要です。

したがって、レム睡眠行動障害には、抗てんかん薬である「クウロナゼパム」や「リボトリール」といった薬が処方されますが効果が無い方もいます。

なるべくレム睡眠行動障害には、先のように睡眠の質を高める対策や介護対応により対処するのが第一です。